どうして滋賀高島・未来のジャムに行きたくなるのかな|VOL.5〜7レポート
はじめまして、大越はじめといいます。奈良市に住んでいるわたしは、毎月1回、高島へ通っています。
理由は、ちょっと違う自分になりたいから。
2024年2月のことです。高島のまちでいろんな人に「あなたの好きなことはなに?」「やりたいことってある?」って聞くことがありました。
「お菓子をつくるのが好き」「ピアノを弾きたい」「学童やってみたい」「草木染めが好き」「こいのぼりつくりたい」
すぐ答えてくれる人も、しばらく考えてからのお返事も、大体みんな答えてくれました。「はじめてみたい」とか「実はやってみたい」とか「今年これしたい」とか。表現は人それぞれだけど、ちょっと違う自分になろうとしているのは、中高生だって、社会人だって、これから働こうと思っている人だってそうでした。
そして、ちょっと違う自分になるには「ちょっと違う場所」が必要です。このごろ高島には、学校の教室とか会社の会議室とは「ちょっと違う場所」が、ぽこんぽこんと誕生しています。
その一つが、TAKASHIMA BASE。2022年8月、JR湖西線新旭駅の目の前にある築50年の民家が生まれ変わったスペースです。
ここで、月に1度「未来のジャム」がひらかれます。
今回は、2023年11月〜2024年1月に開催された未来のジャムVOL.5〜7をショート版で紹介します。どこかの未来のジャムでご一緒できたら!とてもうれしいです。
VOL.5 地域。TAKASHIMAをまだまだおもしろがる|2023.11.16.
この日は、未来のジャムに初参加した日でした。
未来のジャムは、木曜の19時からはじまります。TAKASHIMA BASEに到着すると、ポリカーボネイトでつくられた「未」の字のとびらが見えました。
「2022年3月に立ち上がってから丸1年間、ブルーシートが壁代わりだったんですけどね。今日に合わせてSTUDIO MONAKAの大塚さんがつくってくれたんです」と、迎えてくれた瀬川さん。未来のジャムを運営している一人。
「未来のジャム」というちょっと変わったタイトルには、未完成の場だからこそ、建物も未完成という思いが込められているそう。
TAKASHIMA BASEのなかに入ると、開場45分前というのに、お客さんの姿がありました。しかも会場にイスを並べる手伝いをしているから、誰がゲストで誰がホストなのか、わからなくなる。
開始時間になると、50人近い人が集まりました。高島市の人口5万人弱の高島で、平日の夜にこれだけの人が集まるのは、すごいことだと思う。
この日のゲストは、小松 理虔(りけん)さん。VOL.1から登壇している、未来のジャムのナビゲーターのような存在です。
「今日はTAKASHIMA BASEで“できごと”をつくりましょう。みなさんの手元にふせんが3種類あります。1枚目に『高島といえば』、2枚目に『未来のジャムといえば』、3枚目に『わたしといえば』を書いて、組み合わせていきましょう」
「“できごと”を企画で終わらせず形にするコツは、ハードルを下げること。とにかくハードルを下げる。チャレンジをあたためない、やってみる。まずやってみることなんです」
福島県小名浜市でローカルアクティビストとして活動している小松理虔さん。その話は、なんだかトークというよりライブを聞いてるみたい。なんだか全身がポカポカしていきます。まわりを見渡すと、あきらかに会場のボルテージも上がってる。
この日は、おいしい差し入れもありました。TAKASHIMA BASEの大家さんが毎年仕込んでいる絶品のゆず酵素ジュース。
そして、高島市で柿農家を営む山口修平くんが、旬の柿を振る舞ってくれました。修平くんは30代の若手農家。いわゆるまちづくりを学校で学んだわけではなく、日々畑に出ながら、生まれ育った深清水地区の未来に頭をひねらせている修平くん。
「小松さんの話は半分くらいしかわからなかったんですけど、本も読んでみようと思います。」
まちづくりって、専門家が考えるものじゃなくて、このまちに暮らす一人ひとりがそれぞれの仕事と暮らしを続けた先にあるものなんじゃないか。そんなリアルな手ざわりを感じました。
(余談ですが、修平くんの柿がとてもおいしかったので、奈良に送ってもらうことにしました。)
すごいゲストを招いたトークイベントはあちこちでひらかれているけど、新旭駅で降りて、まちなみに触れて、そのリアルに触れられる場所って案外ないんじゃないかな。だからこそ、わざわざ奈良から通いたくなるんじゃないかな。
ほんの少しだけ、未来のジャムのひみつが見えた夜でした。
この日のハイライトは、未来のジャム終了後にありました。
ゲストの小松理虔さんと話していたのが、高島市椋川(むくがわ)出身の大学生・是永(これなが)さん。
「今は大学のある京都のシェアハウスに住んでいます。椋川の外に出て初めて、『わたしの地元は星がすごいきれいだったんだ』とびっくりしました。もっと自分がきれいだと思う風景を探してみたいんです」
是永さんは、未来のジャムVOL.7にゲストとして出演します。
いつまでも楽しそうに話している会場を見て、「なんだかふつうのトークイベントとは違う。一体なんなんだろう?」と思いつつ、終電で帰りました。
思いがけない出会いから何かはじまりそうな予感がして、次回も訪れてみたくなりました。
VOL.6 異和。湖北と湖西、外と内との入り混じり|2023.12.21. 木
TAKASHIMA BASEにやってくると、なんと庭に卓球台が!
