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#261 『悪いが良い、良いが悪い』

本日は、名古屋製酪社長の日比孝吉さんの「悪いが良い、良いが悪い」についてのお話です。グループとして1500億円以上の売り上げを誇るスジャータ めいらくですが、日比孝吉さんが1946年に創業したところからスタートしました。1952年に名古屋製酪を設立し、そこから会社を成長させてきた日比さんですが、実は1987年に大きな事故を起こしてしまい、存続危機まで陥りました。その当時のことが語られています。

"「めいらく」の規模が拡大するなかで、とんでもないハプニングに遭遇したことがありましてね。昭和62年に過酸化水素事故というのを起こしているんです。一部商品に過酸化水素が残留してしまった事故なのですが、マスコミからすべての商品に過酸化水素が混入しているような報道をされましてね。市場在庫をすべて回収し、40億円もの返品を抱えただけでなく、関西のスーパーなどから相次いで取引を停止されてしまいました。"
"苦境にある私たちの足元を見て、ある有名なスーパーが「3000万円持ってきたらおまえのところの商品を売ってやる」と持ちかけてきました。...3000万円が1ヶ月もしないうちに1億円・・。さすがに私も「もう結構です。商品を売るだけが商売ではありませんから」と、こちらから願い下げました。そういうスーパーがあるかと思うと、イトーヨーカ堂さんのように温かい手を差し伸ばしてくださるところもありました。"
"伊藤雅俊社長から「メーカーが困ったているときに応援するのが私たちの立場だ」と言っていただき、セブン-イレブンやデニーズなどグループの社長にも「めいらく」を支援するように話してくださった。そのおかげで、東京地区のほかのスーパーも取引停止にならず、東京の市場だけは無傷で残りました。そして、そのマイナスが非常なプラスになりました。"
"生産工程で不良品が続出して困っていたのが、その事故でピタッと出なくなったんです。...だらしがなかった生産部門が、存亡の危機を迎えてしゃきっとしたんですね。あの事故では実質数十億円の損害でしたが、ロスが出なくなったのを計算すれば1000億円以上の利益になったと思います。こういう事故、事件は他の食品メーカーも洗礼を受けていますが、それが会社の蘇生につながっています。みんな必死になる、本気を出す。だから「悪いが良い、良いが悪い」。これが大事なんですね、命まで助かっている。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/09/18『悪いが良い、良いが悪い』
日比孝吉 名古屋製酪社長
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※Image by Fathromi Ramdlon from Pixabay