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生稲晃子がすべての質問に無回答の理由。

ただ今、行われている参議院選挙、
東京選挙区で、自民党から立候補している生稲晃子さん。

ご存知の通り元アイドルで、がんサバイバーでもあります。

そんな方がわざわざ国政の世界に立候補するわけですから、
通常であればなんらかの動機があると考えますよね。

お金がないとか、知名度が欲しいとか、そういうことではなく、
政治的な動機ですね。
解決したい社会課題がある、とか、そういうことです。

それに政治家になったらワンイシューで生きて行くことはできないので、
自分が力点を置くイシュー以外は無関心でいい、
ということにはなりません。

NHK党の立花孝さんでさえ、NHKの料金やスクランブル放送以外のことも
いろいろと意見を述べていますからね。

例えば生稲さんと同じく東京選挙区で
立憲民主党から出馬している松尾あきひろさんは、
自分が政治家を志した理由として、
友人の過労死というきっかけを取り上げています。

その人の人生の中にいったい何があったから、
高額な供託金を支払ってまで、政治の世界に立候補するのか。
私としてはとても知りたいんですね。

そこが、選挙が終わった後、その人が国会の中で
ちゃんと仕事をしてくれるのかどうかを判断する材料ですからね。

毎日新聞が行なった、
参院選に立候補している候補者へのアンケートがあります。
https://mainichi.jp/senkyo/26san/meikan/?mid=B13000022022

ご覧いただければわかりますが、
質問は25個あって、それぞれについてどう思うかを聞いています。
答えは選択式になっているようです。

内容は国防、外交、コロナ対策、経済、医療、介護、福祉、
税金、格差、教育などなどなど、
おおよそ今、語られてる政治的なイシュー全般にわたって質問しています。

で、生稲さんですが、この25個の質問に対して、
24個、つまりひとつだけの質問を除いて、すべて「無回答」なんですね。

そして唯一「賛成」と答えているのが問21、
「憲法改正に賛成ですか。反対ですか。」という質問だけなのです。

それ以外、すべての質問に無回答なのです。
なぜでしょうか。

わざわざ国政に立候補する人間が、
いま、我々を取り巻く政治的課題に対して、
一切考えがない、ということは考えられるのでしょうか。

ありえないと思います。
だって、普通だったら、そんな人に絶対に投票しませんから。
そう思いませんか?

でも、自民党のやっていることですから、絶対に理由があるのです。
自民党というのはとても面白い集団でして、
普通に考えるとバレバレのような策を頻繁に講じるんですね。

少しでも考えれば「そんなわけないだろ」というおバカさんことを
大真面目にやってのけるのです。
それに騙される人がたくさんいるからですね。
でもときどき失敗する例もあって、
安倍晋三さんが自宅で犬をなでている動画とか、ありましたよね。

国民のことを基本的に無関心でバカな連中と思っているわけですが、
どれくらいバカなのかを見誤る場合があるのです。

自民党のやることには、ちゃんと戦略がありますから、
だから、それはなぜだろう、理由はなんなのだろう、と考えていました。

そうしたら、わかったのです。
あくまでも推測ですが、私はこういうことだと思います。

既に述べましたが、自民党という政党が、
周到なB層対策を行なっていることは、結構有名な話だと思います。

B層というのはいろいろ言われていますが、
自民党の中では「バカ」を意味するBだと言われています。

自民党の最大の強みというのは地域で根をはるように
草の根活動をし、地域生活の中で当たり前のように党員になったり、
自民党の応援をするような仕組みを作り上げていることです。

つまり政治的な理由とは関係なく、
人との関わりや仲間意識で投票させるという戦略です。
人を政治的無思考の状態にした上で、人間関係で投票させる。

しかしこの作戦は、人口が多く、しかもコミュニティが脆弱な
都市部ではなかなか通用しません。
そういう場所で無関心層に効くのは「タレント候補」です。

しかもそのタレントは元気で明るいけれど、
政治的には無味無臭である方がいいんですよね。

例えばロンドンブーツの淳さんだとか、中田敦彦さんみたいに
政治や社会に一過言ありそうな人ではなくて、
自分と同じ目線から、自分と同じように政治に無関心でいてくれる
無関心層の代表である必要がある。意識低い系の代表である必要がある。

だからそういうときに、
自民党は元アスリートや元タレントに白羽の矢を立てるわけですね。

考えてみてください。
30人以上の候補者が立候補している東京選挙区です。

普通は、それぞれの人は何かしらの理由があって立候補していますね。
その多くは政治や社会課題に対する是正を求めるものでしょうが、
無関心の人というのは、
そもそもそういうことに声を上げる人のことが生理的に嫌いなようです。

