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映画分析ノック⑥『素晴らしき哉、人生!』(1946)

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『素晴らしき哉、人生!』構成表


○街・点描(夜)              【起】《①》
『ベドフォード・フォールズ』という街の看板。
その看板に降り積もる雪。
あらゆる家で誰かが「ジョージ」という男の無事を祈る声。

○宇宙
星1と星2が話している。
地上で大勢の者たちが「ジョージ・ベイリー」という男に祈っているようだ。
彼はもうすぐ自ら命を捨てようとするはずだ。
それを阻止すべくクラレンスという天使を地上に遣わそう、と話す。
そこへ星3が慌ててやってくる(クラレンスだ)。
彼はIQが低いが真心がある。
ジョージの命を救うミッションに成功したら、クラレンスにようやく翼が貰えるという。
クラレンス、ジョージを救う前に、彼について予備知識を聞かされる。
(以下、星1・2が星3に対して「ジョージについて」の予備知識を語る口調で物語が始まっていく…)

○凍った池                【承】《②》
1919年、ジョージ・ベイリー(12才)が友達と雪滑りで遊んでいる。
そこは凍った池の上で。
ジョージの弟であるハリー・ベイリー(7才)が滑ると、勢い余って池に落ちてしまう。
冷たい池に飛び込み、ハリーを助け出すジョージ。
そのせいで左耳が聞こえなくなってしまう。

○街
2週間後。友達と街を歩くジョージ。
性悪な金持ちのポッターが馬車で通りかかる。
ジョージ、薬局(兼カフェ)につく。バイト先のようだ。

○薬局・表
カウンターに入るジョージ。
2人の女の子の客。ジョージを巡るライバルだ。
興味ない女の子が帰り、本命の女の子と2人きり。
ジョージ、金持ちになり世界中を旅する夢を語る。
女の子、そんなジョージの聴こえない左耳に「好きよ」と囁く。
そこへ薬局の主人・ガウワー、不安定な様子でジョージを呼ぶ。
ガウワー、つい先日に息子を病で亡くしたようだ(郵便の紙で知るジョージ)。

○薬局・裏
ガウワー、近所の子供に薬を配達してほしいとジョージに頼む。
承るジョージだったが、ガウワーが用意していた薬には「劇薬」と書いてあって…。
どうするか考えあぐねたジョージ、父に相談することに。
店を走って出ていく。

○住宅金融・前
ジョージが入っていったのは、『ベイリー住宅金融』と書いてある店だ。
店の前には、あの馬車が止まっている。

○住宅金融・中
ジョージが入ると、叔父から父は取り込み中だと聞かされる。
それでもと父の部屋に入るジョージ。
部屋には、父と性悪な金持ち・ポッターがいた。
ポッター、父に借金の返済を催促している。
父、失業者もいる住民らのために待ってくれと頭を下げている(お人好しなのだ)。
相談があったジョージだが、相手にされない。

○薬局・裏
ガウワー、電話をとっている。相手は薬を依頼した子の親。薬が届いてないと言う。
そこへジョージが帰ってくる。
ガウワー、薬を届けていないジョージに憤慨し、叩いて怒る。
ジョージ、ガウワーが間違えて劇薬を詰めていたことを話す。
ガウワー、自分の過ちに気付き、ジョージを抱きしめる。

○カバン屋
大人になったジョージ。
カバン屋で世界を巡る探検に使う大きな鞄を探している。
と、店主がジョージの名前が入った鞄を無料で渡してくれる。
それは薬局の主人・ガウワーからの贈り物で。
喜んで持っていくジョージ。

○薬局・表
カフェ部分が子供たちで賑わっている。
ジョージ、ガウワーに鞄のお礼を言いにいく。

○街
大きな鞄を持って歩くジョージ。浮かれ気分。
街中の人々から世界旅行にいくことを羨ましがられている。

○ジョージ宅・ダイニング(夜)
ジョージ、旅に出る前の最後の晩餐。
ジョージ、自分は大学へ行かずに学資を稼いで、弟のハリーを大学へ行かせることにした(今は高校生)。
父から住宅金融の仕事を継ぐ気はないのかと聞かれ、もっと大きなことがしたいと話す。
父は住宅金融だって大きな仕事だと言う。がジョージは釈然としていない。
結局、父はジョージに「旅から帰ってきたら大学を出てこの町を出ていくと良い」と許可する。
父の理解に喜ぶジョージ、弟ハリーの高校の卒業パーティーに赴く。