さっそく“できごと”が起きていました。
この日、未来のジャムのはじまりのことばを話してくれたのが西村さん。ふだんは、高島で福祉法人を営んでいます。
「TAKASHIMA BASEは、登山でいうところの山小屋です。山を登るのは、人それぞれ。一人ひとりが、日々自分だけのヒマラヤにチャレンジしていると思うんです。ここで知識をつけ、新しい仲間と出会い、エネルギーを補給して、それぞれの持ち場でもう一度チャレンジしていけたら。今日は、ふだんの肩書きをおろして、ジャムジャムしましょう」
この日のゲストは、滋賀県長浜市のお二人。
埼玉県から移住し、賤ヶ岳のふもとで、ひとり出版社「能美舎」を営んでいる堀江昌史さん。お子さんと一緒にTAKASHIMA BASEへ。
滋賀在住の中学校3年生・黒川琉伊さんが出版した本「はじめてのびわこの魚」をはじめ、滋賀県のローカルに光をあてる本をつくっています。
そして、長浜まちづくり株式会社の竹村光雄さん。都市計画のコンサル会社に勤め、担当していた長浜エリアに移住しました。中心市街地で、2016年にオープンしたシェアスペース「湖北の暮らし案内所どんどん」をはじめ、数々のプロジェクトを手がけています。
20代の終わりで長浜に来て、今年41歳を迎えます。メディアで取り上げられることも多い竹村さんですが、意外な一言。
「長浜に住んで10年経ちましたが、この間にできたことってあんまりないんです」
どういうことだろう。
「長浜の中心市街地はもともと、買いもののまちとして栄えてきました。商いで生まれた利益が、まちの景観も育ててきたんです。だけど、時代は変わりました。オンラインの取引も増えて、商業だけでまちがにぎわう時代ではなくなっています」
では、あたらしい時代のビジョンをだれが描くんだろう?
