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映画分析ノック⑪『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)

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映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ログライン


起「ドクの発明/主人公・マーティの生活」

①:発明品ばかりのドクの家に、青年・マーティがやってくる。ドクを探すがいない。TVではプルトニウムが盗まれたニュース。ドクのベッドの下にはプルトニウムが置かれている。
②:機械で遊ぶマーティの元にドクから電話。今夜、大実験をするらしい。興奮気味に時刻を確かめるドク。学校に遅れていることに気付くマーティ。
③:マーティ、スケボーで街を駆け抜け高校へ。恋人・ジェニファーが出迎える。遅刻したマーティを叱責する高校教師。「父と同じ、マクフライ家は代々ろくでなしだ!」と。
④:バンドのオーディションでエレキギターを披露するマーティ。しかし呆気なく落選。
⑤:街。才能がないと落ち込むマーティを恋人・ジェニファーが励ます。30年前に雷で壊れた時計台の修繕募金。彼女の連絡先が書かれたチラシを受け取る。明日の夜、車でデートに行く約束だ。(他、ゴールデンウィルソン市長の選挙カー/4WDの車への憧れ/ママは堅い人)
⑥:マーティが家に帰宅すると、レッカーで運ばれてくる車。ビフが父の車を借りて壊したようだ。開き直るビフに何も言えない父。保険会社でビフは父の上司だという。
⑦:家族で夕飯。父と母の出会いは車の事故だと話す。魅惑の深海パーティーでキスをして運命を感じた母。と、マーティの元にドクから電話。大実験の約束を思い出すマーティ。(他、パーティーは雷雨の日だったこと、母の弟が服役中なこと、兄が冴えないこと)
⑧:夜の広場に駆けつけるマーティ。ドクと彼が発明したデロリアンがある。ドク、愛犬アインシュタインを乗せ、1分後の未来にタイムスリップさせることに成功。驚くマーティ。
⑨:デロリアンの操作説明。ドクがタイムマシンを思いついた1955年11月5日に設定する(トイレで滑って転んで閃いた)。燃料はドクがリビア人から盗んだプルトニウム。(他、ここは昔なにもない畑であり、老人が松の木を大事にしていた情報)
⑩:マーティがビデオカメラを回し、ドクが発明について話していると、そこへリビア人が仕返しに来る。ドクは射殺され、マーティはとっさにデロリアンに乗って逃げる。スピードを出しすぎた結果、時空を越えてしまうマーティ。

