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#119 『褒める人間は敵と思え』

本日は、落語家で落語芸術協会元会長の桂歌丸さんの「褒める人間は敵と思え」についてのお話です。歌丸さんといえば、笑点。笑点といえば歌丸さん。そのような印象をお持ちの方が多いのではないでしょうか。幅広い年代の人たちに愛された落語家の一人であると思います。

残念ながら2018年にお亡くなりになってしまいましたが、笑点の追悼番組での他の落語家さんたちの歌丸さんとの思い出はとても笑えて、感動した記憶があります。

そんなお茶の間に笑顔を届けていた歌丸さんの人として大事なことや考え方について触れるのは貴重な機会であると思いました。一人前のプロとして仕事をするためには、厳しい環境に身を置き、自分を常に高めていく姿勢が大切であることを今回のお話で感じました。

また、「品物を売るんじゃなくて自分を売れ」という言葉は、商人として働くビジネスパーソンであれば、誰もが意識する必要のある考え方であると思いますし、その中でどのように関わる相手、お客様の困っていることや課題を解決できるのか、そこを追求した人なのではないかと思いました。

"古今亭今輔師匠から言われた言葉なんですが、「褒める人間は敵と思え。教えてくれる人、注意してくれる人は味方と思え」という教えは大切にしています。普通、人間っていうのは褒められれば嬉しいですよね。怒られたら「畜生」と思いますよね。それは逆だって言うんですよ。"
"若いうちに褒められると、そこで成長は止まっちゃう。木に例えれば、出てきた木の芽をパチンと摘んじゃうことになる。で、教えてくれる人、注意してくれる人、叱ってくれる人は、足元へ水をやり、肥料をやり、大木にし、花を咲かせ、実を結ばせようとしてくれている人間だって。"
"「噺を教わった人よりも受けて、初めてその人への恩返しになる」というのが私の持論なんです。教わった人より受けなかったら恩返しにも何にもなりません。私は若い時から師匠や先輩の前でも、「なぁに、負けるもんか!」ってやりましたよ。だから、私より受けなきゃダメだって弟子には言うんです。私のところにもずいぶん後輩たちが「教えてください」って来ます。で、教えますよ。「ああしろ、こうしろ」「ここが違う」とね。"
"そういうふうに噺を教えることはできるんです。ただ、間を教えることはできない。私たちの商売は、早く自分の間を拵えた人間が勝ちです。いつまで経っても間のできない噺家がいる。もっと極端に言うと、生涯間のできない噺家がいる。間抜けって言葉あるじゃないですか。それと同じですよ。だから、自分の間を拵えた人間が勝ち。それは自分で研究し、掴むしかないんです。"
"私が大切にしている言葉に「芸は人なり」というのがあります。薄情な人間には薄情な芸、嫌らしい人間には嫌らしい芸しかできないんです。だから、なるたけ清楚な、正直な人間にならなきゃダメだって。それが芸に出てくる。これは噺家ばかりじゃないですよ。ビジネスマンの方でもそうだと思うんです。だからこういう言葉があるじゃないですか。「品物を売るんじゃなくて自分を売れ」。それと同じですよ。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/04/29 『褒める人間は敵と思え』
桂歌丸 落語芸術協会会長
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※Photo by Masaaki Komori on Unsplash