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#114 『「信用」は使ってはならない』

本日は、コクヨ会長の黒田暲之助さんの「信用は使ってはならない」についてのお話です。黒田さんは父が創業した黒田国光堂(現・コクヨ)に入社し、1960年から25年間社長を、その後、1985年から2009年まで会長を務めました。

今回のお話は、父の教えでもある「信用」の使い方について、黒田さんが語っています。個人的には、

"金は使ったら減るのは分かるが、信用というのは目に見えないだけに減ることが分からない。"

この言葉はとても心に残りました。目に見えるお金と目に見えない信用という2つの捉え方が、言葉と思考の関係に似ているなと思いました。信用は使うものではなく、お客様のために常に行動し続けることで増えていくものという気づきがありました。

"人の信を得るということ、つまり信用を築き上げるということは、一朝一夕にできないことは皆さんよくご存知です。創業して間もない企業や中小企業は、何とかして信用のある企業といわれるようになりたいと、トップから一般社員まで大変な努力を続けておられると思います。こうして真剣な努力を続けているとその成果が上がってきて、信用のある会社だといわれるようになります。"
"問題はそのあとです。ある程度信用ができてくると、それを使い始める。会社や社員の姿勢がだんだん高くなってくるわけです。つまり「君、そのくらいのことは何とかできんのか」ということで、無理を言うことが起こってくる。こちらが無理を言わなくても、先方から「支払いはそんなに早くしてもらわなくても」と言ってくれるようになる。納期が多少無理でも、徹夜してでも間に合わせてくれるようになる。しかしそれに甘えて信用を使い出すと、長い年月をかけ、血のにじむような努力によって蓄積してきた信用が取り崩されてしまう。"
"先代はこのことを戒めて、次のように言いました。「信用は世間からもらった切符や。10枚あっても、1枚使えば9枚になり、また1枚使えば8枚、といった具合に減ってしまう。気を許すと、あっという間に信用がなくなってしまう。特に、''上が行えば下これを習う''で、上に立つ者ほど注意しなければいけない」と。金は使ったら減るのは分かるが、信用というのは目に見えないだけに減ることが分からない。"
"先代はさらに、「信用は使ってはならない、使わなければどんどん増えていく」とも言っていました。使えば減るというのは当たり前のことなのにできない。事業をやるからにはどなたも最初は分かっていると思います。要はそれを続けるかどうかです。創業者の時代は見事にできていたものが、年を経てくると信用よりも銭金のほうが大事、あるいは建物が立派なほうが大事、という具合に価値そのものが変わってくる。"
幸せなことに私どもは大事なことが変わらなかった。何も人さまの前へ出て話すようなことではないんです。もう本当に三度三度のおまんま食べるぐらいの当たり前のことばっかりなんですが、当たり前のことがなかなか続かないんですね。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/04/24 『「信用」は使ってはならない』
黒田暲之助 コクヨ会長
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※Image by analogicus from Pixabay