映画分析ノック⑭『ミッドナイト・ラン』(1988)
映画『ミッドナイト・ラン』ログライン
起「懸賞金ハンター・ウォルシュのミッション」
①:鍵をピッキングして民家に忍び込むウォルシュ、犯人らしき人物を確保(横取りしようとしたマーヴィンに勝利)。犯人を警察に突き出し、「保釈金融」のエディから懸賞金を受け取る。ウォルシュは懸賞金ハンターなのだ。
②:エディから次の仕事を頼まれるウォルシュ。シカゴの麻薬王"セラノ"の金を横領して福祉に寄付した会計士・デュークを捕まえて、警察に引き渡す仕事だ。セラノに警察を追われた過去を持つウォルシュは拒否するが、10万ドルを積まれて渋々承諾。期限は1週間。
③:ウォルシュが、デュークの居場所をニューヨークだと調べたところで、FBIのモーズリーらにつかまる。FBIも麻薬王"セラノ"の重要参考人としてデュークの身柄を抑えたく、絶対に渡さないと牽制される。ウォルシュは適当に受け流しつつ、モーズリーのFBI身分証を盗むことに成功。
④:飛行機でニューヨークに向かうウォルシュ。モーズリーのFBI身分証に自分の顔写真を貼り付ける。
⑤:ニューヨークの空港についたところで、セラノの手下であるトニーとターボが話しかけてくる。セラノもデュークを始末するために身柄を追っていた。エディよりも10倍多い100万ドルを提示してウォルシュを買収しようとするが、ウォルシュは応じない。トニーとダーボはウォルシュに連絡先を渡して去る。
⑥:ウォルシュ、デュークの協力者の女性にFBIのフリをして電話をかける。焦った協力者の女性がデューク宅に電話した無線を盗聴器でキャッチし、住所を特定するウォルシュ。
⑦:夜の住宅街。鍵をピッキングしてデューク宅に忍び込むウォルシュ。犬に見つかるが、デュークの確保に成功。
承「横領犯・デュークを連れ帰る旅」
⑧:ウォルシュ、デュークを連れて空港へ向かう。エディに電話をかけて経緯を報告。が、保釈金融の近くでFBI組織がエディとウォルシュの電話を盗聴していた。動き出すFBI。さらにエディと共同経営のジェリー(内通者)によって、セラノにも居場所が伝わってしまう。
⑨:ウォルシュは飛行機にデュークを乗せるが、デュークは飛行恐怖症だと暴れる。結局、鉄道でロスへ向かうことになった。
⑩:鉄道に乗り込むウォルシュとデューク。一方FBIはロスに到着した飛行機を捜索するが、ウォルシュとデュークはいない。セラノも飛行機にデュークがいなかったことから、手下たちに怒る。
⑪:鉄道内。懸賞金で仕事を辞めて喫茶店を開くと話すウォルシュに対して、デュークは会計士として飲食店はリスクが高いと言う。デュークは懸賞金額以上の額を出すから解放してくれないか?と交渉を持ちかけるが、ウォルシュは買収されるのが大嫌いで応じない。
⑫:エディはウォルシュが飛行機に乗っていないことを知って苛立ち、もう一人の懸賞金ハンター・マーヴィンに依頼。承諾したマーヴィンはウォルシュに扮してクレジット会社に電話し、履歴からウォルシュが中央駅で鉄道に乗ったことを知る。ついでにカードを解約するマーヴィン。
⑬:鉄道内の食堂。ジャンクフードを頬張るウォルシュに健康リスクを指摘するデューク。ウォルシュはセラノの金を福祉に寄付したデュークの方がリスクだったと反論。ウォルシュ、昔はシカゴの警察官で、離婚した妻と娘がいると話す。
⑭:途中停車駅で懸賞金ハンターのマーヴィンが乗り込んでくるが、呆気なく制圧するウォルシュ。このことでFBIに居場所がバレるが、停車駅で待ち構えていたFBIたちをかい潜り、さっさと降りていたウォルシュとデューク。
⑮:バスに乗るとエディに伝えるウォルシュ(FBIとセラノにも盗聴される)。バスの乗車券を買おうとするが、クレジットカードが無効になっていた。持っていた現金を払い、ほとんど一文無しになるウォルシュとデューク。
⑯:バスの車内。タバコを吸うウォルシュに喫煙リスクを訴えるデューク。バスの停車駅はシカゴ。別れた妻子に会えば?と提案するデュークに対し、ウォルシュは妻は再婚しており、自分はシカゴ市警で評判が悪かったから、迷惑をかけると拒否。
⑰:シカゴのバスターミナル。待ち構えていたFBIに確保されるウォルシュとデュークだったが、そこでセラノ組の狙撃に遭う。FBIとセラノ組で銃撃戦を繰り広げている隙に、FBIの車を盗んで逃走するウォルシュとデューク(盗聴されていた事実をここで知る)。途中で車を乗り換える。
