#62 『天狗は芸の行き止まり』
"若いうちは誰でも壁にぶち当たって、それをなんとか打開しようと努力するから、それを自分の身につくのです。その努力の分だけ視野も広くなるから、先にもっと高い壁があるのが見えてくる。それを乗り越えると、さらにもっと高い壁がー努力を重ね続けてこそ目の前にある壁が立ちはだかってくる。だからこそ、もうこれでいいと思ってしまっては、進歩は止まってしまう。"
本日は、講談師の一龍斎貞水さんの「壁を乗り越える」についてのお話です。2002年に講談師として初めて重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された、一龍斎さんの座右の名は、「講談は守るべきものと開拓すべきものがある」。今回のお話もその内容をベースに語られていました。
現状に満足せず、常に挑戦と努力をし続ける。この仕事の教科書で多くの偉人やプロの人たちから出てきた考え方です。そして、壁を乗り越えた先にある次の壁に対してポジティブに捉えることで、自分の可能性を広げていくことができるのだと思います。
"どんな仕事でも、一つの道を貫いている方は同じで、もうこれで十分やり遂げたとふんぞり返ってる人はいないんですよね。どこまでいっても、自分はまだまだ未熟ですと。"
壁を越えていくためには、知識や技術、経験や人脈などいろんな要素が必要になりますが、それらはあくまで手段であり絶対条件ではない。常に挑戦し続けることができる人に共通してあるものは「考え方」と「捉え方」。
決めたことをやり続けることや周りにどう言われようが貫く姿勢だったり、嫌なことやネガティブなこともポジティブに自分の成長の機会として解釈することだったり。そういう考え方と捉え方があるからこそ、どんな壁にも挑戦できるのだと思います。
"伝統芸というのは上の人が後に続く人に、ついてこいというものではない。後に続く者が先人の芸、技を盗み、自分の中に取り込んでゆく。それが伝統を守ることに繋がってゆくのだと思います。"
教える・教わるのではなく、引き出す・真似して学ぶという姿勢。どちらも大事なことですが、私は基本的には、自分から学んでいくことだったり自分なりに考えていく姿勢を大切にしています。逆に、人にも教えるということはあまりせず、相手の方が気づけるようにヒントや問いを与えることを意識しています。
伝統を守ることと新しいことを開拓すること。一龍斎さんの座右の名である、「守るべきものと開拓すべきものがある」という言葉と2つのバランスは、今後いろんな場面で考えることになりそうだなと、久々に心に刺さった言葉でした。
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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/03/03 『天狗は芸の行き止まり』
一龍斎貞水 講談師
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※Image by mohamed Hassan from Pixabay