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暗く、重く、煙を吐く

外界のざわめきから遠く離れた私の書斎、そう万年床の中では、時の流れが静かに、しかし確実に進んでいる。壁に掛かった時計の針が、無言のリズムを刻む中、私は深くため息をつきながら、iPhoneに向かっている。布団の上には、iQOSの吸い殻が少しずつ積もる灰皿と、冷めつつあるコーヒーのカップが置かれている。

iQOSから立ち上る煙が、部屋の中を漂い、それが唯一の動きを見せている。

窓の外では、冷たい風が続いている。風音が、この静かな部屋に響き渡る。しかし、その音すらも、私の心には届かない。私の心は、もう長い間、何も感じることができなくなっている。

私は、iQOSを口にくわえ、深く吸い込む。その煙が、肺を満たし、一瞬だけは心の重さを忘れさせてくれる。灰皿には、使い終わったiQOSの吸い殻が積み重なっている。その中には、私の多くの考えや、書けなかった言葉たちが含まれているように思える。

そして、コーヒー。その苦さが、現実の厳しさを象徴しているようだ。私は、カップを手に取り、ゆっくりと一口飲む。その味は、心に染み渡り、現実を直視する勇気を少しだけ与えてくれる。しかし、その勇気もまた、すぐに消えてしまう。

心の中は、薄暗い。たまに心の中を照らす街灯のような光が、何とも言えない寂寥感を増すだけだ。壁に掛かっている絵画や写真たちは、過去の栄光を語るかのように、色あせたままで私を見つめている。彼らは、かつては美しかったのだろうか。しかし、今ではその美しさも失われ、ただの物体に過ぎない。

私の心は、常に重い。それは、この世界の重さ、人生の重さを感じているからだ。喜びや幸せ、それらは遠い昔の話のようだ。今の私には、ただ悲しみと絶望しかない。私の心は、暗い闇に満ちており、その闇を照らす光など、どこにも存在しない。

それでも、人々は私に明るい言葉を求める。しかし、私にはそれを与えることはできない。私の言葉は、常に冷たく、重い。私の心は、闇に満ちていて、その暗さを照らす光など存在しない。

「明るい言葉なんて」と私は思う。それは、現実を直視せず、幻想に逃げ込むことに過ぎない。iQOSをもう一本手に取り、コーヒーを一口飲む。苦い味が、この無慈悲な現実を反映している。私は、そのような虚偽を口にすることはできない。私の言葉は、この暗い現実を反映している。それが、私にできる唯一の真実だ。

この万年床という書斎の中で、私は自分自身と対峙する。壁に掛けられた時計の針が、刻々と過ぎていく時間を教えてくれるが、それはただの数字に過ぎない。時間は、私にとって意味をなさない。過去も、現在も、未来も、すべてが一つに溶け合って、区別がつかなくなっている。

私が書く言葉は、いつも心の奥底から湧き出てくる。それは、私の内なる声を反映している。しかし、その声は常に暗く、重い。私が感じている絶望、孤独、そして無力感が、文字になって画面に映し出される。それらの言葉は、私の存在そのものを示している。

私は、この世界をどうにかしようとは思わない。ただ、私の感じていることを表現するだけだ。私の周りには、常に暗闇が広がっており、その中で私は生きている。明るい言葉や希望に満ちたメッセージは、私には無縁のものだ。

私は、再びiQOSを口にする。その煙が部屋の中に広がり、私の視界をぼやけさせる。そして、コーヒーをもう一口飲む。その苦さが、この世界の真実を教えてくれる。私は、その真実を受け入れ、それを言葉にしている。

この書斎で、私は自分の心の中を探り、その深い闇の中に潜む言葉たちを見つけ出す。それらの言葉は、時に重く、時に切ない。しかし、それらはすべて、私の本当の気持ちを反映している。

「明るい言葉なんて」と私は思う。それは、現実から目を背けることに他ならない。私は、現実を直視する。たとえそれがどれほど暗く、悲しいものであっても。私の言葉は、その現実を伝えるためにある。それが、私にできる唯一のことだ。


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