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鬼滅の刃で中学英語#41~「have to」と「must」の否定形から「責任」を学ぶ~

「have to」と「must」の違いは#40でお話ししたとおりですが、今回は、その「否定形」について「責任」というキーワードでご紹介していきますね。

おさらい:「have to」と「must」の違い

#39でご紹介した通り、「have to」は「~しなければならない」とは訳しますが、その中身は「動詞have+to不定詞」ですから、「to不定詞=~すること(名詞的用法)」を「have」しているという、結果的に義務の意味でした。

図にするとこんな感じです。

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「to study=勉強すること」「to walk=歩くこと」「to fight=戦うこと」を、自分の領域(テリトリー)に持っている・ある、ということで「have」。だから、「~しなければならない」。

かたや「must」は、もっと押しつけられた感のある、絶対的な義務です。

「must」は「have」と違って、動詞の意味をプラスする「助動詞」で、この場合は、「study」「walk」「fight」という動詞に「義務」を与える働きをしています。

図にするとそうですね、こんな感じでしょうか。

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他の選択肢は選べない、その動詞のアクションを「~しなければならない」ということです。つまり、決められたレールの上を歩かなくてはいけない、そのルールに従わなければならないイメージです。

言わば、動詞に「しなければならない」という強制力をつける感じです。

それが「must>have to」の義務の強さの違いになります。

同じ「しなければならない」ですが、実際のイメージはこんなに意味が違うわけですね。
(まぁ、そこまで厳密に考えて使わないと言う人もいますけどね!)

さて、それでは本題。

「have to」と「must」にはそれぞれ「否定形」が存在します。

「have to」の否定形

まずは「have to」から。

#34の「and」の時にちらっとご紹介したこちらのシーンに使用例が出ていたので見ていきましょう。

(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.1』/原作『鬼滅の刃』第1巻

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You don't have to go. It's snowing and it's dangerous.
(雪が降って危ないから 行かなくてもいいんだよ

ここでは炭治郎の母が、雪が降っているのに町に炭を売りに行くと言っている炭治郎の(炭がついた)顔を拭きながら、「行かなくてもいいんだよ」を「don't have to go」で伝えていますね。

ここの「go」は動詞ではなく「to go=行くこと」という「to不定詞」で名詞として機能しますので、この文の動詞は一般動詞「have」。

一般動詞「have」の否定文だから「don't have to go」になっているんですね。
(よく考えたら「否定文」をちゃんと取り上げていなかったので後日やります)

「must」の否定形

では、「must」の否定形はというと・・・

(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.3』原作『鬼滅の刃』第3巻

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No! You mustn't kick it!
蹴っては駄目よ!!
※kick=キックする、蹴る、という動詞

こちらは、蹴鞠の鬼と戦っているシーンで、禰豆子が蹴鞠を蹴り返そうとしたときに、珠世さんが禰豆子に向かって叫んだ言葉です。

英語には「駄目」に相当する言葉が色々ありますが、ここでは、「蹴っては駄目=蹴る行為(アクション)をしては駄目」ということで、蹴る行為を表す動詞「kick」を使い、それを助動詞「mustn't(must notの略)」で「~しなければならないことはない⇒してはいけない」という意味にしているんですね。

ちなみに「mustn't」は、「must not」の略で、略さず使うことももちろんできますが、これはちょっと文章的な表現で、会話ではあまり使いません。

特に今回のケースは、飛んできた蹴鞠を蹴り返そうとする禰豆子に、「蹴っちゃ駄目よ!!」というように、今すぐ伝えたいわけですから、短縮形で伝えるのが自然ですね。

「don't have to」と「mustn't」の違い

では、「don't have to」と「mustn't」の違いはなんでしょう?

「have to」と「must」の訳「~しなければならない」の否定形だから、素直に「~しなければならないことはない⇒しなくていい」と考えればよいのでしょうか?

