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金融業界の人ほど、MMTを否定する本当の理由。

ここのところ、なんどかMMT懐疑論について書いてきました。
しかし、日本だけでなく、世の中全体が、
コロナ禍を経て脱緊縮財政に向かいつつあることを感じています。

そんな流れの中でも、頑なにMMTの貨幣観を拒む人々がいます。
それらは金融業界の方であったり、
経済の専門家であることが多いですね。

それが何故なのかを
「根元思考・ルーツシンキング」でずっと考えていました。
そして「こうなのかも知れない」ということがわかったので、
今日はそのことについて書いてみます。

できれば、MMT否定論・懐疑論の人にも読んでみていただきたいです。
気分悪くされる部分もあるかも知れませんが・・・

まず、どうしてこの結論に辿り着いたか、という経緯を説明します。
ジェレミー・リフキンが30年も前に書いた
「エントロピーの法則」という本を読んでいて、
衝撃的な事実と出会ったのです。

熱力学のふたつの法則です。

第一の法則が「エネルギー保存の法則」
これは、地球という閉ざされた世界では、
物質の総量は決して増えないし、消えない、というものです。

面白いです。

エネルギーが使用されても、それは未使用のエネルギーが
使用済みのエネルギーに姿を変換しただけで、
この世には存在しつづけている。

過去にこの世に生きていたすべての人類や、
すべての生命は、死んで姿はなくなっていますが、
成分としては今もこの地球上にいる、ということです。

逆に言えば、今は70億人の人口が、
近い将来100億人に達すると言われますが、
無から30億人の人間が増えることはないので、
地球のその他のものが減って、30億人の人間になる、ということです。

これを理解すると、
人間は地球という天体の表面にくらす生命体なのではなくて、
人間も地球というひとつの生命体の一部分なのだとわかります。
人間は、地球自身なのですね。地球を構成する様々な成分が、
偶然、いま、人間の形になっているだけなのです。

(しかもこれは哲学や思想ではなく、科学的な事実なのです!)

第二の法則が「エントロピー増大の法則」
これは、すべての物理現象は無秩序性を増大させる方向に
一方通行で変化する、というものです。
ちょっと難しいですが簡単にいうと、こうです。

ブラックコーヒーにミルクを入れると、最初は黒白くっきりわかれているのが
だんだんと混ざって、薄茶色の安定した状態になります。

その状態から、もとのコーヒーとミルクに自然に戻ることは絶対にない、
ということですね。
これが全宇宙を支配している大法則だというわけです。

エントロピーというのは秩序がない状態のことなので、
秩序のある状態から、秩序のない状態にむかって、
一方向に変化するのです。

もちろん、秩序を持たせることは可能なのですが、
それには別のエネルギーを使う必要があって、
そこで別の無秩序が生まれている。

例えば熱いコーヒーは、熱いという秩序のある状態から、
やがて周囲と同じ温度にまで下がります。
熱というものが拡散していってしまったからです。

自然の力によって、もういちど「熱い」状態にはなりません。
しかし、レンジでチンすれば、また熱々になりますね。
そのときは電子レンジを作動させるというエネルギーを消費していて、
そのエネルギー分だけ化石燃料を燃やすなどして、
秩序は崩壊しているわけです。

このことから導き出される経済の考え方も存在していて、
そこでは人間の活動というものは、
使えるエネルギーを使えないエネルギーに変換しているに過ぎない、
というマクロな視点に立ちます。

そうすると、いつかは必ずこの世は
使えないエネルギーだけになって終わりがくるわけです。

これは、地球という「閉ざされた系」にある
「エネルギー保存の法則」があるからです。

なんとなく、わかりますか?
例えば、今、我々が直面している地球温暖化を
熱力学の法則から説明するとこうなります。

人間は太古に生きた生物や植物が体内にため、
地中深くに何万年も閉じ込めていたCO2を、
ガシガシ掘り返して大気中にばらまきつづけた。
CO2には温室効果という作用があって、CO2が増えると
地球に降り注ぐエネルギーと、
地球から放散されるエネルギーのバランスが崩れ、
地球の気温が高まってしまう。それにより水の動きが変わって
気候変動が起こり、人類を含む、現代に生きる生命にとって
暮らすことができない環境になっていく。

