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#155 『マザー・テレサはなぜキレなかったのか』

本日は、元ノートルダム清心学園理事長の渡辺和子さんの「マザー・テレサ」についてのお話です。渡辺さんはキリスト教カトリックのシスターとして、生きるヒントや考え方を多く世の中に残してきました。ミリオンセラーとなった『置かれた場所で咲きなさい』では、「置かれた所こそが、今のあなたの居場所。そこで笑顔で生き、周囲の人々も幸せにしましょう」というメッセージが伝えられています。

また、NHK人物録のページには以下のような言葉がありました。

人生には穴が開くことがあると思うんですね
しかし 人を恨んだり
なぜなぜと聞くのでなくて
穴が開くまで見えなかったものを
その穴から見てやろうと
そして 見えるのだと


今回のお話は、マザー・テレサの振る舞いから学んだことが語れています。物事や状況をどのように捉えるかで、生き方や人との接し方が変わることがよく理解できるお話でした。

マザーが「マザー・テレサ」であり続けることができたのは、そういう自分自身との闘いと、ゆとりを常に持ち続けていらしたから

"私はマザー(テレサ)から、キレそうな時に、キレないですませる方法を教えていただきました。あれは1984年11月に来日された時のことでした。岡山駅までお迎えにあがると、辺りはテレビや雑誌の記者、一般の人で黒山の人だかりができていました。マザーがマザーがお着きになると本当に文字通り「フラッシュの雨」が降ったのです。その後、どこへ行っても、「マザー、こっちを向いてください」「次はこちらを」とびっくりするほどたくさんの写真を撮られて・・。異国の地での厳しい講演日程に加えて、新幹線や車など慣れない乗り物での長距離の移動、当時マザーは74歳でした。肉体的にも精神的にもお疲れしょうに、マザーは嫌な顔ひとつせずにニコニコと、本当にすてきな笑顔で応対していらっしゃったのです。"
"マザーがふと、「シスター、私はフラッシュが一つたかれるたびに、死にゆく魂が神様のみもとに安らかに召されるように神様と約束をしてあるのです」とおっしゃったのです。生きている間、いいことがちっともなくて、神や人、世間を呪っていた人たちの魂が「サンキュー」と言って穏やかに、この世と和解して死んでいくために、煩わしいけれど、疲れているけれど、笑顔をするんです、と。その上、「今日はまだ祈っていないから」と、寒いチャペルでストーブもつけずに、寝る前に1時間お祈りを捧げられました。マザーは祈りを大切にした方でした。"
"私はそんなマザーの姿を拝見して、人には「自分の心との葛藤」と「自分と対話するゆとり」が必要なのだと感じました。日常の中には、マザーにとってのフラッシュのような「煩わしいもの」や「イライラするもの」「面倒くさいもの」が、必ず存在します。そういう時にグッと我慢して、「これを我慢しますから、どうかあの人の病気が治りますように」と他人を思いやったり、「仕方がないよね」と許す「ゆとり」を自分の中につくる。キレそうになる自分を抑えるための、自分との小さな闘いが必要なのです。"
"逆に失敗した時は自己嫌悪に陥るのではなくて、「今度はもうちょっと我慢しようね」と自分と話してみる。マザーが「マザー・テレサ」であり続けることができたのは、そういう自分自身との闘いと、ゆとりを常に持ち続けていらしたからではないでしょうか。"


今回、マザーテレサについては2回目で、前回は志ネットワーク「青年塾」代表の上甲晃さんにお話でした。マザーテレサに会いたい一心で、インドのカルカッタまで訪れ、考え方が180度変わった経緯が語られています。


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/06/04『マザー・テレサはなぜキレなかったのか』
渡辺和子 ノートルダム清心学園理事長
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※Image by Ralf Kunze from Pixabay