実は違います。

二つは、元々の「意味」のイメージが異なるので、それを否定することで、さらに「意味」が変わるんです。

まずは、「have to」の否定形、「don't have to」のイメージ図を考えてみたいと思いますがが、その前に「have」は先ほどご紹介したように、自分のテリトリーの中に「have=持つ・有る」もので、その中に「to不定詞」という、動詞を使った名詞がある⇒「~しなければならない」になっているとご紹介しましたね。

かたや、「don't have to」はその「have」という動詞を否定している、つまり、to不定詞を「haveしていない」ということになります。

図にするとこうなります。

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「バリアー!」

な感じのイメージです。自分の、「have」の中のテリトリーに「入らない=自分のすることではない=~しなくていい」ということになります。逆にバリアの中にはいれば「have」です。

上記のイラストを文にするとこんな感じです。

I don't have to run.
 =(私は)走ることを有していない
 ⇒(私は)走らなくていい
I don't have to work because it's too hot.
 =(私は)暑すぎるから働くことを有していない
 ⇒(私は)暑すぎるから働かなくていい
I don't have to drink.
 =(私は)飲むことを有していない
 ⇒(私は)飲むまなくていい

自分が「have」していないものを、なぜやらなければいけないのでしょう?

そんな発想です。

冒頭の炭治郎と母のシーンも、炭治郎が、正月に弟妹たちに腹一杯食べさせたいから、雪が降っているという悪天候の中でも炭に売りに行くことは、絶対にしなければいけないことではなく、炭治郎の優しさから来るものです。

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だからここでの母は、気持ちはありがたいけど、食べ物がないわけではないし、長男だからって炭治郎が一人苦労するようなことは「しなくてもいいんだよ」という意味で、「don't have to」を使ったわけです。
「しない」という選択肢もあるよってことです。

では、「mustn't」はどうでしょうか?

先ほど、「must」の解説の時に、「動詞に強制力をつける」働きがあるといいましたが、それを今度は「否定」するわけですね。

するとどうなるか、イメージ図で見てみましょう。

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おわかりでしょうか?

同じバリアーでも、「絶対にそのレールに乗らない、乗っちゃいけない」という意味のバリアーになります。

なので、

I must't run.
 =(私は)走らなくていい
 ⇒(私は)走ってはいけない
I mustn't work because it's too hot.
 =(私は)暑すぎるから働かなくていい
 ⇒(私は)暑すぎるから働いてはいけない
I mustn't drink.
 =(私は)飲まなくていい
 ⇒(私は)飲んではいけない

というように、「~しなくていい」ことが義務になるので、それはつまり「禁止されている」ということになります

たとえば、持病のある人は、走ってもいけないし、暑い中働いてもいけないし、お酒を飲んでもいけない・・・それはつまり「やっちゃ駄目」ってことですよね?

だから、珠世が禰豆子に言ったように、

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・・・というように、「蹴っちゃ駄目!!」ってことになるのです。
このシーンは、さらに「No!」をつけて駄目ということを強く伝えたかったわけですね(結局聞かずに蹴ろうとしたので、禰豆子は意外と気が強い?)

まとめると、

don't have to+動詞=~しなくていい〈義務の否定〉
mustn't+動詞=~してはいけない〈行為の禁止〉

となるわけですね。

これは日本語でも「義務」の強さ、意味が異なるのはわかりますよね?

なのでこれは中学英語でも「have to=must」のように、「don't have to=mustn't」とは説明されず、「違うもの」として説明されます。

don't have to ≠ must
〈義務の否定〉≠〈禁止〉

なんですね。

否定じゃなければ一緒なのに、否定にすれば意味が変わる・・・ややこしいですよね?

だからこそ、「日本語訳を丸暗記」するのではなく、どういう文法的な働きをしているかを理解しておくことが、のちのちのつまずき予防に繋がるのです。日本の学校英語にはその視点が明らかにないですが!!
(だから勉強ができる子しか英語がわからないし、それが「勉強ができる」指標として受験でも必須になっている悪循環です)

「責任」の所在をハッキリさせる英語

ちょっと話がそれましたが、このように、英語は、責任の範囲をイメージ図にしやすい言語です。

たとえば、「have to」であれば自分のテリトリーの中にあるモノは自分に責任があること、「don't have to」であれば、自分のテリトリーの外だから自分の責任ではない

・・・という発想です。

だから、英語圏(のみならずヨーロッパ圏)の人は、日本の「ブラック企業」にはよくある、無償で時間外労働をする「サービス残業」の概念がわかりません。

仕事がいくら途中であっても、時間になったら、それはもう「自分の仕事じゃない(It's not my job.)」となります。

責任の所在が明確なのです。

日本は、時間外でも「お前の仕事」となったら「やらなければいけない」となってしまいます。

このように、日本語では、本来意味が異なる「have to」と「must」が同じ訳になるように、責任に対する概念があやふやです。

代表的なのは、政府や役人の答弁でしょう。

「私の責任です」とは言っても、「誰が悪いのか」ハッキリさせずにうやむやにして、「事なかれ」を狙うことが多いです。その責任を、自分の「have 」なのか「must」なのかが不明確で、それがひいては、「責任の範囲」「責任の所在」が不明確な答弁に行き着きます。