○卒業パーティー会場(夜)
旧友・サムと再会するジョージ。
サムは冗談混じりに嫌みなことを言うヤツで。
ジョージ、会場でメアリーと会う(互いに一目惚れ)。
ダンス(チャールストン)を踊るジョージとメアリー。
嫉妬した男たちが会場の床を開けて、プールに落とそうとする。
周囲は騒然とするが、ジョージとメアリーはダンスに夢中で気付かない。
やがて派手にプールへと落ちる2人。
それを見て、周囲の皆もどんどんとプールへ飛び込んでゆく。

○道(夜)
着替えたありあわせの服で帰るジョージとメアリー(彼女はバスローブ)。
良い感じの雰囲気で。
やがて一軒のボロ家の前につく。
メアリーはここに住みたいと話す。
ジョージは、家に石を投げ込み窓を割って、願い事を話す。
それは、世界中を旅して、その後大学へ行き、建築家になり、高層ビルや空港や橋をつくること。
メアリーも石を投げ込み窓を割って願い事をするが、何を願ったのか教えてくれない。
ボロ家の向いの家から見ていたスケベ親父、ジョージとメアリーを煽る。
キスをしようとして茂みに転ぶメアリー、バスローブが脱げている。
バスローブを持ってからかうジョージ。楽しそうである。

が、そこへ一台の車が来る。
ジョージの父が発作で倒れたことを知らせる車だった。
ジョージ、慌てて乗り込み、メアリーを置いて去っていく。
メアリー、その背中を寂しげに見つめていて。

○住宅金融・中
部屋で『ベイリー住宅金融』の役員たちによる会議が行われている。
父が亡くなったのだ。
ジョージは、予定していた世界旅行をキャンセルし、父の業務整理を行っていた。
ひと段落して、大学へ向かうための列車の到着時間が迫っていた。
ジョージが出ようとすると、性悪な金持ち・ポッターが「会社を解散すべき」と議論を持ちかける。
父は失業者や信用がない者にも住宅を貸し、負債を抱えすぎていた(お人好しの商売下手だった)と。
それに対しジョージが「この会社はポッターに頼れない人の救済どころとして必要だ」と皮肉を込めて反論。

部屋の外に出たジョージ、いよいよ大学へ行く汽車に乗るため、駅へ向かおうとしている。
そこに部屋から出てきた役員の1人が「会社は存続することになった!」と報告。喜ぶジョージ。
しかし、ポッターが提示してきた条件は、ジョージが社長になることだった。
・社長になれば、大学へは行けない
・大学へ行けば、会社は潰れる
葛藤したジョージは、大学へ進学することを諦めて、会社を継ぐことにする。

○宇宙
星1と星2が話している。
一旦会社を継いだジョージは、弟が大学を卒業して会社を継ぐのを待ったようだ。

○駅のホーム
ジョージ、叔父と一緒に弟の帰りを待っている。
「旅好きに就職難はない」と、各地を飛び回れそうな求人を新聞で探している。
と、汽笛が聞こえ、弟を乗せた汽車がホームに入ってくる。
弟ハリーが降りてくる。出迎えるジョージと叔父。
ハリー、妻・ルースを連れてきた。驚きつつも祝福するジョージ。
しかしルースが「政略結婚」だと話す。つまり弟ハリーに仕事を提供することで結婚したと言うのだ。
ジョージ、立ち止まる。弟ハリー、ジョージを諭すように「仕事の返事はまだしていない」と言う。

ジョージ、ハリーの妻・ルースに弟・ハリーの仕事内容を尋ねる。
それは将来有望な仕事で、ルースの父もハリーにゾッコンだと話す。
「・・・」となるジョージ。

○ジョージ宅・前(夜)
ハリーとルースの結婚祝いが盛大に行われている。
ジョージ、その輪には入らず、外で煙草をふかしている。
そこへ母が様子を見にやってくる。
母、メアリーが町に戻ってきているから会いに行きなさいと言う。
ジョージ、メアリーにはサムがいるからと話すが、母は聞かない。
仕方なくメアリーに会いにいくジョージ。