⑱:離婚した妻子の家にいくウォルシュ。逃走用の金を借りに来たのだ。元妻の現在の夫は警察官であることからも、逃走資金を貸すことを拒む元妻だったが、ウォルシュと娘との再会を見て気持ちが変わる。金と車を借りることができたウォルシュ、感謝して家を去る。
⑲:道の公衆電話で、エディに電話をかけるウォルシュ。FBI盗聴班を挑発し、別の店からエディとの電話を繋ぐ。エディに500ドルを振り込むように依頼。残り2日半しかないと焦るエディ。マーヴィンをふたたび動かす。
⑳:夜道を走る車。ウォルシュはデュークに自分がシカゴ市警だった時のことを語る。マフィアに買収された警察内部の腐り様が許せなかった過去のウォルシュは、マフィアを検挙しようとしていた。しかし、警察に薬物違反をでっちあげられ、警察を追われることになったのだ。
㉑:通り沿いの喫茶店。お金がなく、質素な注文で我慢するウォルシュとデューク。デュークはマフィアの金を横領して福祉に寄付したのを「正義感」のためだと説明。”自分の「正義」のためにマフィアに逆らった”という点で共通するウォルシュとデューク。…が、もしデュークが刑務所に入れば確実に殺される。それでもウォルシュは金欲しさにデュークを売るのか?と。かすかに葛藤するウォルシュ。
㉒:道を歩くウォルシュとデュークの元に、セラノの手下であるトニーとターボが来て銃を突きつける。が、そこへエディから再び依頼を受けたマーヴィンが来てトニーとターボを銃で殴って撃退。その隙にウォルシュはデュークの手錠の片方を外し、自分につける(二人一組になる)。マーヴィンは仕方なく、デュークだけでなくウォルシュも一緒に車で連れ去ることに。
㉓:マーヴィンが運転する車に乗せられたウォルシュとデューク。後ろからセラノの手下が操縦するヘリが追いかけてくる(ヘリ対車の銃撃戦になる)。車は大破してしまうが、銃撃戦の末にヘリを墜落させ、さらにマーヴィンを殴って気絶させることに成功したウォルシュ。しかし、デュークは川に流されていた。
㉔:川に流されたデュークを連れ戻すために川に飛び込むウォルシュ。逆にウォルシュが絶体絶命の危機に陥る。デュークは自分を警察に突き出さないという約束をして、ウォルシュを助ける。…が、すぐにウォルシュは約束を破り、再びデュークに手錠をかける。
㉕:道でヒッチハイクをしてトラックの荷台に乗るウォルシュとデューク。田舎の集落に辿り着く。ウォルシュの目を盗んで、ひとり飛行機で逃走を試みるデューク。飛行恐怖症は嘘だったのだ。なんとか引き止めたウォルシュ、集落の車を盗んでデュークを乗せ、走らせる。
㉖:車内。どちらが先に嘘をついたかで揉めるウォルシュとデューク(飛行恐怖症というデュークの嘘と、逃すと言ったくせに手錠をかけたウォルシュの嘘)。腹が減り、次の町でデュークが一芝居打つと言う。デュークを信用して手錠を外すウォルシュ。
㉗:町のBAR。FBIに扮したデュークとウォルシュ。偽札の調査と称して20ドル紙幣を数枚持ち去ることに成功。
㉘:スーパーで大量の食糧品を買ったウォルシュとデューク、そのまま走行中の貨物列車に飛び乗る。BARのマスターはそんな二人を目撃し、FBIではないことを確信し警察に通報する。
㉙:通報を受けて本物のFBI・モーズリーらに居場所(貨物列車)がバレる。さらにその情報はFBIに捕まっていたマーヴィンにも知れる。
㉚:夜の貨物列車。ウォルシュは元妻にもらった時計を捨てられないことを話す。二人はこんな形で出会っていなければ友達になれたのかなと笑い合う。
㉛:朝の貨物列車。もうすぐ到着する…ウォルシュは賞金のためにデュークを警察に突き出すことに葛藤する。なぜならば、憎きセラノの手でデュークが殺されることになるから。死にたくないデュークは、葛藤するウォルシュを皮肉っぽく責める。
㉜:到着間際に走行中の貨物列車から飛び降りたウォルシュとデューク。駅についた貨物列車をFBIが操作するが当然二人はいない。ウォルシュとデュークは、路肩の車を盗難して逃走する。
㉝:FBIの車とカーチェイスの末、無事にFBIを撒くことができたウォルシュ。
㉞:が、そこにマーヴィンの車がやってきて、ウォルシュからデュークを連れ去ってしまう。絶望するウォルシュ。
㉟:気落ちしたウォルシュが喫茶店にいると、そこにモーズリーらFBIが現れる。
