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風が巻く日

台風の前に病院の洗濯物を引き取りたくて、お盆休日ダイヤの電車とバスを乗り継いだ。
30分に1本のバスを目前で逃がし、時折強くなる雨足を受けるバス停の屋根の下に待つ。
不規則な風が時折止まり、時折巻く。大きな台風が沖で居座っている日。

面会時間の10分前に、面会受付の待ち行列に並ぶ。
休憩テーブル群の隅っこでツナマヨのおにぎりのセロハンをあけていると、隣では亡くなった方の家族が話していた。
警官が同席し、立ち話で検死と現場検証にあと1時間ほど、と告げている。

別の家族は、葬祭場に電話をしている。
旧盆の入りに、ご遺体を預かってもらう巡り合わせになった模様だ。

さあ、さっさとおにぎりを食べ終わって、パパさんの見舞いに行かねば。
ジャスミン茶の香料が、思いのほか強く匂った。

早く家へ帰って、台風の前にサンダルなど取り込んだり施錠したりを確認してやらないと。

風が不規則に、木を止めたり揺らしたりしはじめている。雨が、急に、止まった。

元気を出せとは自分に言わない。
淡々と動ければそれでいい。
止まるなら、作業の塊のおわりのところで。
そこまでは動け、そこまでは。

「最大値の2割」ぐらいで構わないから、ご機嫌でいたい。いろいろあって、いろいろ重なって、とてもご機嫌でいられない時の「逃げ場」であってほしい。そういう書き物を書けたら幸せです。ありがとう!