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#268 『運を強くするには人の道を守ること』

本日は、大和ハウス工業会長兼CEOの樋口武男さんの「運を強くするには人の道を守ること」についてのお話です。樋口さんは、1963年に大和ハウス工業に入社し、その後取締役、常務取締役、専務取締役を経て、1993年に大和団地代表取締役社長に就任し、同社を黒字に転換させました。2001年には大和ハウス工業代表取締役社長に、2004年より会長兼CEOとして長らく経営手腕を発揮してきました。昨年会長職を退任し、最高顧問として大和ハウス工業の成長に貢献をしています。

"福岡時代には忘れられないお客様がいます。工学博士の小田さんという方です。現役の頃は土木工学の権威だったそうですが、リタイア後は先祖の残した山を開発して、600区画もの宅地を持っていました。それを我が社にも売らせてくださいと飛び込みで訪ねていきましたが、この小田さんは地元では「変人」と呼ばれて、人を家に上げたことがない。他社も数社訪れたそうですが、全部門前払いされたといいます。"
"当然私も最初はそうでしたが、通いに通いつめてようやく玄関先で話せるようになり、さらにはある日、「きょうはどうぞお上がりください。私は何万人もの人に会ってきたが、あなたのような人は初めてだ」と、どこをどう気に入られたのか分かりませんが、部屋に上げてもらいました。そうして仕事をいただいて、息子のように可愛がってくださるようになった頃、小田さんは、「私の資産は20、30億円あるでしょう。それを全部あなたに託してもいいから、独立して会社を起こしたらどうですか」と言われたんです。"
"当時の20、30億円といったらおそらくいまの100億円くらいあるでしょう。もともと私は自分の会社を持ちたいという思いで社会に出ていますから、喉から手が出るほどありがたいお話でした。しかし、25歳で入社して36歳で支店長にしていただき、こうして福岡の支店長をさせていただいているのも自分一人の力ではないという思いもある。私は「一晩考えさせてください」
と言って、その場を後にしました。"
"よくよく考えてみても、会社が自分を必要としてくれていることは分かっていました。世話になった会社に後ろ足で砂をかけるようなことをしては
人の道に外れるのではないかと思いまして、翌日、「大変ありがたいお話ですが、これからも先生とは''大和ハウスの樋口''としてお付き合いさせてください」と、お返事しました。こういう方との出会いがあるのも私の運の強さだと思います。"
"小田さんが亡くなられてからも13回忌までずっと出させていただきましたが、そのくらいになると集まるのは5、6人になるんですね。オーナーも事あるごとに「樋口君も運のいい人と付き合え。運の悪いやつと付き合うと運を取られるぞ」と言っていましたが、要は人の道を守らない人間に運なんてついてこないですよ。それと、親を大切にしない人間が他人様を大事にできる
わけがないですよね。親を大切にするというのは恩ある人を大切にするということです。だから、世話になった人に後ろ足で砂をかけて逃げるようなことは絶対にしてはいけない。運を強くするには人の道をちゃんと守ることが
一番大切だと思います。要するに人として当たり前のことを当たり前にする、凡事徹底ということです。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/09/25 『運を強くするには人の道を守ること』
樋口武男 大和ハウス工業会長兼CEO
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※Photo by marius sebastian on Unsplash