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#89 『苦難こそが人生の肥やしになる』

本日は、バリアフリー研究者東京大学先端科学技術研究センター教授の福島智さんの「苦難こそが人生の肥やしになる」についてのお話です。

今回のお話は非常に刺激的でした。特に、自分自身、まだまだ苦難や苦悩に置かれた環境で、自分を冷静に客観視することがこれまでなかった、というよりできなかったので、人生の肥やしにする感覚を持てていないと気づきました。

そのような状況で冷静になれるだけの経験や力がないんだなと。その気づきが今回のお話であったことがよかったです。

"両目が見えない、両耳が聞こえないという障害を持ったことで、私は障害者のことを少しは考えるようになりました。やはりなにがしかの関係を持ったこと、広い意味での当事者になったことが大きなきっかけになりました。また、自分にとっての苦悩は他者とのコミュニケーションが断絶されることでしたが、これも実際に体験してみて初めて分かったことでした。"
"苦悩を体験することの凄さは、苦悩の一つのパターンが理屈抜きに分かること。もう一つは、苦悩する人たちが抱えているものを想像しやすくなるということですね。挫折や失敗をすることはしんどいし、できるだけ避けたいけれど、おそらくほとんどの人が人生のどこかでそれを経験する。いくら避けようとしても必ずなにがしかのものはやってくる。だから来た時にね、''これはこれで肥やしになる''と思えばいいんですよ。"
"一見無駄なものや嫌われているものが、実は凄く大切なことに繋がるということでしょう。これは自然界の一つの法則だと思います。"
"同じようなことをアウシュビッツの収容所を生き抜いたヴィクトール・フランケルが述べています。彼はいつ死ぬかも分からないという極限状況の中でも、苦悩には意味があると感じていたようですが、それは彼一人だけの思いではなかった。あの過酷な状況下で、自分以外の他者のために心を砕く人がいたように、ぎりぎりの局面で人間の本質の美しさが現れてくる時がある。"
"もちろんその逆に、本質的な残酷さや醜さを見せることもありますが、人間はその両方を持っているわけですよね。おそらく彼は苦悩をどう受け止めるかというところに、人の真価、人間としての本当の価値が試されていると考えたんじゃないかと思うんです。苦悩というフィルターをかけることで、その人の本質が見えてくると。"
"フランケルの主張で最も共感を覚えるのは、その人が何かを発明したり、能力が優れているから価値があるということよりも、その人が生きる上でどんな対応をするか。苦悩や死やその他もろもろの困難に毅然と立ち向かうことが最高度の価値を持つ、といった趣旨のことを述べている点です。"
"したがって、障害を持ったことや病気をしたこと事態に意味があるのではなく、それをどう捉えるかということ。身体的な機能不全を経験することも、それ自体に大きな意味があるんじゃなく、それを通してその人が自分自身や他者、あるいは社会、あるいは生きるということをどのように見るかが問われているのだと思います。"


「ぎりぎりの局面で人間の本質の美しさが現れてくる」
「苦悩というフィルターをかけることで、その人の本質が見えてくる」
「人が何かを発明したり、能力が優れているから価値があるということよりも、その人が生きる上でどんな対応をするか」

目に見える部分だけでなく、目に見えない部分に人間の本質があるのだと思います。そして、その本質は通常時には見えない。苦難や苦悩の過程に、そのような状況でどのような対応をするかで見えてくるんですね!


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/03/30 『苦難こそが人生の肥やしになる』
福島智 東京大学先端科学技術研究センター教授
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※Image by Hermann Traub from Pixabay