○街(夜)
夜の街をあてもなく歩くジョージ。
好意を寄せてくる女に声をかけられるが、趣味が合わず。

○メアリー宅・前
結局、メアリーの家の前に来たジョージ。
メアリー、窓から顔を出し、ジョージを中に招き入れる。

○メアリー宅・中
ジョージを呼ぶにあたり、髪を直したり、レコードをかけたり、ジョージが月を捕まえている絵を飾ったり、余念のないメアリー。
ジョージ、メアリー宅に上がる。
メアリー、ジョージに猛プッシュ。ジョージは素直にならず。
そこへサムから電話がかかってくる。
サムがジョージを地方の事業へ呼び寄せようとする。
ジョージ、メアリーと離れるという選択肢を提示されて、初めてメアリーを想う気持ちに正直になる。
抱き合ってキスをするジョージとメアリー。

○ジョージ宅・中〜外
ジョージとメアリーの結婚パーティーが盛大に行われている。
そのまま外へ出て、祝福されながら車に乗り込むジョージとメアリー。

○走る車・中
運転手は友達。
キスするジョージとメアリー。
旅好きのジョージは仕事を2週間休んで、手元にある札束で新婚旅行に行くという。
浮かれているジョージだったが、運転手が『ベイリー住宅金融』の前に群がる人々を発見。
「⁉︎」となって、車を止める。降りて住宅金融に入っていくジョージ。
施錠された扉を開けて、群がった人々と共に中に入る。

○住宅金融・中
ジョージ、中に入ると叔父が困り顔でいる。
事情を聞くと、ポッターの仕業で銀行が住宅金融に返済を迫ってきたらしい。
このままでは閉業してしまうという噂を聞きつけ、人々がお金を引き出しに来たのだ。
しかし、住宅金融にはまとまった資金がなく、人々にお金を引出させてあげられない。
ポッターの元へ流れそうな人々をなんとか食い止めるジョージだったが、手立てはなく…。
と、メアリーが旅行費だった2000ドルの札束を持って立っていた!
その現金を使い、必要な分だけの金額を人々に引出させてあげるジョージ。
×   ×   ×
約束の時刻。なんとか閉業を免れたジョージたち。
祝杯の酒を煽るが、ジョージはふとメアリーや旅のことを思い出す。
そこへメアリーから電話が入る。
あのボロ家に来て欲しい、と言われるジョージ。

○ボロ家・前
ジョージ、あのボロ家の前に来る。
裏では友人たちが、サプライズの準備をしていた。
ジョージ、玄関まで来ると、扉に「新婚の間」と書かれた紙が貼ってある。
扉が開いて、案内人がジョージを招き入れる。
中にはメアリーがいて、汚いながらも改装された一軒家の内装があり、美味しそうな料理があった。
ジョージ、メアリーと抱き合いキスをする。
メアリー、石を投げた時に願ったのは、ジョージとここで暮らすことだった、と話す。
友人たち、外で雰囲気作りの歌をうたってあげる。

○引越し・点描
マティーニ家が引越しをしている。それを手伝うジョージとメアリー。
マティーニは、ベイリーがあてがった家に引っ越すようだ(ポッターとはおさらば!と言う)。
新しいマティーニ家で引越し祝いを贈るジョージとメアリー。
そこへサムが通りかかる。

○ポッターの銀行・部屋
ポッターに分析結果を報告する金融アナリスト。
ジョージの貸した住宅が立ち並ぶベイリー公園が業界を席巻しており、ポッターの貸し家には空きが続出している、と。
ポッター、不都合な話に立腹し金融アナリストを追い出す。アナリストも怒って、ジョージの味方になると吐き捨て出ていく。
ポッター、ジョージの存在がおもしろくないという表情。

○マティーニ家・前
ジョージとメアリー、引越し祝いの最中に通りかかったサムとその妻と話している。
サム、旅に行かずに住宅金融をやっているジョージを揶揄。
自分がオファーした世界を飛び回れる仕事を蹴ったことを根に持って嫌味を言うのだ。
笑ってごまかすジョージだったが、サムが去った後に苛立ちを募らせる。