転「ウォルシュのデューク奪還作戦」
㊱:FBIに事情聴取を受けているウォルシュ。エディに電話してマーヴィンをけしかけたことを怒ると、エディはまだマーヴィンからデュークの件を聞いていなかった。ウォルシュはマーヴィンがセラノ陣に買収されたと気付き、セラノの手下たちに電話して架空のフロッピーをちらつかせて取引を持ちかける。そしてモーズリーらFBI陣と結託して、セラノを捕まえる作戦を提案する。
㊲:マーヴィンは捕まえたデュークをモーテル内に監禁し、写真を撮る。マーヴィンはその写真をセラノの手下に見せ、200万ドルを請求するが、殴られて気絶。マーヴィンが撮ったデュークの写真には、モーテル名が入ったタオルが映り込んでいたのだ。
㊳:ラスベガスへの飛行機。セラノと交渉するための作戦会議をしているウォルシュとFBI陣。架空のフロッピーと引き換えにデュークを取り戻す計画。FBIたちはセラノを捕まえるチャンスを得ることになる。
㊴:ラスベガス空港。ウォルシュが持っている(架空の)フロッピーと引き換えに、セラノ陣が人質にしているデュークを受け渡す取引。FBI陣も見守る中、緊迫した雰囲気。ウォルシュがセラノと再開し、フロッピーを渡してデュークを取り返す。その時、空港にいたマーヴィンが乱入して現場はカオスに。そこへFBI陣が乗り込み、セラノ陣を一斉逮捕する。
結「ウォルシュとデュークのわずかな友情」
㊵:飛行機。ウォルシュはデュークを連れてロスへ飛んでいる。
㊶:ロサンゼルス空港。到着したウォルシュはエディに電話をかける。デュークを時間通りに連れてきたことを報告、歓喜するエディ。しかし、ウォルシュは「デュークは逃す」と言って電話を切った。
㊷:ウォルシュは時間に間に合わせられたことで満足した、とデュークの手錠を解いてやる。そしてデュークに元妻の時計を渡す(未練を断ち切る)。デュークはウォルシュの善意に感謝して、自分がベルトに隠していた逃走資金30万ドルをウォルシュに渡す。二人は笑顔で別れるのだった。
映画『ミッドナイト・ラン』分析
■主人公は誰で、どこから登場しているか
主人公は、懸賞金ハンター・ジャック・ウォルシュ。
冒頭「起」①で、(懸賞金のかかった)犯人を追うシーンで登場。
銃の扱いと素早い身のこなしで、あっという間に犯人を逮捕。
※同じく懸賞金ハンターのライバル・マーヴィンが手柄を横取りしようとするが、それをも制圧。
金にうるさい野蛮な野郎。腕だけは良い懸賞金ハンター。
元警察官であり、正義感が強い奴だったことが分かってくる。
■二番目の人物は誰で、どこで登場しているか
副主人公は、会計士・デューク(ジョナサン・マデューカス)。
マフィアの金を横領して福祉に寄附した人物。
「起」②、会話上に存在だけが登場(ミッションのお目当て)
「起」⑦、ウォルシュがデュークの家に忍び込み捕まえるシーンで登場。
几帳面でまじめな健康ヲタク。
次第にお茶目な一面も垣間見えてゆく。
■主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か
「起」②、ウォルシュが、保釈金融エディから新たなミッションを頼まれるシーン。
そのミッションとは「会計士・デュークを捕まえて、エディに引き渡すこと」。
裏ではシカゴの麻薬王・セラノも彼の行方を追っている危険なミッションである。
葛藤するが、10万ドルを条件に渋々引き受けるウォルシュ。
これは【懸賞金ハンター・ウォルシュが、会計士・デュークを捕まえて連れ戻す旅の過程で、心を通わせてゆくロードムービー物語】。
■物語が大きく転換しているのはどこか
「承」㉞:ライバルの懸賞金ハンター・マーヴィンがデュークを連れ去ってしまうシーン。
→「転」㊱:FBI事情聴取の最中にマーヴィンがセラノに買収されたと知り、架空のデータを餌にセラノからデュークを奪還する作戦を立てる
💡前半〜中盤は「ウォルシュとデュークの旅」がメインだったが、
終盤は「デュークを奪い返す作戦」がメインとなる。
👉3/4でウォルシュとデュークの交流を描き、残り1/4でウォルシュがデュークを取り返す展開にする。
(観客も、それまで一緒に旅をしてきたからこそ、デュークを取り返したいと感情移入できる)
■クライマックスはどこか
「転」㊴、ラスベガス空港のシーン。
デューク奪還作戦の当日。ウォルシュ&FBI側 vs セラノ側の直接対決!
