アイデアの才能を、何に使うべきなのか。
人の考え方、というのは多分に主観的で、
それはその人がどんな環境で生きてきたのか、
ということに大きく左右されます。
「強者の論理」というものが
「弱者を切り捨てる」というものになりがちなのは、
やはり強者は強者として、
主観的にしかものが考えられない傾向があるからです。
そんな人の性質を前提にしたとき、
一国の政府というものが、強者の論理と弱者の論理、
そのどちらに立つのか、ということが、
政策を大きく左右します。
何しろ、強者の目には、強者しか見えないのですから。
野党というのは、だいたい弱者を見ろ!という主張をしているので、
どこかいつも必死なんですよね。
その必死な姿が、どうやら無関心な方には
「痛く」見えて、嫌われてしまうようです。
今の日本の政府は、強者の論理の政府だ、
ということを前提にすると、
ここからの話は、とてもわかりやすいと思います。
※
これは2019年のこと。
まだ安倍晋三さんが総理大臣の頃、
私はとある国会中継の動画を観ていました。
基本的には日本共産党の小池さん
(都知事じゃないほうの小池さんです)が、
年金問題について、安倍総理(当時)にズバズバ切り込み、
まったく議論が噛み合わない、という内容です。
安倍総理(当時)が採用したマクロ経済スライドという仕組みでは、
今後、どんどん年金は減っていく。
安倍総理(当時)の説明する政府の考え方は、
端的に言うと、こういうこと。
年金というものは、給付と負担でできている。
負担以上の給付をするということは不可能なため、
今の若者でもずっと年金をもらえるようにするには、
給付額を減らすしかない。
けれどもそうすることによって、なんとか年金制度を維持できる。
しかし、維持されたその年金では、
まったく生活できるレベルではないので、
年金だけを当てにせず、それぞれが若いうちから
金を貯めなさいよ。
そういうことでした。
ポイントとなるのは、
●今の若い世代も、年金は、もらえる。
●でも、その金額は、どんどん減っていく。
そういうことです。
※
それに対して小池さんが言っているのは、
たとえ年金がもらえたとしても、
そんなに少額では生きていけない。
つまり、政府は「年金制度」が存続しさえすれば、
国民のくらしはどうなっても構わないのか?
ということを言っています。
人間らしい豊かな暮らしをするのに、
毎月5万円も赤字になることに対して、
政府が何も案を出さないのは、おかしいでしょう?と。
すると安倍総理(当時)が、
「年金は負担と給付でできている仕組みなのに、
じゃあ小池さんはどうすればいいと言うのですか?」
と問います。
小池さんはこう答えます。
「税金の取り方を変えればいい。」
●所得税の累進性をもっと高めて、高額所得者の税金を増やす。
●法人税をもっと高くして、儲けた企業からの税金を増やす。
●株などで儲けた所得に対する課税をもっと高くする。
これらのアイデアはつまり、
「強者からもっと取ればいい」という弱者の論理です。
小池さんは、
「こんな税制をやっていたんでは、日本の経済は破綻しますよ」
と言います。
それに反論して安倍総理(当時)は、
「今の税制を変える方が、経済は破綻する」と真っ向から言いました。
この部分の口調は、その他のときの曖昧な言い方ではなく、
自信を持った言い方だったように感じました。
ここで議論されているのは、弱者の経済vs強者の経済であって、
強者の経済を背景にした安倍総理(当時)の、絶対の自信に見えたのです。
安倍総理(当時)は、この経済政策を本気で正しいと思っている。
そう感じました。
※
気になったのは、その動画のコメント欄での人々の議論でした。
具体的に言えば、
小池さんの言うような経済政策をすれば、
つまり、金持ちからもっと税金を取ろうとすれば、
企業は外国に逃げてしまう。
富豪も外国に逃げてしまう。
経済は日本だけでできているのではないから、
グローバルな目で見なけれないけない。
彼らが逃げてしまえば、それこそ経済の基盤が破壊される、と。
それもまた、ひとつの正論ですよね。
れいわ新選組などが掲げる税制を現実的ではない、という人は、
やはりそういう考えに至るからなのだと思うのです。
安倍総理(当時)も、そのことはわかっている。
金持ちを優遇しなければ、彼らは出て行ってしまう。
彼らを日本に居させるには、彼らを優遇するのがいちばんだ。
そういう視点でみれば、彼らが日本にいるというだけで
経済そのものが存在でき、人々は生活できるのだから、
それがすでにトリクルダウンではないか、という発想もできる。
なるほど、彼らの経済に関する心理が見えた気がしたのでした。
※
水が高い方から低い方へ流れるように、
お金も人の欲望に付き従って動いていく。
人に欲望がある限り、その性質は変わらないのだとすれば、
税金の取り方、というのが「金持ち優遇」傾向になる仕組みそのものは、
理解できますよね。
でも、その「使い方」はどうでしょう?