○ポッターの銀行・部屋
ポッターに招かれているジョージ。
ポッターは、ジョージが住宅金融に縛られて好きな旅に行けないことを哀れむ。
言い返せないジョージ。
月45ドルの安い給料で、もし子供ができたら貯金もままならないだろうと。
ポッターはジョージを年俸2万ドルで雇うと持ちかける。
今より綺麗な高級マンションに住み、奥さんにも楽をさせてあげられて、商用で海外にも行ける。
一瞬揺らぐジョージだったが、ポッターの作戦に乗るまいと啖呵を切って断る。

○ジョージのボロ家・寝室(夜)
帰宅するジョージ、ベッドで寝ているメアリー。
旅に出なかったことや、高給なポッターの仕事を断ったこと、でも自分には夢や希望があったこと…
後悔がよぎるジョージ。
メアリーが起きて、ジョージに赤ちゃんができたことを伝える。
喜びと驚きと覚悟とが入り混じるジョージ。

○過ぎてゆく日々・点描
男の子が生まれ、次に女の子が生まれ…。
ジョージの帰りは遅く。メアリーはボロ家を改装していって。
疲れた表情のジョージ。ポッターの圧力が掛かっているようだ。

○戦争・点描
戦争がやってくる。
弟ハリーが敵の戦闘機を複数機墜落させたとして、名誉勲章を受賞する。
ジョージは耳の障害で兵役を免れたが、地味な空襲の見張り役などで損な役回り。

○街
新聞に『ハリー名誉勲章を受賞』と載っている。
それを見せ合う街の皆々。
建物にハリーの名が書かれた横断幕が掲げられる。

○住宅金融・中                【転】《③》
ジョージ、新聞紙を大量に抱えて配りながら入ってくる。
と、弟のハリーから電話が掛かって来ている。
夢中で話していると、後ろに銀行監査員が待っていて。
電話を他の人に代わり、銀行監査員に挨拶するジョージ。

○ポッターの銀行・中
叔父が8000ドルを預金しようとしている。
と、そこへポッターが新聞を読みながらやってくる。
叔父、嬉しそうにハリーの活躍をポッターに自慢する。
ポッター、おもしろくなさそうに、新聞紙を取り上げる。
(この時、叔父の預金8000ドルの紙幣が新聞紙の中に折り込まれてしまった)
事務所に入っていくポッター。
叔父はいざ預金しようとカウンターへ。
と、8000ドル紙幣がない!慌てて探す叔父。

○ポッターの銀行・部屋
ポッター、新聞紙の中に折り込まれた8000ドル紙幣に気付き、銀行を覗く。
と、叔父が慌てて何かを探しているようだ。
ポッターは紙幣をわざと隠して、そのままにしておく。

○住宅金融・中
叔父、血相を変えて入ってくる。
ジョージは毛皮の女・ヴァイオレットにNYでやり直す金を貸している。
ジョージ、叔父に銀行監査員が来ていることを伝える。
叔父、ジョージに8000ドルを紛失したと話す。
取り乱し、いろんなところを探すジョージ。

○街
来た道を探すジョージと叔父。
それを窓の外から見ているポッター。

○住宅金融・部屋(夜)
叔父にブチギレるジョージ。
肩を落としてむせび泣く叔父。

○ジョージのボロ家・居間(夜)
ジョージ、俯きながら帰宅する。
クリスマスの飾り付けをしている家族。
ピアノを弾いている娘。
ジョージ、戯れてきた次男を抱きしめて、涙。
それを見たメアリー、異変に気付く。
自暴自棄になるジョージ。

子供部屋にいくジョージ。
学校で熱を出して帰ってきた次女・ズズと話す。
ズズ、花びらが取れたからくっつけて、とジョージに花を差し出す。
ジョージ、くっつけるふりをして、花びらをポケットの中に入れる。

子供部屋から出ると、メアリーがズズの教師と電話している。
ジョージ、電話をとりあげズズの教師に怒りをぶつける。
のちにその教師の亭主が出てきて、電話で男同士の口論になる。
電話が切れる。

ジョージ、子供に当たり散らす。
そして最終的に家具を蹴飛ばすなど、物に当たる。
ふと我に帰り、家族に謝る。
家を出ていくジョージ。

○ポッターの銀行・部屋(夜)
ジョージ、ポッターに8000ドルを失くしたから貸してくれと頼み込む。
ポッター、応じずに会社の金を横領したんだろ?と警察に通報する。
死んだ方が値打ちだと言われ、部屋を去るジョージ。