ウォルシュが架空のフロッピーを渡す代わりに、セラノ側は人質デュークを引き渡す。
ウォルシュがデュークを引き取った瞬間に、FBIが突入する作戦だった。
が、マーヴィンの乱入により連絡手段が壊れ、FBIが助けに来ない!
このままではデュークが殺されてしまう…!という絶体絶命のシーン。
■主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか
・保釈金融エディからマフィア絡みの危険なミッションを依頼される。
・同じターゲットを追う者が3組いる(ライバル懸賞金ハンター、FBI組織、マフィア組織)。
・その3組にウォルシュの行動が筒抜け(保釈金融にセラノ側の内通者/保釈金融の向かいにFBI側の盗聴班)。
・NYから飛行機で連れて行こうとしたら、デュークが飛行恐怖症と騒ぐ→陸路で行く羽目に。
・移動中にマーヴィンやFBI組織やセラノ組織から妨害を受ける(幾度となく死にそうになる)。
・クレカが使えず、資金が底を尽きる。
・正義感が強いほど損をする(ウォルシュの警官だった過去/デュークの横領した過去)。
・デュークを保釈金融に突き出せば10万ドル入るが、デュークの命はない……葛藤する。
・終盤でデュークをセラノ側に奪われてしまう。
・デューク奪還作戦が、途中・予定外のトラブルで失敗しかける。
・デュークと離れる際に少し寂しさを感じる。
■逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか
・10万ドルの高額ミッションを受ける。
・幾度となく立ちはだかる障害物を、ギリギリ乗り越えてゆく。
・正反対な性格のふたりが「正義感のせいで損をした過去」「セラノに対抗した過去」で共有する。
・ライバルである懸賞金ハンターのマーヴィンが間抜けで弱い。
・FBIのモーズリー捜査官の身分証が便利な道具になる。
・元妻と娘に再会し、金を貸してもらうことができる。
・セラノ側からデュークを奪い返すことに成功する。
・デュークを逃すことを決意したことで、デュークから感謝の気持ちとして30万ドルのプレゼントを貰う。
■起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か
起「懸賞金ハンター・ウォルシュのミッション」
①:鍵をピッキングして民家に忍び込むウォルシュ、犯人らしき人物を確保(横取りしようとしたマーヴィンに勝利)。犯人を警察に突き出し、「保釈金融」のエディから懸賞金を受け取る。ウォルシュは懸賞金ハンターなのだ。
②:エディから次の仕事を頼まれるウォルシュ。シカゴの麻薬王"セラノ"の金を横領して福祉に寄付した会計士・デュークを捕まえて、警察に引き渡す仕事だ。セラノに警察を追われた過去を持つウォルシュは拒否するが、10万ドルを積まれて渋々承諾。期限は1週間。
〜
⑦:夜の住宅街。鍵をピッキングしてデューク宅に忍び込むウォルシュ。犬に見つかるが、デュークの確保に成功。
承「横領犯・デュークを連れ帰る旅」
⑧:ウォルシュ、デュークを連れて空港へ向かう。エディに電話をかけて経緯を報告。が、保釈金融の近くでFBI組織がエディとウォルシュの電話を盗聴していた。動き出すFBI。さらにエディと共同経営のジェリー(内通者)によって、セラノにも居場所が伝わってしまう。
⑨:ウォルシュは飛行機にデュークを乗せるが、デュークは飛行恐怖症だと暴れる。結局、鉄道でロスへ向かうことになった。
〜
㉞:が、そこにマーヴィンの車がやってきて、ウォルシュからデュークを連れ去ってしまう。絶望するウォルシュ。
㉟:気落ちしたウォルシュが喫茶店にいると、そこにモーズリーらFBIが現れる。
転「ウォルシュのデューク奪還作戦」