候補者が街宣をしているとき、
私はボランティアさんがチラシを配る様子を観察するのですが、
チラシを「避ける」人が非常に多いんですね。

チラシやティッシュ配りというのはとても面白くて、
そこに明らかに心理学が発生していると思います。

チラシを受けとることというのは、
労力としては実はたいしたことではないはずです。

それでも受け取らない理由として、
「関わりたくない」ということがあります。
もし受け取ったら話しかけられて、アンケートに答えてくれとか、
募金してくれとか、いろいろ言われたら嫌だな、とか、
そういうことですね。

わかります。私もそれはあります。

でも選挙のチラシには、そういうことはありません。
選挙は国が認めた公のシステムですから、
ある意味、とても安全なチラシなはずですね。
それに、別に受け取ったからといって、
その人に投票することを約束させられるわけじゃないのですから。

でも、受け取らない。

そういう人が、ボランティアさんの前を通り過ぎる時の表情に注視すると、
明らかにその人の存在を「無視」したり、あるいは迷惑そうな顔をしたり、
嫌なものが近づいてきたような顔をしてみせる人がとても多いのです。

耳を塞ぎながら通り過ぎる人もいます。
本当に音が大きく感じるのでしょう。しかし、人間の耳はすべての音を
平等に聞いているのではなく、脳が音量を判断しています。

聞きたくないものの音は実際より大きく聞こえてしまうのですよね。
イラっとするようにです。だから耳を塞ぐのだと思います。

恐らくそういう人は、自分が政治の世界に立候補した人のチラシを
手に持って歩くということだけでも嫌なのです。
生理的に嫌なのですね。
それは同時に、そういうことに興味がある、という人を
偏見の目で見ていることの証明でもあります。

私の周りにも「以前は私もそうだった」という人はたくさんいます。
何かのきっかけで変わるのですが、
そうなる前は誰しもがそういう態度であることは普通なのです。

そういう人の中で、ハナから投票なんか行かないと決めている人は、
生稲晃子さんという人のマーケティング・ターゲットではありません。

選挙に立候補するような意識高い系は嫌いだが、投票にだけは行って、
一応、お役目だけは果たそうとするような人が、
生稲晃子さんのターゲットです。

厳密には自民党が生稲晃子さんに負わせている
ターゲットということですね。

選挙の時に生稲晃子に投票する人のマインドというのは、
候補者が25の質問にしっかり答えたり、その中に思想信条、
政治的なイデオロギーなどない方がいいのです。

恐らく、人間・生稲晃子さんには25の質問のすべてとは言わずとも、
少なくともいくつかにはご自分の考えがあるでしょう。
しかし「答えるな」と言われているのだと思います。

何かしら考えがあることや、
無味無臭ではない、ということがマイナスに働くし、
もしかして本心では自民党の主張と異なる場合もあるからです。
政治的にどうでもいい人の気持ちを汲み取る存在が、
生稲晃子候補のミッションなのです。

そんな中で、なぜ「改憲」にだけは賛成なのか。
ここがポイントです。

生稲さんの役割は100%、議決の時の人数合わせ要員だということです。
それははっきりしてますよね。
自民党は今、この参院選が終わったら、
いよいよ憲法改正に動くと公言しています。

そのときに「ちゃんと最初から言っていたよね」という
アリバイは必要だし、
すべてに無回答の生稲晃子でさえ改憲には賛成なんだ、
という印象を与えたいという機能もあるのかも知れません。

どちらにしろ、25もの質問があるのにすべてに無回答の人が、
改憲にだけはしっかりと考えを持っているなどということは
不自然極まりないわけだし、
そんな人間には投票するはずがないと私は考えますが、
そんなふうに考えるような人間はターゲットではない、
ということであって、
私とは逆の人がたくさん存在しているだろうというのが
自民党の読みだということですね。

もうひとつのタレント候補の役割は、当選せずとも全体の票を分散させて、
どんぐりの背比べに持ち込むことで
野党の党勢拡大を阻む、というものです。
もちろん、この役割も担っているはずです。

が、それだけなら、アンケートにはもう少し答えるでしょう。

ここまで意図的に無回答であること。

そこに、自民党が有権者をどう見ているかが見て取れる、
ということなんですね。

さすが、自民党だと思いました。
ギャフンと言わせるには、有権者がちゃんと意識を持ち、
「こんなふざけた候補者に投票するはずがない」という
真っ当な結果を示してあげることだけでしょう。

そうすれば、やがて自民党も我々のことを
「まともな人間」として見るようになるでしょうね。

自民党の在りかたは、有権者の政治に対する態度の鏡なのです。

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