会議をひらいてみるものの、なかなか本音を話しにくいのが実情だという。
未来に正解がない。10年後、長浜がどうなっているかは誰にもわからない。そのなかで、竹村さんが出発点としたのは。
「地元の同世代はどう生きていきたいんだろう?そこが出発点です。一人ひとりがもっている『こうなったらいいな』と思う未来。仲間のそれとぼくのそれを合わせると、二人の未来になる。それをあなたとわたし、あなたとわたし…としていくことで、描けるまちの未来があるんじゃないか」
茨城県生まれ。海釣りをしながら、田んぼのカエルの声を聞いて育ったという竹村さん。東京で都市計画のコンサルティング会社に勤め、担当していた長浜エリアに移住したのが20代の終わりでした。東京が頑張れば頑張るほど地方のローカリティが失われていくし、自分の生活も波の音から遠ざかっていく。こういうことをしたかったわけじゃないと思ったそうです。
今年41歳の竹村さんはまちづくり会社に所属しながら、消防団をはじめ、地域住民としての役も任されています。一見すると、すっかり長浜の人になった印象。だけど自身を「社会性のある自己中」と表現します。
「いただくお勤めはやるけどぼくは誰かのために地域のためにまちづくり会社をやっているとは思っていなくて。自分が気持ちよく生きていくには家族に機嫌よくいてもらいたいし、友達に機嫌よくいてもらいたいし、地域のみなさんが充実していないと『長浜すごいでしょ』って言えないから」
湖北に位置し、11万人が暮らす長浜市へ移住して、それぞれの畑でローカルを耕す二人の話は、高島の活動にもつながりそうです。
この日は、滋賀県内の長浜市、日野町、草津市などからも20代が集合。未来のジャムの終わりが見たくて高島に宿をとったこの日。なんと23時まで会場ではにぎわいが続いていました。
高島すご。
VOL.7 本音。若者たちは、だから高島に暮らし関わる|2024.01.18. 木
ただいま19時。未来のジャムの開始時刻を迎えた今、わたしはJR湖西線のなかにいます。京都行きの近鉄電車が遅れて、到着は20時ころになりそう。ゲストトークはもう終わっているかもしれない。
さすがに引き返そうかな…と迷いつつ、向かうことにしました。
堅田駅を過ぎて、だんだんと人がまばらになっていく湖西線のなかでふと浮かんだ疑問。
「未来のジャムって、どうしてオンライン配信しないんだろう?」
オンライン配信をしたら、もっと気軽に参加できる人も増えそう。関西一円、いや東京からだってアクセスがあるかもしれない。
…でも、もし配信があっても、わたしは参加しないんだろうな。
そんな気がしました。そこでハッとしたのが、未来のジャムに行く理由です。
すごいゲストのすごい話が聞きたいから行くんじゃない。みんなでジャムジャムと話し合って、いろんな人の言葉を浴びて、明日からがんばりたいから行くんだ。
ほしいのは、情報じゃなくて情緒なのでした。
さて、この日のゲストは、大学生の二人。神奈川県出身で高島に暮らしている田村志帆さんと、高島市椋川出身の大学生の是永さんです。
トークは終わっていたんですが、会場に着くとほっとしたんですよね。なんか、お風呂上がりの化粧水みたいに言葉がバシャバシャすっと入っていきました。
会場に身を置いて、かちこちになっている自分をほぐしたところにたくさんいい言葉をかけると、よく浸透していくみたい。
この日は、未来のジャムで運営をしている一人・ぼくみんの瀬川くんが録音した音声を送ってくれたので、それを聴きながら湖西線に乗って家路につきました。
田村志帆さんは、漁師志望。
「小さい魚の暮らしが続いていく世界に、漁業を通して関わっていけたら」といいます。出身は神奈川県。滋賀にいかりを下ろすようになったのは、2022年のことでした。
2023年には日本各地の漁業を訪ね「漁師として、自分は何を大事にしていくんだろう?」と自分に問いかけます。行き着いたのは「魚が好き」というまっすぐな気持ち。
学生で、漁師で、移住者という立ち位置から度々メディアでも紹介される田村さんですが「伝えることが目的ではないんです。ただここにある命と向き合いたい」と締めくくりました。
是永さんは、生まれ育った高島市椋川(むくがわ)の春夏秋冬を音で伝えてくれました。
「椋川は、四季によって聞こえる音が変わります。春は草むらからアマガエルの大合唱、夏は日本海へ流れていく寒風川の音、秋の子守唄は鈴虫。そしてわたしは、冬が一番好きです。雪がこんもりする日はほんとうに椋川じゅうが静かで、ドカドカって雪の落ちる音が目覚ましの日もあります」
「夏につくったシロップを、新雪にかけてきょうだいで食べます」
人の暮らしが続くことと同じくらい、生きものの暮らしが続いていくことの大切さを問いかけてくれたのは、学生の二人でした。
ということで、よし、次回も行くぞ。
みなさん、どこかでごいっしょしましょう。きっと楽しーよ◎
(編集=大越はじめ、写真=瀬川航岸・大越はじめ)
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「未来のジャム」を企画する「TAKASHIMA未ラボ」の日々の発信は、Instagramをご覧ください!
https://www.instagram.com/jam_tm.lab/
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2024年8月から、3シーズン目の「未来のジャム」がスタートします!
詳細は以下のリンクをご覧ください。
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