あいみょんの「愛を伝えたいだとか」を考察してみた
あいみょんの愛を伝えたいだとかにハマってしまった。聴けば聴くほど理解度の深まるスルメ曲で楽しい。未だに新しい発見があって面白いので、今の時点での考察をここにまとめておく。
※前提として、音楽やその歌詞に対する解釈は十人十色であり、作曲した本人が解説等しない限りは正解のないものだと思っています。私の解釈に「それは違うだろう」と思うこともあれば、逆に「そうなのか」と鵜呑みにすることもありません。なにかあればご意見お聞かせください。
考察の前置き
まず、主人公は男性で、女性に恋をしている。
付き合っているわけではなく、一方的な感情であり、彼女は振り向いてくれないどころか、男は気持ちを伝えられていないかもしれない。
私は最初この歌をストーカーの歌だと思った。明らかにうまくいっていない恋路の描写に対して"君の愛してるが聞きたい"とか“完璧な男になんて惹かれないと君が笑ってた”と、遠くから「君」を見て盗み聞きでもしていたのか?という場面があったり、日が落ちる頃に会えるの?と彼女の生活を完全把握しているかのような歌詞があるので。
あるいは、そもそも二人は恋人同士で、喧嘩か何かしてしばらく彼女が出て行ったまま帰ってこないだとか、マンネリ化してうまくいかないカップルだとか、そういう解釈としても書くこともできる。が、きっと誰も書いていないであろう片思いボーイの不健康な自嘲を書いてみようと思う。
歌詞の考察
「健康的な朝」は最後の伏線になると思う。決して"いい天気"とは限らない。
こんな時に君の愛してるが聞きたい、とまるでいつも聞いてるかのような言い方だけど、それは「僕」に対する 愛してる ではないかもしれない。例えば盗聴してるとか、「僕」の妄想の中で彼女に言わせているとか。
少し浮いた前髪もすべて心地いいというのは、「自分の不完全さは心地いい程に気にしてないさ」という意味と思われる。前髪が浮いちゃっていていい髪型ではないけど気にしない。つまり"完璧な男"になれないことへの諦めや自嘲。※完璧じゃない男ポイント1
目玉焼きが完璧な形に作れなかった。※完璧じゃない男ポイント2
バランスを取っても溢れちゃうや、というのは目玉焼きの話と繋がっているのかは不明だけど、おそらく割れてしまった黄身がこぼれ広がらないようにバランスを取ろうとしても溢れる、つまり飽和して溢れそうなほどの恋心の表現かと。
少し辛くて~も、精神の乱高下や「君」に揺さぶられる様子の比喩。
とりあえず、と自分に正面から向き合えない、勇気を持てずに先延ばしにする様子。※完璧じゃない男ポイント3
深読みすると、バラの花に願いを込めるばかりで、自分の言葉で真っすぐに勝負ができない、バラの花がなければ気持ちの表現すらできない男であるとも取れる。
愛を伝えたいだとか~のここが決定的ダメ男ポイントなんだけど、愛を伝えたいと考えているばかりで何も行動に移せず、ソファに座って期待しているだけ。なにか天変地異でも起こって彼女が振り向いてはくれまいかと。※完璧じゃない男ポイント4
恐ろしいのはここで言う「良い男」は、世間一般でいう良い男性になれるように自分を磨くという意味ではなく、このままの僕が君にとっての「良い男」に成り代わる日を待っている、という意味なんだよね。自分が変わるのではなく、僕に対する君の見方が変わるのを願っている。
ダメンズだなあ。あくまで「焦らずにいるよ。君のこと待ってるね」と受動的な様子。※完璧じゃない男ポイント5
今日は日が落ちる頃に会えるの?の意味はよくわからない。
日が落ちる頃、仕事(または学校)終わりにうちに来てくれる?それとも外で会う?どうしよっか? そんな君との恋人としての日常を期待する。そういう描写かも。
ここの歌詞がすごい。初見ではまるで「僕」が彼女に告白して、「君は完璧だからタイプじゃないの」ってフラれたのかなと思わされる。
だけどどうだろう、彼は完璧だろうか。これ以降の歌詞にもいくつかダメンズポイントが出てくるくらいに、完璧とは遠い人間なのが分かる。
だけど「僕」は「悔しいや」と言う。
どういうことかと言うと「僕は完璧じゃないと思ったけど、君に振り向いてもらえない。つまり、僕が完璧だからってことだよね?」という最高の自虐であるということ。あいみょんすごすぎる。
ここで彼はどこかの時点で彼女に想いを伝えている可能性も出てくる。「完璧な人はタイプじゃないの」と曖昧なお断りに期待を抱いているのか、もしくは彼の作り出す一貫した妄想か。
窓際目の際お気に入りの花、はどういう意味かわからない。窓際は雨、目の際は涙、お気に入りの花は何を指してるんだろう。花の蜜か?
