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#289 『悲しみをとおさないと見せていただけない世界』

本日は、浄土真宗東光寺坊守の東井浴子さんの「悲しみをとおさないと見せていただけない世界」についてのお話です。

"おじいちゃん(東井義雄氏)の部屋で掃除機をかけていたら、床の間に色紙があったんです。

「苦しみも悲しみも/自分の荷は自分せ背負って/歩きぬかせてもらう/私の人生だから」

私も、この「わたしの人生だから」という言葉でスッと気が楽になりました。夫が病気になったことも、おじいちゃん、おばあちゃんを見送ったことも、これはほかでもない自分の人生なんだ、何も悲しませなくてもよいし、そんなに背負わなくてもいい。全部ひっくるめて私の人生なんだと思ったんですね。"
"夫が倒れた後、私は男親の厳しさを知らないまま子どもたちが大きくなってしまうんじゃないかと思って、おじいちゃんにお願いして、いろいろな言葉を色紙に書いてもらっていました。この本堂にも、そのいくつかを掛けさせてもらっているんですけれども。

「悲しみをとおさないと/見せていただけない世界がある/身みずからこれにあたる/代わるものあることなし/代わってもらうこともできなければ/代わってやることもできない/自分の荷は/自分で背負って生きるしかない」

確かに人から見たら不幸のように見えるかもしれないけれども、私は子どもが素直に育ってくれたこと、自分の両親が陰ながら応援してくれたこと、ここのおじいちゃん、おばあちゃんが私のわがままを全部受け入れてくれたことなど考えると、本当に恵まれていると思っています。"
"私、寝たきりで動かない夫を見ていて、これは私に対する生き仏かなって思いました。だって本当は一遍死んで、電気ショックで生き返ったんですもの。何か生きておかねばならない理由があったのだと思います。結婚した時、私はお寺の仕事は嫌だったし、仏事に関することは全部おじいちゃん、おばあちゃんに任せきりでした。でも夫の病気という大きな大きな代償を通して、おじいちゃんの話や浄土真宗の教えが少しずつのみ込めるようになっていきました。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/10/16 『悲しみをとおさないと見せていただけない世界』
東井浴子 浄土真宗東光寺坊守
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※Photo by Greg Rakozy on Unsplash