承「過去(1955年)にきたマーティ/タイムスリップの諸問題」

⑪:何もない畑の納屋に突っ込むデロリアン。松の木を大事にしている老人に”宇宙人”と間違われ、逃げるマーティ。
⑫:自分の家があった場所に行くが、そこはまだ更地で新興住宅地の看板が立っているだけ。マーティ、もしかして…と不安になる。さらにデロリアンはプルトニウムが切れて動かなくなる。
⑬:街にいくと、現代とは全く違う1955年の街並みが広がっている。時計台も動いており、古めかしい車や広告の数々。新聞の日付を見てタイムスリップしたことを確信するマーティ。(他、レーガン主演の映画、知らない市長の名前)
⑭:カフェに入り、店の公衆電話からドクに連絡しようとするが繋がらず。カウンターには若き日の父・ジョージが。相変わらずビフにいじめられて情けない姿。(他、注文も言葉のニュアンスが伝わらない、ジャケットが救命胴衣と間違われる、若き日のゴールデンウィルソン市長が店員として働いている)
⑮:住宅街。マーティが木の上で何かを覗き見している父・ジョージを発見。覗いているのは、若かりし頃の母・ロレインの下着姿だ。と、木から落下し車に轢かれそうになるジョージ。マーティは父を助け、代わりに自分が車に轢かれて気絶。
⑯:母・ロレインの家で目を覚ますマーティ。ロレインはマーティに一目惚れしたらしい。母・ロレインに迫られ困惑するマーティ。
⑰:ロレインの両親や家族と夕食を囲むマーティ。母・ロレインの猛アタックに痺れを切らして逃げ出す。(他、檻に入っている赤ちゃんの叔父、テレビが一家に一台あるかないかの時代、新作のコント番組)
⑱:ドクの家にたどり着くマーティ。ドクは30年前も相変わらず発明している。デロリアンでタイムスリップしたことを言うと信じないドク。しかし今日トイレで滑って転んだことを話すと信用する。(他、家族写真に1981のプリントや、1985の大統領がレーガン)
⑲:ドクにデロリアンの実物を見せるマーティ。大興奮のドク、つい今日設計図を描いていた。デロリアンを持ち帰ることにする。
⑳:マーティ、1985年のドクがデロリアンについて語るビデオを1955年のドクに見せる。「1.21ジゴワットの電流」が必要なことが判明。プルトニウム以外では稲妻以外そのパワーはありえないと。マーティ、時計台に雷が落ちるチラシを見せる。これだ!…しかし、マーティが父と母に接触し、二人の出会いである車の事故で自分が轢かれてしまったがために、子供の存在が消えかけていることが写真から分かる。
㉑:高校に行ったマーティは、父・ジョージを母・ロレインに紹介するが、ロレインはマーティに夢中。困ったマーティ、深海パーティのチラシを見つける。
㉒:食堂でジョージにロレインをパーティに誘うように説得。勇気の出ないジョージ。そこへビフが乱入しロレインにセクハラしている。マーティ、堪らずビフに突っかかる。その隙にジョージは逃走。(他、ジョージはSF小説を描いている)
㉓:誘えないジョージ(SF好き)を説得するため、宇宙人に扮してお告げをするマーティ。
㉔:カフェでロレインを誘うジョージ。しかしビフの邪魔が入る。それを阻止しようと立ち向かうマーティ。ビフを叩きのめしたマーティに、ロレインはさらに惚れてしまう(ストーカースイッチON)。
㉕:ドクの家。雷を利用して1985年に帰るためのシミュレーションを街ジオラマで解説するドク。そこへロレインが尾けてくる。なんと深海パーティにロレインから誘われてしまうマーティ。(他、射殺される寸前のビデオを見るドク。勧告したいマーティだがドクは未来のことを聞きたくない)
㉖:マーティは作戦を立てる。パーティ会場の外、マーティがロレインに車の中でいやらしいことをしてロレインが困っているところに、ジョージが駆けつけて助け出すという芝居を打つことに。ジョージ、渋々承諾する。

転「約束の日(深海パーティー/時計台の雷)」

㉗:雷/パーティの日。時計台の麓でデロリアンを準備するマーティとドク。マーティはドクに手紙で30年後に射殺されることを勧告することに。ドクが警官に捕まっている間に、コートのポケットに手紙を忍ばせるマーティ。
㉘:会場外に車でつくマーティとロレイン。マーティがいやらしいことをしようとすると、ロレインは乗り気!困ってしまうマーティ。そこへビフが現れ、悪ガキたちに連れ去られ車のトランクに閉じ込められるマーティ。ビフは車の中でロレインにセクハラを働く。
㉙:ジョージ、約束の時間にマーティがいると思って車を開けるとビフがいた。ピンチに陥るも勇気を出してビフを殴るジョージ。ビフに勝ってロレインを誘うことに成功。…が、まだ写真の子供は消えている。
㉚:トランクに閉じ込められたマーティを助けたバンドマンのギタリストは、手を負傷してしまっていた。
㉛:ダンスパーティでジョージとロレインがキスをするように、マーティはエレキギターで未来の曲を演奏。盛り上げる。無事にキスをするジョージとロレイン。演奏に夢中で遅刻しそうになるマーティ。
㉜:マーティは去り際、ジョージとロレインに別れを告げる。いつか必ず会えると保証する。
㉜:時計台に駆けつけるマーティ、約束の時間が迫っていた。準備を進めるマーティとドク。しかしドクが未来からの手紙を発見し、破いてしまう。口で伝えようとするが、強風で電流のコンセントが外れる。
㉝:ドクは電流コンセントを繋ぎに時計台に登る。マーティはデロリアンでスタンバイ。ドクを助け出すために、戻る時間を射殺される10分前に設定する。
㉞:デロリアンのエンジンが上手くかからない…!時計台のコンセントが繋がらない…!怒涛のトラブルを経て、ギリギリ雷でタイムスリップに成功するマーティ。1985年に帰ってくる。

