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#357 『退路を断つ力 ー アナウンサーから弁護士へ』

本日は、弁護士の菊間千乃さんの「退路を断つ力 ー アナウンサーから弁護士へ」についてのお話です。菊間さんは早稲田大学法学部卒業後、フジテレビに入社します。在職中に夜間のロースクールに通いながら司法試験の勉強を始め、2007年フジテレビ退社して、その後2011年弁護士になった方です。

"谷亮子選手が五輪で二回目の銀メダルを取った時に、試合直後のインタビューで「次のシドニーに向けてまた頑張ります」って答えたのをテレビで観たんです。それまで8年間、とてつもない練習をしてきたのに金メダルに届かなくて、普通だったらすぐには次のことなんか考えられないと思うんですけど、彼女はまた4年頑張ると即答した。何て強い人だろうってすごく興味が湧いて、そこからシドニーまで取材をさせていただきました。"
"彼女が金メダルを取る瞬間を数メートル傍で見ることができて、それはもうあんなに感動したことはないっていうくらい感動しました。でもその時、すごいすごいって拍手しながら、自分って何てダメなんだろうっていう思いも募ってきたんです。人に拍手してるだけの自分でいいのかな、私も何か一所懸命やらなきゃダメなんじゃないかなって。"
"次のアテネ五輪の取材も担当させていただいたんですけど、その時にシドニーの時から4年間、自分は何も行動を起こしていないことを痛感したんです。もちろん仕事は一所懸命やっているんですけど、オリンピックに出る人たちに匹敵するような人生を懸けた戦いや努力をしているわけではありませんでした。ただ日々仕事に追われて忙しくしているだけでいいんだろうかと、いろいろ考えるようになったんです。"
"そんな折にロースクールができて、夜間は4年コースだっていうからオリンピックと同じだと思って、私も4年間オリンピック選手と同じくらい頑張ってみよう、自分で自分に拍手ができるくらい人生を懸けて勉強してみようって決意したんです。そして勉強を進めるうちに、ただ資格を取って終わるのではなく、習得した知識を武器に、困っている人の役に立ちたいと思い始めて、弁護士を目指すようになりました。"
"アナウンサーの仕事をしながら司法試験の勉強をするのは、本当に大変でしたね。毎日3時間くらいしかベッドで寝られなくて、そのうちストレスで声が出なくなってしまったんです。このままでは体がもたないと思って休職も考えたんですけど、尊敬する弁護士の方から「何かを得るためには何かを捨てなければいけない。弁護士という仕事は、あなたがいま抱えているものを捨てるだけの価値がある仕事だと思うよ」と言われて、すべてを捨てて本気で挑戦することにしました。"
"退路を断ったからよかったんだと思います。どこかに逃げ道があると、人間って弱いからどうしてもそっちのほうへ流されてしまいますよね。ただ、なかなか成績が上がらなくて、模試の成績が返ってくる度に落ち込みましたね。もし受からなかったら、この先の人生どうなるんだろうと考えると怖くて怖くて。当時は一人暮らしでしたから、このまま死んでしまって「元フジテレビアナウンサー孤独死」って報道されたりしたら嫌だから、泣きながら、文字通り歯を食いしばって勉強しました。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/12/23 『退路を断つ力 ー アナウンサーから弁護士へ』
菊間千乃 弁護士
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※Photo by Green Chameleon on Unsplash