○バー(夜)
Bar『マティーニ』。
ジョージ、カウンターに座り、強い酒を飲んでいる。
隣に座った男、ジョージの名前を聞いて「!」となり、ジョージを殴る。
先ほどジョージが当たり散らした教師の夫だったのだ。
唇から出血するジョージ。
ヨタヨタと立ち上がり、店を出ていく。

○走る車〜民家の前(夜)
が、民家の庭の樹に突っ込んで止まる。
ヨタヨタと車から降りてくるジョージ。
家主が怒って出てくるが、ジョージは聞いているのかいないのか。
その場を後にする。

○橋の上(夜)
ジョージ、思い詰めた表情で橋の下を覗きこむ。
黒い海が波打っている。
それをそばで見ていた小さなオジサン。
意を決した表情のジョージ。
と、オジサンが海に落っこちた!
助けを呼ぶオジサン。
ジョージは正気になって助けるために海に飛び込む。
近くの小屋に住んでいる男が、海に落ちた2人を懐中電灯で照らす。

○小屋・中(夜)
暖をとるジョージ。
オジサンは天使の衣装に着替えている。
それを見て驚く小屋の男。
オジサンは、あの天使・クラレンスだったのだ。
クラレンスは、ジョージの自殺を阻止するために海に飛び込んだと話す。
信じないジョージは、自分などいない方が皆幸せになったはずだ、と言う。
そこでクラレンスは、ジョージがいなかった世界を彼に見せることにする。
外は一瞬すごい風が吹き荒れる(天の議論)、そして降っていた吹雪が止む。
ジョージ、いつの間にか右耳を治っており、出血した唇もまっさらになっていた。
不思議がるジョージ。クラレンスとともに車に戻るべく小屋を去る。

○民家の前(夜)
ぶつけたはずの車が…ない。
ジョージ、驚いて先ほどの家主に車の在り処を尋ねる。
が、家主は知らないと答える。
さらに自分の町の名前を「ポッタース・ビル」と言っていた。
怪訝な顔をするジョージ。

○バー・中(夜)
ジョージとクラレンス、カウンターに座り、酒を注文。
なぜかマティーニではなく、ニックが店主となっている。
Barの雰囲気はすさんでおり、ニックもなんだか気性が荒く見える。
そこへ老いぼれたガウワーが入ってくる。
ニックや客たちから馬鹿にされ、追い返されようとしているガウワー。
ジョージ、ガウワーに話しかけるが、知らないと言われる。
なんでも彼が薬局で子供を毒殺して牢獄に入れられていたようだ。
牢獄仲間だと思われたジョージとクラレンスも、店を追い出される。

○バー・外(夜)
追い出されたジョージ、見上げるとBar「ニック」になっている。
クラレンス、唖然とするジョージに「今見ているのは君がいない世界だ」と説明。
ジョージのポケットには、運転免許証や身分証も、そして次女の花びらもない!
いまだに信じられないジョージ、家族に会うために家へと向かう。

○街・点描(夜)
ジョージが街に繰り出すと、看板に「ポッタース・ビル」と書いてある。
街には警察が常に巡回しており、ネオン煌く下品な店ばかりが立ち並ぶように。
警察に摘み出されている毛皮の女・ヴァイオレット。
友人・アニーのタクシーに乗り込み、家の住所を伝えるジョージ。

○走るタクシー・中(夜)
アニーもジョージのことを知らないと言う。
そんなアニーは本来ベイリー公園に住んでいたはずだが、ポッターの貸し家に住んでいると話す。
ジョージの家の住所も、怪訝な顔で聞いている。
アニー、走る途中に「(おかしな奴がいる…!)」と警察に合図。

○ジョージのボロ家(夜)
タクシーがジョージのボロ家に到着。
が、そこは20年来の空き家だと言う。
中に入って家族の名前を呼ぶが返事なし。
改装もされておらず、蜘蛛の巣が張ったまま。
そこへ警察とアニーが事情聴取に。
2人ともジョージのことは知らないと言う。
ジョージ、捕まりそうになって逃げる。