そういうことですね。

化石燃料を燃やして出てくるCO2も、
地球にもとあったCO2なのですよ。
ただ、何万年も地中に埋まっていたわけで、
それが存在しない状態に適応して
ここ数万年の間、気候は安定していたわけですね。

そのバランスが、ここ200年ほどで一気に崩れてきた、ということです。

いま、地球上で起きている最大の課題は地球温暖化による気候危機です。

では、なぜ地球温暖化が起こるのか?といえば、
それは人間が活動するからですね。
人間の活動というのは、もちろん経済活動のことです。

人間が金を稼ぐために行う環境破壊活動が、
自然の治癒速度を超えているために、どんどん地球が壊れてくわけです。

では、なぜ人間は金を稼ごうとするのか?
そこを考えなければいけないわけです。

それは、お金がなければ食べていけないからでしょうか?
もちろんそれもあるのですが、もっと根元的に言うと、
そもそも「貸すお金」という存在を生み出してしまったからなのです。
お金には「利息」というものがついていますね。

この世に存在するすべてのお金には「利息」があります。
しかも複利といって、
時間の流れと共にどんどん増えるようになっています。
しかし、我々の身の回りにあるすべてのものは、
時間の流れと共に朽ちていきますね。エントロピー増大の法則です。
お金は宇宙を支配するエントロピー増大の法則に逆らっています。

自然は朽ちるが、利息は消えるどころか増えるという
自然に逆らった法則を生み出したせいで、
人間は貨幣経済の中でお金を稼がなければいけない、
という状況を生んだのです。

今、SDGsの世界で「株主第一の資本主義の終わり」だとか、
「ステークホルダー資本主義」などというものが取り沙汰されているのは、
この「エントロピー増大の法則に抗う」という部分を
少しでも小さくして資本主義を延命させようという試みだ、
ということなのです。

ここまでわかるでしょうか?

何が言いたいのか?というと、
金融経済を前提とした資本主義というものは、
100のお金を借りて105にして返すという、
自然界にはないルールのせいで、
その「5」をどこに背負わせるか、
という矛盾を生まれながらに抱えているのです。

例えるなら、金融業界という世界は、
いつか必ず破裂することがわかっている風船に空気を送り込みつづける、
ということをやっているんですね。

そして、破裂するまでの間だけ、金を儲けることができる。
それが金融経済なのです。

そして金融経済の世界に身を置く人は、
意識的にか、無意識的にかは別として、
その矛盾をいつもどこかで認識しているのだと思います。

思い返せば、バブルの崩壊にしても、リーマンショックにしても、
金融経済というものは、必ず風船が破裂するという結末を迎えますね。
だって、100を105にして返すというのは
絶対に不可能なことだからです。

その5を誰かの手に渡して逃げさろうとするわけですが、
それはババ抜きのようなもので、いつか必ず最後の一枚になる。
それがエントロピー増大の法則であり、
そうなったらもう破綻する決まりになっている。
破綻することで最終的に辻褄を合わせる部分が、
エネルギー保存の法則ですね。

金融の世界とは、つまりそういうゲームなのです。
金融とは、いつか必ず破裂する風船に空気を送り込みながら、
破裂するまでの時間を長くすることをやっているわけです。

金融の世界にいる人は、
その矛盾を心の奥底に仕舞い込みながら、今日も目先の利益を追うのです。
その後ろめたさに気づきたくないのでしょう。

その気持ちは、痛いほどわかります。

経済学者たちがMMTを批判するとき、
「MMTは利息を無視している」というのは、そのことなのですね。
お金を無限に発行することはできるだろうが、
お金には利息というものが付随しているわけで、
地球資源が有限である以上、無限の成長は必ず破綻する。
その日が早くなってしまう、ということを恐れているわけです。