結「未来(1985年)に帰ってきたら…」

㉟:帰ってきた瞬間にデロリアンは勢い余って建物に衝突してしまう。その間にリビアのテロリストたちの車がマーティを追い抜かす。マーティは走って現場へと向かう。
㊱:広場についたマーティだったが時すでに遅し。ドクは銃で撃たれていた。悲しみに暮れるマーティだったが、ドクは生きていた。ビリビリに破いたはずのマーティの手紙を繋ぎ合わせて読み、防弾チョッキを着ていたのだ。安堵するマーティ。
㊲:帰宅すると家が豪華になっていた。憧れの4WDもある。父・ジョージは小説家として大成。母・ロレインはスタイル抜群。ビフは使用人として雇われていた。恋人・ジェニファーと出かけに行こうとする。…とドクが未来からやってきて、二人の子供が大変だ!と。未来へ向かってデロリアンに乗るマーティだった。


映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』分析


■主人公は誰で、どこから登場しているか
主人公は高校生・マーティ。
冒頭「起」①で、発明家ドクの実験室を訪れるシーンで登場。
ドクを探していて学校に遅刻するマーティ。


■二番目の人物は誰で、どこで登場しているか
発明家ドク。タイムスリップできる車・デロリアンの生みの親。
冒頭「起」①で、電話越しに声のみで登場。
「起」⑧(開始19分地点)で、発明したデロリアンと共に登場。タイムスリップを成功させ、興奮する。


■主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か
マーティがデロリアンに乗って1955年にタイムスリップしてしまったシーン。状況が掴めないマーティだったが、街の古めかしさや新聞の日付から1955年にきたと悟る。

💡さらに問題が明確化するシーンは、この後の「若かりし頃のドクを訪ねるシーン」。ここで「未来へ帰れない問題」と「両親の未来を変えた問題」が明確化し、物語が本格的に始まる!とも言える。

タイムスリップによって発生する問題は主に2つ。
 ①:未来(1985年)への戻り方が分からない!(→未来への戻り方を若きドクと模索)
 ②:両親が結婚する未来を変えてしまった!(→若き父・ジョージを説得し、若き母・ロレインにアプローチさせる)

これは【1985年から1955年へとタイムスリップしてしまった青年が、自分の両親の運命を変えないように、未来へ戻ろうとする物語】


■物語が大きく転換しているのはどこか
約束の日(パーティ当日/時計台に雷が落ちる日)
①パーティで両親がキスしなくてはならない
②時計台に落ちた雷で1985年に戻らなくてはならない
👉この2つのミッションを同時にクリアする必要があり、それぞれのミッションで困難が起こりまくる。


■クライマックスはどこか
時計台に雷が落ちる寸前のシーン。
デロリアンで待機するマーティと、時計台に登って電流コンセントを繋ごうとするドク。
落雷の時間が刻々と迫る中で……
エンジンがかからないデロリアンに焦るマーティ。
強風で電流コンセントが上手くつなげないドク。
間一髪のタイミングでデロリアンが出発し、電流をコンセントに繋げて、マーティは未来に帰ることができる。

💡さらに良い作品にはクライマックスが2回ある!
本作にもクライマックスは2回。
①:時計台の雷を燃料にデロリアンでタイムトラベル!
②:未来で射殺されそうなドクを救えるかどうか…!
傑作と呼ばれる作品の満足度は「クライマックス」が2回であることが多い(名探偵コナンの劇場版も大抵クライマックスが2回ある)


■主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか
主人公が困ることは2つの軸で起こっている。

①:未来(1985年)への戻り方が分からない!
②:両親が結婚する未来を変えてしまった!