○ジョージの実家(夜)
「ベイリー下宿」とあるジョージの実家。
ジョージが呼び鈴を押すと、母が出てくる。
母もジョージのことは知らないと言う。
叔父の名前を出すが、叔父は失業のショックで精神病院だと話す。
唖然とするジョージ。
クラレンスは「1人の命は多くの生活に関わっている。その者が欠けると全てが変わる」と言う。
ジョージ、マティーニを探しにベイリー公園へ向かう。

○ベイリー公園(夜)
があったはずの場所は、墓地になっていて。
そこには弟・ハリーの名前が。
氷の池に落ちた時、助ける者がいなかったハリーは、わずか8才で亡くなっていた。
(墓跡に1911-1919とあった!)
クラレンスにメアリーの居場所を尋ねるジョージ。
メアリーは生涯未婚で通したらしい。

○図書館・前(夜)
勤務を終えたメアリーが出てくる。
ジョージ、メアリーに声をかけるが、メアリーは逃げる。
追いかけるジョージ。

○集会所(夜)
メアリーが逃げ込んだ先に、多くの知り合いが。
誰もジョージのことを知らない。
メアリー、あの人を捕まえて!と言い、その場は大混乱。
ジョージ、一目散に逃げる。警官が追ってくる。

○橋の上(夜)             【結】
逃げ走ってきたジョージ、橋の上で「元の世界に戻りたい!もう二度と命を投げ出さない!」と祈る。
すると、ふたたび吹雪が降り始める。
そこへ警官が追いついた。
警戒するジョージだったが、警官はジョージの名前を覚えていた!
さらには、ジョージの唇から出血があり、ポケットにはズズの花びらがあった!
歓喜するジョージ。

○民家・前(夜)
ぶつけた車がある!
万歳するジョージ。

○街・点描(夜)
「ベドフォード・フォールズ」という街の看板。
万歳するジョージ。
ジョージ、街ゆく人々に「メリークリスマス!」と叫ぶ。
人々もそれに「メリークリスマス!」と返す。

○ジョージのボロ家(夜)
ジョージ、帰宅する。
と、中で警察が逮捕令状を持って待っている(銀行監査員と記者も)。
だが、ジョージは彼らにもメリークリスマス!と言って、子供たちを抱きしめる。
そこへメアリーが帰ってきて、奇跡が起きたと話す。

と、次の瞬間、叔父をはじめ街中の人々が募金を持ち寄り、ジョージの家へ。
ジョージの人望で、理由も聞かずに皆が8000ドルを工面してくれたのだ!
次々と現れる劇中の登場人物たち。皆が寄付してくれる。
そして弟・ハリーが帰還。
「街一番、豊かな人・兄貴に乾杯!」と音頭を取る。
感慨深いジョージ。
と、札束の中に聖書を発見。
中を見てみると「友ある者は救われる。翼をありがとう!」とクラレンスからのメッセージ。
ツリーのベルが鳴る。クラレンスが翼を授かったのだ。

蛍の光を大合唱する一同。


映画『素晴らしき哉、人生!』分析

▽主人公は誰で、どこから登場しているか
主人公は、住宅金融で働くジョージ・ベイリー。
お人好しすぎる性格でたびたび困る。

登場は、冒頭から3シーン目。
子供の頃に凍った池でそり滑りをしているシーン。

その後、池のエピソード、薬局のエピソードの2つを経て、早い段階で大人になったジョージが登場する。

どちらもストップモーションで、天の声が入る。
(クラレンスに説明している体で、ナレーションである)

▽二番目の人物は誰で、どこで登場しているか
二番目の人物は、ジョージの妻・メアリー。
弟・ハリーの高校の卒業パーティーで登場。
ジョージとメアリーはダンスを踊る。

そこから
・ジョージと結ばれるまでの物語
・ジョージと家庭を築く物語
・ジョージの異変に気付いて祈るメアリー
と、3要素ほど展開がある。

▽主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か
凍った池でそり滑りをする、幼き頃のジョージ。
クラレンスにジョージの生涯(命を投げ出そうとするに至るまでの過程)をオリエンするという体で、ジョージの半生が語られる。
そのファーストシーン(映画では3シーン目)。

街の点描「ジョージを助けて」→宇宙での星たちの会話→オリエンスタート(氷の池)