当時、安倍政権は防衛費(つまり軍事費)を
5年連続で拡大し、それは過去最高を更新し続けていました。
政府が導入を決めているF35ステルス戦闘機は
1機の値段が116億円とされています。
もうあまりにも高額な数字なので、実感がわかないですが、
軍事費の数字と福祉の数字では感覚が変わってしまうのは、
大根1本の値段だと10円だけでも高く感じるのに、
高級車の値段だと800万と言われても「安い」と感じてしまう、
人間の感覚の不思議さがあります。
本当はそこには「大根にしては、高い」とか、
「高級車にしては、安い」というレッテルがあるのですが、
本当は大根も高級車も同じ財布から買うのだ、
という感覚を見失ってはいけないわけですよね。
先ほど話した年金の不足分、つまり、
「足りないから、自分で貯めておけよ」という部分のお金、
このF35戦闘機、3機分で賄える金額です。
政府はこのF35を、147機、買うことにしています。
あなたはどう感じますか?
※
私が考えていること、というか、考えたいことというのは、
もっとまったくちがうレベルなんですよね。
水が高い方から低い方へ流れるように、
お金も人の欲望に付き従って動いていく。
そのルールを変える方法はないのかな?ということ。
そんなのないよ、と言うのは、ちょっと早計だと思うんです。
生物はみな、生きるために進化していきます。
人間の進化は2つあって、ひとつは技術革新による進化。
もうひとつは「精神の進化」です。
人間の欲望と金が密接に絡む以上、
経済の二極化は避けられないし、進む一方であることは、
もう当たり前のことなのだとしましょう。
では、それでも人間が幸せに生きていくためには、
どんな手段があるのかな、ということです。
資本主義も、共産主義も、ひとつの共通点があって、
それは「経済の仕組みだ」ということです。
では「経済以外のものはないのか?」ということ。
そういうところに何か別のモノサシを発明する以外に、
もう道がないように私には思えているのですよね。
もちろん、私の中に答えもヒントも存在してません。
でも、経済が生まれる前から人類はいたのだから、
経済に変わる何かに変化・進化することはありえる。
経済社会に生まれた我々には、今は想像もできないだけの話なのです。
夢みたいなことを言ってるのはわかってるのですが、
誰かがこういうことを考えないと、
ずっとこのままだし、このままいけば、いつか終わりですよね?
「こうだから、こう」という既成概念を打ち崩してこそ、
進化が生まれる。イノベーションが生まれる。
私が言っているイノベーションは、
スティーブ・ジョブズが成し遂げたことよりずっと意味のある
ずっと素晴らしいイノベーションなはずですよ。
税金を取ると金持ちが逃げていく、というなら、
金持ちが税金を払いたくて払いたくて仕方なくなるような
ナイスなアイデアはないでしょうか?
そういうことを発想してみるのは、めっちゃ楽しくないですか?
今、世の中にいるアイデアマンたちは、
本当はそういうことに、その才能を使うべきなんじゃないか?と
私は常々、思っているわけなのでした。
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