そして、それで許されるのも、日本人全体が「責任」の所在の扱いをあいまいにしているからです。

やらなくてもいいことを「やらなきゃいけない」と思わされるブラック企業も、やらなきゃいけないことを「やらない」で済ます行政組織も、日本文化、日本語の影響を受けていると言えるかもしれません。

英語で話すトランプ大統領を見て下さい。

あきらかに自分が悪いことも、自分が悪いなどとは一言も言いません
アメリカで10万人以上も感染死者が拡大したのはどう考えても、のんびり構えていたトランプ大統領の「せい」ですが、その責任を「中国」や「WHO」に転嫁していますよね。

日本では責任転嫁せずにうやむやにし、英語圏では責任をハッキリさせたがるので転嫁することが起こりやすい・・・というわかりやすい例かもしれません。

それぐらい、白黒ハッキリさせるのが英語圏の文化といえます(もちろん、人にはよりますけどね!)。

その感覚がわかると、「have to」「must」「don't have to」「mustn't」が、よりよくわかってくると思います。

「mustn't」よりさらに強い禁止

最後に「禁止」の表現である「mustn't」よりもさらに強い表現がありますのでそちらのご紹介をしていきます。

こちらも鬼滅英語版に登場していたので、そのシーンを見てもらった方が早いですね。

第1巻で、主人公・炭治郎が、初めて戦った鬼にとどめを刺せず、さらに「妹が人を喰った時お前はどうする?」という質問にも即答できなかったがために、鱗滝さんに逆平手を食らいながら説教される内の一コマです。

(出典Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.1』/原作『鬼滅の刃』第1巻

must_never_doyou_understand_what - コピー

But it is your sacred duty to ensure that this never happens.
しかしこれは絶対にあってはならないと肝に銘じておけ
Your sister must never take the life of an innocent person!
罪なき人の命をお前の妹が奪う それだけは絶対にあってはならない

長い文なので細かくは説明しませんが、ここでは「take=とる」という動詞から始まる、「take the life of~=~の命を奪う」の前に、「never」が入っていますね。

「never~」とは、「決して~ない」という意味の副詞で、日本語でも、「Never give up!=ネバーギブアップ(決してあきらめない)」にも使われています。

「never」は「not」と同じ否定を表す副詞の仲間ですから、「not=ない」があった場所に入れて、「must never~」で、「must not=~してはいけない」よりもさらに強い意味の禁止、「決して~してはいけない」という意味を表します

イメージ図にするとこんな感じです。

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もう、レールすらない。

絶対にしてはいけないことなんですね。禁止中の禁止。

「must never run=絶対に走るな」
「must never work=絶対に働くな」
「must never drink=絶対に飲むな」

・・・・どんな重病人でしょうか、というくらい、強い禁止を表します。

それが「ない」よりも否定の意味を強める副詞「never」。

日本の芸人さんが「絶対に押すなよ!」と言いながらも押しちゃうようなことは、英語では「never=絶対にない」です。

ちなみにこのシーン、鱗滝さんが炭治郎に言っていたのも、「妹(禰豆子)が人を喰うということは絶対にあってはならない」ということですよね?

一人でも喰ったらおしまい。

そんなことがあれば「妹を殺してお前は腹を切れ」と。
それが鬼になった妹を連れ歩く覚悟だと。

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そしてその伏線は、単行本第6巻で感動的に回収されていくわけです。とにかく重い言葉、それが「never」です。

鬼滅が大人にも人気なのは、こういった、子どもに媚びないところですね。そして、登場人物たちの「本気」が、子どもたちにも「伝わる」。心優しき主人公炭治郎が、ただただ強くなって鬼を倒していくだけのドラマでは、ここまでの人気にはならなかった。

これを、英語でもきちんと伝えきれているので、世界でも人気なのかもしれませんね。

本日のまとめ
・「have to」と「must」は否定形だと意味が変わる
don't have to+動詞=~しなくてよい(義務の否定)
must not(mustn't)+動詞=~してはいけない(禁止)
must never+動詞=決して~してはいけない(絶対禁止)

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