自己犠牲を払いすぎて自殺願望を持ってしまったジョージが、自分のいなかった世界で不幸になっている街の人々を見て、もう一度生きたい!と願う物語。

▽物語が大きく転換しているのはどこか
叔父が住宅金融の8000ドルを紛失するシーン。
ここからジョージの絶望/自暴自棄/負の連鎖→命を捨てようとする展開へ発展

これまで色んな自己犠牲を払い、悶々としてきたジョージ。
そんな彼に追い討ちをかける出来事が、この8000ドル紛失事件(しかも叔父のせいで自分が被る)。
👉物語には決定的な「追い討ち」が必要!(なんとなく辛い…だけでなく、決定的な決め手)

▽クライマックスはどこか
川の近くの小屋で、救世主・クラレンスがジョージに「君のいない世界を見せてあげる」と話すシーン以降。
ジョージは自分がいなかったが故に、様々な人が不幸な目に遭っている様子を目の当たりにする。
この一連の流れで、ジョージが「もう一度生きたい!」と思うまでがクライマックス。

▽主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか
・弟ハリーを救って、右耳を失聴する。
・薬局の主人ガウワーのミスを庇って耳をぶたれる。
・念願だった世界旅行の前日に父が倒れ、旅に出られなくなる。
・大学に行く予定だったが、住宅金融を継ぐことを迫られ、進学を辞めて会社を継ぐ。
・弟に会社を継いでもらうことを希望にしていたが、大学から帰ってきた弟は結婚相手の父から仕事を貰っていた。
・新婚旅行の資金も、住宅金融存続のピンチを救うべく使ってしまう。
・給料が低く、妻や子供たちを幸せにしてあげられない(弟は名誉勲章を貰ってる)。
・叔父が8000ドルを紛失し、逮捕状が出る。
・家族に当たってしまったり、バーで殴られたり、民家の樹に車をぶつけたり、散々な有り様。

👉悉く「人のために尽くし、自分が損をする」という自己犠牲で困り続ける。(『獣になれない私たち』の深海晶と同じ困らせ方)

💡自己犠牲であることを分かりやすくするために、前フリとして主人公の夢や希望を語らせている
・世界を旅したい!
・大学に行きたい!
・金持ちになりたい!
さらにそれを諦めたあとも、嫌みな友人・サムや、性悪な金持ち・ポッターから、夢だったことの確認をさせられる。
「お前は本当は世界を旅する壮大な仕事がしたかったはずなのに、今は住宅金融で貧しい生活に甘んじてる」など。

▽逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか
・弟の命を救い
・薬局の主人を犯罪から救い
・父の住宅金融を存続させ
・弟の幸せを優先し
・住宅金融のピンチを救い
・マティーニにBarの店舗を貸し
👉自分が犠牲を払った対価として、人々が喜んでいることが主人公の喜びにもなっている。

が、心は磨耗していって…

▽起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か
起:街の点描「ジョージを助けて」〜星たちの会話
承:ジョージの幼少期〜弟・ハリー名誉勲章の知らせ
転:8000ドルを紛失〜橋でもう一度「生きたい」と願う
結:元に戻った世界〜寄附金が集まる

▽三幕だとするとどこが分かれ目か
①:街の点描「ジョージを助けて」〜星たちの会話
②:ジョージの幼少期〜弟・ハリー名誉勲章の知らせ
③:8000ドルを紛失〜寄附金が集まる

つまり、
①:天使たちに出動要請!物語を語り始める(イントロダクション)
②:その物語は1人の男(主人公)の生涯(ここが長ーい)
③:主人公を救うために天使が出動!(クライマックス)

▽このストーリーを3行で言うとどうなるか
「お人好し」すぎる住宅金融のジョージは、自分の夢を犠牲にして人のために尽くしていた。
しかし、自分の夢を蔑ろにしているだけでなく、自分を取り巻く状況は悪化する一方で、ついに命を投げ出そうとしてしまう。
それを見かねた天使・クラレンスが、ジョージに「自分のいない世界」を見せることで、ジョージに人生の素晴らしさを伝える物語。

