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#178 『不可能を可能に変える経営哲学』

本日は、セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文さんの「不可能を可能に変える経営哲学」についてのお話です。日本を代表する小売チェーンを経営する鈴木さんは、イトーヨーカ堂を創業者した、今回のお話にも出てくる伊藤雅俊さんに請われて、31歳の時に転職し、1970年代にセブン・イレブンを立ち上げ、約40年間グループを成長させてきました。

今回のお話は、グループの国内店舗約2万店、売り上げ10兆円強の国内屈指の小売企業に育て上げた鈴木さんの、不可能を可能にする経営哲学について語られています。前例のないことに挑戦する鈴木さんの姿勢は、今の時代の経営の前提となるものであり、目的やゴールに対して何をすべきなのかを明快にするものであると思います。

"帰国後しばらくしてアメリカの商業の実態をいろんな面で調べてみたら、日本よりも遥かに大型店が普及し、競争の激しいアメリカでセブンイレブンは4000店舗もチェーン展開していたんです。驚きと共にこれを日本で適応することができれば大型店と小型店の共存共栄のモデルを示せるはずだという可能性を感じた。そこからすべてが始まったわけです。"
"けれどもこの案には相当反対がありましたね。当時社長だった伊藤雅俊をはじめとして、ダイエーの中内功さんや西武の堤清二さん、コンサルタントうの先生方、誰も賛成しない。日本では絶対無理だと。だけどそれらをよく聞くと、過去の経験に基づいた反対論ばかりで、未来の可能性は過去の論理では否定できないだろうと生意気にも思ったんです。で、私があんまりしつこく言うもんですから、伊藤社長も「それじゃあ実験的にやってみたら」と応じてくれたのがきっかけです。"
"まずはノウハウを取得しないことには始まらないので、アメリカの運営元であるサウスランド社と交渉に当たりましたが、非常に難儀しました。...最後の最後まで揉めたのがロイヤリティの率です。向こうは売上高に対して1%のロイヤリティを取ると。カナダでも1%でやっているから、日本だけ例外を認めるわけにはいかないと言う。ただ、私は日本でやった場合にはせいぜい2~3%しか利益は上がらないから、ロイヤリティを1%も出すわけにはいかない。0.5%だと主張する。互いに譲らず、ゴールが見えませんでした。どんなに巧みな話術を駆使しても、率をテーマにしている限りは解決できないと考えて、こう提案したんです。"
"「提携によってあなた方のライセンス収入が大きくなることが本来の目的です。そのためには、我われが健全な経営をし、売上高を伸ばしてく必要があります。たとえロイヤリティの率を低くしても、日本で成功すれば最終的には額は上がってしまいます。だから、率を上げるよりも額を上げる考え方をしてはいかがですか」。そうやって自分たちの利益や言い分を前面に押し出すのではなく、相手の立場で考え、相手のメリットを説くようにしたことで"、結局サウスランド社が大きく譲歩し、0.6%で合意に至りました。
"昔から私のモットーは「変化対応」。変化は当然起こるから、あらゆる変化に対していかに対応するかを考えていくことが大事だと。変化の激しいこの時代に過去の成功事例に縋りついていたら失敗が多くなる。ですから過去を捨てろと言いたいですね。世の中が変化している時、常識という過去の経験の蓄積に囚われることほど怖いものはありません。私がこれまで既存の常識を覆す数々の挑戦を行い、不可能を可能にすることができたのは、常にお客さんの立場で考え、何が本質的なのかを見抜いて物事を単純明快に発想し、やるべきことを一つひとつ解決してきたからでした。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/06/27『不可能を可能に変える経営哲学』
鈴木敏文 セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問
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※Image by Gerd Altmann from Pixabay