以下、2つの軸ごとに困ること・苦しむことを描いていく。

①未来(1985年)への戻り方が分からない!
 ・1955年のドクに会いたいが、公衆電話が繋がらない。
 ・若き日のドクに会えたものの、タイムスリップを信じてもらえない。
 ・デロリアンを動かすには1.21ジゴワットの電流が必要だが、プルトニウムがない。
 ・ドクに射殺される未来を伝えたいが、ドクは未来のことを知ろうとしてくれない。
 ・約束の雷が近づく中、パーティで演奏に夢中なマーティは大幅に遅刻。
 ・ドクに描いた未来に読む手紙をドクが破ってしまう。
 ・なかなかデロリアンのエンジンがかからない。
 ・電流コンセントがなかなか繋がらない。

②:両親が結婚する未来を変えてしまった!
 ・出会いのきっかけである車の事故を助けてしまい、自分が惹かれてしまう。
 ・若き日の母・ロレインは、轢かれたマーティに一目惚れしてしまう。
 ・父・ジョージに勇気がなく、ちっともロレインを誘えない。
 ・ジョージがロレインを誘っているとビフの邪魔が入る。
 ・ビフを追い払ったマーティに、ますますロレインは惚れてしまう。
 ・ロレインの方からパーティに誘われてしまうマーティ。
 ・マーティがロレインに嫌がらせする作戦を立てるが、ロレインは嫌がるどころか乗り気だった。
 ・作戦の最中にビフの邪魔が入り、ジョージが来る前にマーティは閉じ込められてしまう。
 ・ジョージが作戦通りに車を開けると、中にはビフがいてロレインを襲っている。
 ・無事にくっついたジョージとロレインだが、演奏がないとキスができない。
 ・演奏をする人が手を負傷してしまい、マーティが演奏をすることに(雷の時刻に遅刻しそう)


■逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか

①未来(1985年)への戻り方が分からない!
 ・公衆電話の電話帳でドクの連絡先と住所を発見する。
 ・ドクから聞いた発明時のエピソードを話すことで、若き日のドクにタイムスリップの存在を信じてもらえる。
 ・時計台修繕募金チラシのおかげで未来に帰るための電力を稲妻から得ることを思いつく。
 ・ドクが稲妻を利用するデロリアンの使い方を考案、ジオラマで説明する。
 ・デロリアンで無事に未来に帰ることができる。

②:両親が結婚する未来を変えてしまった!
 ・消えかけた子供たちの写真で未来を元に戻す必要があることを悟る。
 ・ビフに追いかけられるが、無事にやっつけることに成功(しかしそのせいで余計ロレインに惚れられてしまうのだが…)
 ・小心者の父・ジョージだが、彼のSF好きを利用して宇宙人に扮することで説得に成功。
 ・ジョージに車の中でマーティからロレインを奪還する作戦を伝え、渋々承諾してもらえる。
 ・車の中でロレインにセクハラしているビフを、勇気を振り絞って殴ることができた。ビフに勝ち、ロレインを誘うことに成功。
 ・マーティの演奏によって、ジョージとロレインが無事にキスをする。
 ・未来の家族が良い方向に向かっている。


■起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か

起「ドクの発明/主人公・マーティの生活」
①:発明品ばかりのドクの家に、青年・マーティがやってくる。ドクを探すがいない。TVではプルトニウムが盗まれたニュース。ドクのベッドの下にはプルトニウムが置かれている。

⑩:マーティがビデオカメラを回し、ドクが発明について話していると、そこへリビア人が仕返しに来る。ドクは射殺され、マーティはとっさにデロリアンに乗って逃げる。スピードを出しすぎた結果、時空を越えてしまうマーティ。

承「過去(1955年)にきたマーティ/タイムスリップの諸問題」
⑪:何もない畑の納屋に突っ込むデロリアン。松の木を大事にしている老人に”宇宙人”と間違われ、逃げるマーティ。

㉖:マーティは作戦を立てる。パーティ会場の外、マーティがロレインに車の中でいやらしいことをしてロレインが困っているところに、ジョージが駆けつけて助け出すという芝居を打つことに。ジョージ、渋々承諾する。

転「約束の日(深海パーティー/時計台の雷)」
㉗:雷/パーティの日。時計台の麓でデロリアンを準備するマーティとドク。マーティはドクに手紙で30年後に射殺されることを勧告することに。ドクが警官に捕まっている間に、コートのポケットに手紙を忍ばせるマーティ。