㊱:FBIに事情聴取を受けているウォルシュ。エディに電話してマーヴィンをけしかけたことを怒ると、エディはまだマーヴィンからデュークの件を聞いていなかった。ウォルシュはマーヴィンがセラノ陣に買収されたと気付き、セラノの手下たちに電話して架空のフロッピーをちらつかせて取引を持ちかける。そしてモーズリーらFBI陣と結託して、セラノを捕まえる作戦を提案する。
〜
㊴:ラスベガス空港。ウォルシュが持っている(架空の)フロッピーと引き換えに、セラノ陣が人質にしているデュークを受け渡す取引。FBI陣も見守る中、緊迫した雰囲気。ウォルシュがセラノと再開し、フロッピーを渡してデュークを取り返す。その時、空港にいたマーヴィンが乱入して現場はカオスに。そこへFBI陣が乗り込み、セラノ陣を一斉逮捕する。
結「ウォルシュとデュークのわずかな友情」
㊵:飛行機。ウォルシュはデュークを連れてロスへ飛んでいる。
〜
㊷:ウォルシュは時間に間に合わせられたことで満足した、とデュークの手錠を解いてやる。そしてデュークに元妻の時計を渡す(未練を断ち切る)。デュークはウォルシュの善意に感謝して、自分がベルトに隠していた逃走資金30万ドルをウォルシュに渡す。二人は笑顔で別れるのだった。
■三幕だとするとどこが分かれ目か
第1幕「懸賞金ハンター・ウォルシュ、危険なミッションを引き受ける」
①:鍵をピッキングして民家に忍び込むウォルシュ、犯人らしき人物を確保(横取りしようとしたマーヴィンに勝利)。犯人を警察に突き出し、「保釈金融」のエディから懸賞金を受け取る。ウォルシュは懸賞金ハンターなのだ。
②:エディから次の仕事を頼まれるウォルシュ。シカゴの麻薬王"セラノ"の金を横領して福祉に寄付した会計士・デュークを捕まえて、警察に引き渡す仕事だ。セラノに警察を追われた過去を持つウォルシュは拒否するが、10万ドルを積まれて渋々承諾。期限は1週間。
〜
⑦:夜の住宅街。鍵をピッキングしてデューク宅に忍び込むウォルシュ。犬に見つかるが、デュークの確保に成功。
第2幕「ウォルシュ、デュークをNYからLAまで連れてゆく」
⑧:ウォルシュ、デュークを連れて空港へ向かう。エディに電話をかけて経緯を報告。が、保釈金融の近くでFBI組織がエディとウォルシュの電話を盗聴していた。動き出すFBI。さらにエディと共同経営のジェリー(内通者)によって、セラノにも居場所が伝わってしまう。
⑨:ウォルシュは飛行機にデュークを乗せるが、デュークは飛行恐怖症だと暴れる。結局、鉄道でロスへ向かうことになった。
〜
㉞:が、そこにマーヴィンの車がやってきて、ウォルシュからデュークを連れ去ってしまう。絶望するウォルシュ。
㉟:気落ちしたウォルシュが喫茶店にいると、そこにモーズリーらFBIが現れる。
第3幕「ウォルシュ、デュークを奪還して逃がす」
㊱:FBIに事情聴取を受けているウォルシュ。エディに電話してマーヴィンをけしかけたことを怒ると、エディはまだマーヴィンからデュークの件を聞いていなかった。ウォルシュはマーヴィンがセラノ陣に買収されたと気付き、セラノの手下たちに電話して架空のフロッピーをちらつかせて取引を持ちかける。そしてモーズリーらFBI陣と結託して、セラノを捕まえる作戦を提案する。
〜
㊷:ウォルシュは時間に間に合わせられたことで満足した、とデュークの手錠を解いてやる。そしてデュークに元妻の時計を渡す(未練を断ち切る)。デュークはウォルシュの善意に感謝して、自分がベルトに隠していた逃走資金30万ドルをウォルシュに渡す。二人は笑顔で別れるのだった。
■このストーリーを3行で言うとどうなるか
懸賞金ハンター・ウォルシュは、麻薬王セラノの金を横領して福祉に寄付した会計士・デュークを捕まえるミッションを受ける。
NYでデュークを捕まえたウォルシュは陸路でLAを目指すが、道中で同じくデュークを捕まえたいFBI組織やセラノ一味に追われることに。
そんないくつもの障害物を乗り越えながら旅をする過程で、ウォルシュとデュークが心を通わせてゆく物語。
テクニック・ポイント
■構成/ストーリー
・ターゲットを追う者(ライバル)が3組も存在する!