しかも「潜在的に」ということだと思います。
だって、成長を否定してしまったら、
自分たちが稼いでいる方法そのものを否定してしまいますからね。

必ずやってくる破綻とは、
彼らが言う「財政破綻」ではないのです。

そうではなく「地球の破綻」です。
経済的な破綻ではなく、環境破壊という意味です。

そういうことなら、彼らの不安は私にも十分理解できます。

ここからは私の意見ですが、
MMTは現代の貨幣観を正しく説明していると思うし、
今となっては多くの経済関係者がそれを認めていることでしょう。

また、現代の行き過ぎた成長資本主義が甚大な経済格差を生んだことも、
誰も否定できないことと思います。

MMTをうまく使うことで、
経済格差が埋められることはまちがいないでしょう。
しかしそれは同時に、経済が活性化することを意味します。
そうなると、人間活動が活発になり、
地球環境が破壊される速度が速まってしまうのも確かでしょう。

だから、私はこんなふうに思っているのです。

人類が今、早急に解決しなければならない課題は、
まちがいなく気候危機です。
それを引き起こす資本主義というシステムを
抜本的に変更しなくてはいけません。

まずは人類の生産活動をスローダウンさせる必要がある。
経済発展や経済成長を捨てる、ということですね。

エネルギーをたくさん使って、時間を節約するという価値観も
捨てなければいけません。
フランスで、市民が考えた気候変動対策案が国で採択されました。

2時間以内で行ける国内線の飛行機は禁止となり、
その代わりに廃止されていた寝台列車が復活することとなりました。
「時間」と「生きる質」の価値観を改めていこうという
意思表示に他なりませんね。

しかし、今のように極端な格差が広がった状態では、
フランスの市民のように高い意識を持ったり、
そのアイデアを実施することはできません。
経済的に苦しい人は、課題を考える余裕がないからです。

人類が気候危機という共通の課題に向き合うためには、
経済的困窮という問題を早急に解決しなければならないということです。

日本において、格差社会を早急に終わらせる方法としては、
所得の凸凹をなくしていくことですね。

所得税の累進性をあげると共に、
株などで儲けたお金の税率を低く抑える分離課税をやめ、
お金をたくさん持っている人から、多めに徴税します。

その上で消費税をなくすこと、生活インフラにかかるお金や
教育費をすべて無償化すること、
そして、経済をスローダウンさせるために、
ベーシックインカムという形で、
生産活動を伴わないお金を生活者に支給し、
お金の心配を社会全体からなくします。

その財源の捻出に使われるのがMMTだ、ということです。

地球を救うには、お金から利息という仕組みをなくすか、
お金そのものをなくさなければいけません。

お金をすぐになくす、というのは難しいですが、
それと似たような効果を持たせるには、
「みんながお金を持っている」という状態にすることです。

そのためにもベーシックインカムを採用し、お金を無価値にしていきます。

同時に利息という仕組みをなくします。
そうすることで「金融業界」が姿を消しますが、
これは化石燃料の業界がなくなるのと同じことで、
地球と人類の持続可能性を担保するために、
400年つづいた資本主義を終わらせることが目的だから仕方ありません。

でもベーシックインカムがあるので、ちゃんと生活はできます。

お金が社会のすべての層にじゅうぶんに行き渡ったら、
消費税を復活させて、その際は25%でも別に構いませんが、
経済規模を拡大させないようにしながら、社会を維持します。

日本は人口が減少していきますから、
その人口が地球環境に負荷をかけない
適性なサイズというのを見極めながら、
新しい人類のあり方を実現していくわけですね。

こうなったとき、もうすでに資本主義や貨幣経済が終わっています。
今、我々が想像するすべての価値観や概念が刷新していますから、
何もかもが新しい社会になっています。

仕事やお金にたいする意味が今とちがうのですから、
比べることすらできない新しい社会なのだと思います。

バカみたいに聞こえるかも知れませんが、
人類が存続していくためには、
そのような大きな変化が起きなければいけないし、
今、世界中で起きているEVや再生可能エネルギーへのシフトは、
その変化の初期段階なのだと感じています。

本当かな?

想像もできませんよね。
でも今から400年前に資本主義が生まれたように、
その次のものも必ず生まれるのです。

だから、決して夢見がちなことを言っているわけではありません。
ずっと先だと思っていたことが、それほど先ではなくなっただけです。

さぁ、みんなで人類の歴史の大転換期を楽しみましょう!

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