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コロナ後の社会とファッションを歴史から考える⑵ 〜ヒッピーカルチャーから未来へ〜

大好きなファッションを通じてこれからの世界を模索します。
第2回目は「ヒッピーカルチャー」にフォーカスします。当時と重なる世の中のニーズ、そして進化したテクノロジーを加えてポジティブな社会と未来を描きます。


■前回の「第2次世界大戦とその後」に続き、今回は「ヒッピーカルチャー」にフォーカスした話を聞く。なぜこの時代か?

まず、前提として、今までお話しする時には【恋せよ乙女!パープルーム大学と梅津庸一の構想画『泰平プレゼンツ「ポスト・モダンからプレ・シンギュラリティへ -疲弊から興隆への理性的移乗 Ⅱ」』(※1)に習いこの〈ポスト・モダンからプレ・シンギュラリティへ〉という主題を基にしていました。

簡単に言うと2045年、AIが人間の知能を超えるという予想がある。そこで世界がガラッと変わることが見えているので、過去からの延長で物事を考えるのではなく、来るべき未来からバックキャストで考えましょうということでした。
パラダイムシフトは2045年AI革命、それに向けて「プレ・シンギュラリティ時代を生きよう」と。しかし、そうはいかなくなってしまったということです。

■新型コロナの影響。今の時代と当時の共通点は?

2045年を見据えていたはずが2020年世界を変える出来事が現実に起きた、それが新型コロナによる生活変化です。なので、ポストコロナ、ウィズコロナ時代に合わせた生活を再構築する必要性が出ています。

ヒッピーカルチャーは、急激に高度経済成長、消費社会へと向かう社会へのカウンターカルチャーとして、1950年代にその前身であるビート(ニク)がアメリカで生まれました。「その流れに乗らないと社会にはいられないのか?乗れない人間はどうなるのか?もっと人間らしい生き方があるのではないか?」と。(※2)
このところずっと言われている「資本主義の限界」のことも考えると同様の疑問が浮かびます。

■具体的にヒッピーカルチャーに通じる部分とは?

具体的なキーワードは3つです。

1つ目は「自立」の必要性、大切さ。
政府や国に頼ってばかりいられないということが3.11に続き、今明らかになっています。

2つ目は「平等」 の必要性、大切さ。
誰でも同じウィルスに感染するという事実と、そういう時こそ誰もが分断せず情報を共有し、協調して最善策を取ることの大切さを痛感します。

3つ目は「自然」の必要性、大切さ。
自然が失われ、動物と人間の距離が近くなって新型コロナが広がったという説があります。自然と人間が共存共生できる環境の大切さです。

ということを踏まえると、「自立=DIY精神」「平等=ラブ&ピース」「自然=ベジ、ヴィーガン、パーマカルチャー」これはヒッピーカルチャー、世の中を変えるためのカウンターカルチャーに通じるのではないかと可能性を感じます。

■ファッショントレンドとしても?

一気に軽い話になりますが…ヒッピーカルチャーの装いから考えると、タイダイのTシャツとリネンのパンツでマックブックを片手に、自宅や近所のカフェでソーシャルディスタンスを保ちながら仕事をする。そんなのがクールなのかなと。こだわりのある方はグレイトフルデッドのヴィンテージタイダイTだったりして、古着でサステナブルも意識します。
タイダイはオンラインでも「映え」ますし、外出ができない中でもアウトドアのような開放感を感じるような雰囲気もあります。あまり好きな言葉ではないですがリモートワークで「抜け感」「こなれ感」がより求められるようになるのではないでしょうか。
例えば、スターバックスでマックブックを開いて仕事をしていた人たちの光景をたくさん見てきたと思いますが、それらがより「ビジネスマンの装い」から「フリーランスの自由な装い」に寄っていき、それがよりクールに見えてトレンドになっていくような。生活環境が変われば、その中でまた流行が生まれる。世を表すファッションらしい部分かもしれません。

また別の話ですが、先日ナイキが発表した100%再生素材のスニーカーが「スペース ヒッピー」という名前であることも興味深いです。(※3)

■トレンド以外に、気にすべきことは?

すでに環境保護、気候危機などの観点から意識している方も多いとは思いますが、引き続く消費社会に対して、人間として学ぶ、前進するという視点を加えて「モノを選ぶこと、吟味すること」もこの変化に合わせてできることだと思います。
そのヒントもヒッピーカルチャー全盛期、1968年に刊行された消費社会において本当に必要なモノを再編集した「ホール・アース・カタログ」というカタログ誌にあります。

このカタログで提示される選ばれた道具たちの基準が参考になるのではないでしょうか。

(1) Useful as a tool,
(役に立つ道具である)
(2) Relevant to independent education,
(自立教育に関係がある)
(3) High quality or low cost,
(ハイクオリティー、もしくはローコストである)
(4) Easily available by mail.
(メールで簡単に手に入る)
                          (※4)

 
特に(2)「自立教育に関係がある」が重要で、それを選ぶことで自分が何を得て、何を学べるか=自立へ進めるか、ということを選択する意義は大きいと思っています。また、偶然にも(4)はすでに今最も必要とされている基準の一つです。

■では、そんなヒッピーカルチャーから見える未来は?

前回の大戦後の時にもお話ししましたが、ここでもデジタルやITの活用は欠かせません。
例えばヒッピーカルチャーではLSDやマリファナといったドラッグカルチャーがあります。ユートピア思想や精神世界への傾倒といったこともありますが、同時に、コミューンなどで「平和、平等」を維持するための手段だったとも思います。自己中心的な考えや欲を捨て、お互いを思いやりながらラブ&ピースでずっと共同生活を続けていくことへのストレス。それは想像を絶するものだと考えられるので、そんな中で平常を保つための手段だったのではと思います。
それを今後はデジタルで代替えして、VRなどヴァーチャルで深層意識へアクセスするなど、危険性や副作用を取り除いて進化させられる技術があり得るかもしれません。
これはあくまで例え話ですが、ヒッピーコミューンで難しかったコミュニケーションや資金面、経済の回し方などをデジタルで解決して成立させていくということは、これからのコミュニティの有り方のヒントになるでしょう。それでも「ユートピア」が手に入るかはわかりませんが。

また、アップルの創始者、スティーブ・ジョブズはヒッピーカルチャーど真ん中で若い時代を過ごし、影響を受けています。全く詳しくないので推測ですが、彼がコンピューターやアイフォーンを作った理由は、人間らしさを取り戻すため、つまり(前回の)山下さんの「バイトやめる学校」話同様に、便利なコンピューターで仕事の時間を縮小して、人間としてクリエイティブな時間や、幸せを求める時間を生み出すことが目的ではなかったのだろうか、そんな風にも考えています。アイフォーンひとつで少しの時間にさっと仕事を済ませながらひたすら世界中を旅する。そんな生き方です。ジョブズ思想については詳しい方がいらっしゃるかと思うのでぜひ教えていただきたいです。
今回のワーリモートワークで自分の時間が増えたことを考えるとますますそんな実感を覚えます。

■さらにその先の向かうべき未来は?

そして、最終的に向かう未来としては、「新しい人間像を創ること」につながるのではないかと思います。長期的に見ると、バイオテクノロジーなど自然とテクノロジーを融合してファッションも含めて新しい人間像の創造、そしてサステナブルを両立させる。
現段階では想像の話ですが、シンギュラリティ時代を見据えても、それが目指すべき道なのかもしれません。

 (おわり)



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