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#291 『ライト兄弟が人類初の空中飛行をできた理由』

本日は、航空ジャーナリストの原俊郎さんの「ライト兄弟が人類初の空中飛行をできた理由」についてのお話です。

"ライト兄弟がまず手がけたのは印刷であった。たまたま手に入れた印刷機に改良を加え、新聞を出すのである。聖職者である父親が布教のための印刷物を出していた、といったことが素地になったのかもしれない。兄ウィルバーが記事を書き、弟オービルが印刷するという分担で、地方新聞としてなかなかの成功を収めた。"
"一つところに落ち着いていないのが新しもの好きの特性である。その頃はやり始めた自転車にライト兄弟は夢中になる、だが、そこは商売感覚のある二人である。乗り回すだけでなく、自転車販売を始めるのだ。それも仕入れて売るだけでは物足りない。既製の自転車には飽き足らないものがある。兄弟は印刷業を友人に任せ、オリジナル・ブランドの自転車を製造、販売するのだ。この商売もうまくいった。のちに飛行機に乗り出していく資金は、こうして蓄えられたのである。"
"一つのニュースが舞い込む。1896年である。ドイツ人の航空学者オットー・リリエンタールが飛行実験中に墜死したのだ。...事故死が兄弟にどのような衝撃を与え、何をもたらしたかを示す資料は乏しい。その点隔靴掻痒の感じがあるが、二人が衝撃を受け、興奮し、大きく変化したのは明らかである。以後、兄弟は飛行機械に没入していくのだ。それは新しもの好きがまた新しいものに魅了されて飛びついた、といったこととははっきり違っていた。"
"それからのライト兄弟は、それまでの多分に思いつきといった側面が影をひそめ、実に計画的に、用意周到に、事を進めるのである。それまでは印刷にしろ自転車にしろ、先行するモデルがあった。それまであったものを参考に改良し、新しい機能を付け加えていくというやり方だった。だが、飛行機械には先行するモデルはないのだ。文字通りの未知分野である。"
"全く何もないゼロからすべてを自分で構築していく。それは志と呼んでいいだろう。そういう志の局面に立った時、人は無茶苦茶に突き進むのではなく、逆に理性的になり、論理的になり、計画的になるのかもしれない。ライト兄弟がまさにそうだった。これはライト兄弟の変化である。その意味で、変化とは志を抱くことである、と言い換えていいのかもしれない。そして、変化は必然的に成長を促さずにはおかない。それが人類初の空中飛行という成功をもたらしたものなのである。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/10/18 『ライト兄弟が人類初の空中飛行をできた理由』
原俊郎 航空ジャーナリスト
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※Image by WikiImages from Pixabay