▽このストーリーを15項目くらいの箇条書きにするとどうなるか
・街の皆々がジョージという男のために祈っている。
・天使たち、ジョージを救うために彼の生涯をおさらいする。
・ジョージ、幼少期から弟と薬局のガウワーを救う、心優しき青年だった。
・大人になったジョージの夢は世界を旅して大学に進学し、果ては世界を股に掛ける仕事。
・しかし、旅の直前に父が倒れ、ジョージは住宅金融を継ぐことに(旅と大学は諦める)。
・弟が政略結婚をしてきたことから、もう一度大学への進学を諦める。
・メアリーと結婚するが、新婚旅行の資金も住宅金融を救うために使ってしまう。
・ボロい家を改築して暮らし、4人の子宝にも恵まれるが、生活は貧しい。
・叔父が住宅金融の存続資金8000ドルを紛失し、ジョージに逮捕状が出る。
・自暴自棄になったジョージは橋の上から飛び降りようとする。
・ジョージの前に現れた天使クラレンスによって、ジョージは「自分のいない世界」を顛末を見ることに。
・街の人々が皆不幸になっている世界を目の当たりにし、自分の存在意義を確認したジョージは「もう一度生きたい!」と願う。
・現実に戻ってきたジョージに、街中の人々から8000ドルの寄付が集まる。
・ジョージは友のある人生の素晴らしさを実感する。


面白いと感じたポイント


□セリフ
ジョージとメアリーがボロ家の前で月を見上げるシーン
ジョージ「月を投げ縄で捕まえて、君にプレゼントするよ」
メアリー「それで?」
ジョージ「君は月を飲み込む。月光が指先や髪の先から輝き出す」

住宅金融の閉業を免れて手元に2ドルだけ残ったシーン
ジョージ「この2ドルはパパドルとママドルだ。早く家族を増やして銀行を豊かにするんだぞ?」
銀行員1「ウサギのようにね」

クラレンスがジョージを諭すシーン
「1人の命は多くの生活に関わっている。その者が欠けると全てが変わる」

ジョージに募金する女性
「離婚用の貯金なの!未婚だけど!」

👉セリフは基本的に言葉遊びがあると光る。

□キャラクター
性悪な金持ち・ポッター
常に主人公ジョージと住宅金融を憎み、徹底的に嫌がらせを仕掛ける。
👉主人公を困らせ続ける存在が1人いるだけで、どんどんと引き込まれる展開が作れる!

「おっちょこちょいな叔父」
「嫌みでお調子者なサム」
「悪気なく自由に生きる弟・ハリー」
👉全員のキャラクターが一言で表現できる性格をしている。

□ストーリー/構成
・小道具が人の間を巡ると面白い!
叔父が持っていたはずの札束が性悪な金持ち・ポッターの元へ。
札束をポッターが持っていると知らず、探し回るジョージたち。
ジョージ、持ち主であるポッターに、8000ドルを紛失した話をする。
👉小道具が人と人とを巡って、それを持ってる持ってないの嘘などが出てくると「面白い!」と感じる。

・主人公が自分で選ぶから、葛藤になる!
「前フリ」として「主人公の将来の希望」を話す
「自分の希望」か「大切な人の希望」かの2択を迫られて葛藤
→自ら「大切な人の希望」を選ぶことで、主人公はどんどん困っていく。
👉葛藤させるときは「こちらが立てば、あちらが立たず」が基本

・物語にはトドメが必要!
自己犠牲を払い続け、磨耗してゆく主人公…だけでは弱い!
決定的なドン底を作ることが大切。
それが次の展開に繋がっていく。
💡いろいろあって辛いけど、そこにトドメの「8000ドルの紛失事件」→命を捨てようとする!

□シーン
ませた女の子2人が、バーカウンターで1人の男の子を巡って、大人の女みたいに話すシーン
→会話は大人っぽいのに、アイスクリームを食べてるところとか、愛らしくて面白い

卒業パーティーでチャールストンを踊りながらプールに落ちるシーン
→スリルと滑稽さが楽しめて画として面白い

ボロ家に石を投げ込んで、窓ガラスが割れたら願い事を言う、というシーン
→スリリングなことをしているからこそ、なんかロマンチックに見える


□小道具
ベルの鳴る音
→天使が翼を得た合図として、ラストにクラレンスが翼を得たことが分かる

ズズの花びら
→現実と「自分がいない世界」を見分けるためのアイテムに

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