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#113 『黒田官兵衛や西郷隆盛に影響を与えた書物』

本日は、JFEホールディングス特別顧問の數土文夫さんの「黒田官兵衛や西郷隆盛に影響を与えた書物」についてのお話です。JFEホールディングスの第2代社長や元東京電力ホールディングス取締役会長など責任のあるポジションの数々を務めた數土さんは、中国古典を仕事や経営に生かしてきたことで有名です。

今回は、東洋古典の『菅子』についてのお話をしています。歴史的人物である、黒田官兵衛や西郷隆盛にも影響を与えた書物であり、印象的だったのは、その思想が理想なのではなく、実際の問題を対処していく中で構築されていった点にあると思いました。

机上の空論という言葉がありますが、ただ頭の中で考えられたもので実現ができないものではなく、社会や人々の生活をより良くするにはという考え方で、国などのより大きな単位で経済を動かすリーダーには必要なエッセンスが詰まっているのだと思いました。

"私がこの30年来、とりわけ強い関心を抱いてきた東洋古典の一つが『菅子』です。『菅子』は、中国の春秋時代に栄えた斉の国の宰相・菅仲の言行を記した書物です。菅仲はいまから2200〜2500年前の、孔子よりもさらに150~180年ほど前の人で、主君である桓公を補佐し、一介の諸侯にすぎなかった斉を一大強国に至らしめた名宰相です。"
"菅仲が、自分の主君を亡ぼした桓公に仕えたいきさつや、施政における物質優先の考え方などから、儒家を中心に菅仲を批判的に見る向きもあります。しかし、単なる思想家ではなく、責任ある政治家として現実の様々な問題に処していく中で練り上げられたその考え方は刮目に値します。日本でも、『菅子』は広く読まれていました。黒田官兵衛、二宮尊徳、上杉鷹山、西郷隆盛、山田方谷、渋沢栄一等、強く影響を受けていたと思われます。"
"菅仲の考え方が端的に示されているのが次の言葉です。「倉廩実つればすなわち礼節を知り、衣食足ればすなわち栄辱を知る」(倉の中の品物が豊富になってくると、人は初めて礼節を知る基盤ができ、日常生活に必要な衣食が十分足りてくると、初めて真の名誉、恥辱がいうかにあるべきかを知る基盤ができる)"
"菅仲は、一国の支配者たるものは、まず四季を通じて生産計画を円滑に進ませ、経済を豊かにさせるよう配慮しなければならないと説きました。物資が豊富な国には、どんなに遠くからでも人民は集まってくる。政治は人民の支持があって初めて成り立つものであり、人民に手厚い豊かな社会を築くことこそが、人心を掌握し、国に道徳をもたらす基盤ができると考えたのです。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/04/23 『黒田官兵衛や西郷隆盛に影響を与えた書物』
數土文夫 JFEホールディングス特別顧問
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※Photo by 五玄土 ORIENTO on Unsplash