- セラノ側(悪事をバラされる前に見つけ出して殺したい)
- FBI側(セラノを逮捕するための重要参考人として捕まえたい)
- マーヴィン(懸賞金を自分が手にするために捕まえたい)
さらに、その3組に主人公の移動が筒抜けになる、という設定
「保釈金融」には、ミッションの進捗状況を逐一報告する必要がある(拠点)。
→「保釈金融」の社員に、セラノ側の内通者がいる。
→「保釈金融」の近くに、FBI側の盗聴班がいる。
→「保釈金融」自身が、保険としてマーヴィンにも依頼する。
👉主人公の現在地が筒抜けになる設定を作ることで、ロードムービーの至る所で邪魔が入る展開にできる!
・性格の正反対なふたり
ウォルシュ=ガサツで野蛮である/貧乏
デューク =几帳面で品性がある/金持ち
性格は正反対だが…
→「正義感で損をした過去」において共通。
(その共通点が会話から徐々に明らかになっていき、その辺りから心が通うようになる)
👉心を通わせるためには、共通点をつくる!
そしてその共通点を、徐々に明らかにしてゆくべし!
・心を通わせてから…大きな葛藤と障害物を終盤で描く
(1)葛藤:デュークを保釈金融に突き出せば10万ドルが手に入るが、デュークは確実に殺される。
(2)障害:デュークがセラノ側に奪われてしまう。
どちらとも心を通わせた後で描くことで、より感情移入させることができる!
・ロードムービー中のふたりの会話のコツ
👉会話のトピックを小出しにして、次の会話まで引っ張る。
例)ーーーーーーーーーーーーーーーー
1回目の会話
「(A)なぜ警官を辞めたのか?」→「(言わない)…。」
2回目の会話
「(A)(警官を辞めた理由を話す)」
「(B)なぜ壊れた時計をしているのか?」→「(言わない)…。」
3回目の会話
「(B)(壊れた時計を着けている理由を話す)」
「(C)なぜ〜〜〜〜〜?」→「(言わない)…。」
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👉会話のトピックを必ず次の会話まで引っ張ることで、物語が重層的に見える。
さらに、観客もネタバラシを知りたいために引っ張ることができる。
・全てをロジック(理屈)で説明する必要は、ない!
ウォルシュは元妻から貰った壊れた時計をつけている=彼はまだ妻に未練があると分かる。
↓
(ここから特に元妻や未練についての台詞は無い)
↓
最後にウォルシュは、デュークにその時計をあげる =彼は妻への未練を振り切ったことが分かる。
👉特にセリフで ”なぜ妻との未練を振り切れたのか” を説明しなくても、
なんとなくの雰囲気で新しい一歩を踏み出した気分であることが伝わればOK
■キャラクター
ー主要人物ー
懸賞金ハンター・ウォルシュ(主人公)
会計士・デューク(副主人公)
保釈金融・エディ
麻薬王・セラノ
FBI・モーズリー捜査官
懸賞金ハンター・マーヴィン
ーサブキャラー
セラノの手下①
セラノの手下②
エディの部下(セラノの内通者)
FBIたち
ウォルシュの元妻・娘
デュークの妻
👉やはりロードムービーで2人がメインの物語は、性格の全く違う2人にするとよい。
野蛮なウォルシュと、几帳面なデューク。
貧乏なウォルシュと、金持ちなデューク。
あらゆる面で対局にあるようなキャラクター設定にしておく。
👉雑魚キャラ・マーヴィンが愛おしい!
マーヴィンはウォルシュの手柄を横取りしようとする懸賞金ハンターだが、とにかく間抜けで鈍臭い。そして詰めが甘い。
都合の良いキャラクターだからこそ、”物語をかき乱す人物” として必要な場面に登場させられる。
■小道具