ごちゃごちゃ考えずに早く寝てしまおうと。
明日は2人で過ごしたいなんて、というのは、彼の妄想だろうと思っている。そもそもお付き合いしておらず、どれほどの仲なのかも分からないが「君がこの部屋のドアを開けて、ただいまって言ってくれたらな」という妄想だと。
だがそれは現実にならないからドアは開かないし、叶わないからおセンチになっていく。※完璧じゃない男ポイント6
そのままの意味ですね。気持ちの核心は分かってる、でも思う通りじゃなくてもう嫌だ、と。
歌詞の通り、ここではケーキと言っているけど「君が喜びそうなもの」を用意したって君は僕の気持ちには応えてくれないだろう?の意。
情けないずるいこと、とはこれまでも書いてきた「受動的な願望」のこと。全然良い男じゃないけど君に好かれたいというあまりに利己的でずるいことを考えてしまう。※完璧じゃない男ポイント7
1番サビではバラの花に願いを込めていたけど、そもそもそんな花はなかった、ということかな。バラの花に願いを込めなければ伝えられないようなずるい人間なのに、そもそもその花すらも無いものだった。
綺麗な身なりで大きなバラの花束でも持って颯爽と現れる「良い男」とは対照的な「汚れたシャツに履きなれたジーパン」。※完璧じゃない男ポイント8
1番サビと同じ。
結局最初と同じである。何も進展がないまま、また明日を迎える。
きっと明日も「健康的な朝」を迎えることになる。
これが冒頭の"伏線"。昨日と同じ今日、今日と同じ明日、彼女の僕に対する見方は何も良くないから、雷雨である。
それを「健康的な朝」って言うんだから、自嘲的で寂しいよな。
MVの考察
ワンカット撮影の特徴的なMV。
どこかでミスすれば最初から撮り直しという、わざわざ大変な撮影方法を選んだのはなぜか?
もしかして「彼の一貫した受動性」を一発撮りで表現したの?と思って鳥肌が立った。
しかも狭い車の中であることは、堂々巡りの彼の想いと重なる。
車の中の生活は彼の思考の箱庭のようなもので、飽和する彼女への想いを詰めたもの、ないしは妄想そのものか。
雷雨から始まる冒頭、全く「健康的な朝」ではない。皮肉な表現が面白い。
最後は車から出てくる。それは諦めか、現実への回帰か…自分の気持ちを諦観しているんだろうな。つまるところ、「無謀である」とどこかで気づいてる。
最後に
結局、完璧じゃない男ポイントは8か所か。
これを2番冒頭の「完璧な男になんて惹かれない」という彼女の一言で回収していくのがあまりにも上手い。しかも後半にもダメンズポイント織り込んでくるから2回3回と繰り返し聴くことで合点がいく。
もうここ数ヶ月、鬼リピしまくっているけれど、曲調も歌詞もとてもリズム感が良く飽きない。バズるのも分かる。
「上手くいかないカップル」では片付かない意味深な歌詞の解釈を人と共有したい。
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