㉞:デロリアンのエンジンが上手くかからない…!時計台のコンセントが繋がらない…!怒涛のトラブルを経て、ギリギリ雷でタイムスリップに成功するマーティ。1985年に帰ってくる。

結「未来(1985年)に帰ってきたら…」
㉟:帰ってきた瞬間にデロリアンは勢い余って建物に衝突してしまう。その間にリビアのテロリストたちの車がマーティを追い抜かす。マーティは走って現場へと向かう。

㊲:帰宅すると家が豪華になっていた。憧れの4WDもある。父・ジョージは小説家として大成。母・ロレインはスタイル抜群。ビフは使用人として雇われていた。恋人・ジェニファーと出かけに行こうとする。…とドクが未来からやってきて、二人の子供が大変だ!と。未来へ向かってデロリアンに乗るマーティだった。


■三幕だとするとどこが分かれ目か

第1幕:ドクの発明/主人公・マーティの生活
①発明品ばかりのドクの家に、青年・マーティがやってくる。ドクを探すがいない。TVではプルトニウムが盗まれたニュース。ドクのベッドの下にはプルトニウムが置かれている。

⑩マーティがビデオカメラを回し、ドクが発明について話していると、そこへリビア人が仕返しに来る。ドクは射殺され、マーティはとっさにデロリアンに乗って逃げる。スピードを出しすぎた結果、時空を越えてしまうマーティ。

第2幕:過去(1955年)にきたマーティ/タイムスリップの諸問題
⑪何もない畑の納屋に突っ込むデロリアン。松の木を大事にしている老人に”宇宙人”と間違われ、逃げるマーティ。

㉞デロリアンのエンジンが上手くかからない…!時計台のコンセントが繋がらない…!怒涛のトラブルを経て、ギリギリ雷でタイムスリップに成功するマーティ。1985年に帰ってくる。

第3幕:未来(1985年)に帰ってきたら…
㉟帰ってきた瞬間にデロリアンは勢い余って建物に衝突してしまう。その間にリビアのテロリストたちの車がマーティを追い抜かす。マーティは走って現場へと向かう。

㊲帰宅すると家が豪華になっていた。憧れの4WDもある。父・ジョージは小説家として大成。母・ロレインはスタイル抜群。ビフは使用人として雇われていた。恋人・ジェニファーと出かけに行こうとする。…とドクが未来からやってきて、二人の子供が大変だ!と。未来へ向かってデロリアンに乗るマーティだった。


■このストーリーを3行で言うとどうなるか
1985年から1955年へとタイムスリップしてしまった高校生・マーティが、自ら変えてしまった両親の運命の出会いを元に戻すために、父・ジョージと母・ロレインをくっつけようと奔走しながら、若き日の発明家・ドクと共に未来(1985年)の時代へ帰る方法を模索する物語。


■このストーリーを15項目くらいの箇条書きにするとどうなるか
・主人公・マーティには冴えない家族と可愛い恋人がいる、普通の1985年の高校生だ。
・ある日、発明家・ドクに呼び出されたマーティは、タイムトラベルできる車「デロリアン」の発明を知る。
・しかし、プルトニウムを盗んだドクはテロリストに射殺され、車で逃げようとしたマーティは1955年へタイムトラベルしてしまう。
・1955年に唖然とするマーティ、公衆電話からドクに連絡すべく喫茶店に入ると、若かりし頃の父・ジョージ、ビフと出会う。
・情けないジョージを追っていくと、母・ロレインの着替えを覗くジョージ。車に轢かれそうになり、助けて身代わりとなるマーティ。
・若かりし頃の母・ロレインの家で看病されたマーティ。ロレインはマーティに一目惚れする。
・ドクを尋ねてタイムトラベルのことを話すマーティ。ドクは稲妻計画を発案。マーティは両親の運命を変えてしまったことを知る。
・マーティは運命を戻すべく、高校でジョージにロレインを誘うように説得するが、うまくいかない。ロレインはマーティに夢中。
・何とか説得し、喫茶店でジョージがロレインに声をかけようとするとビフの邪魔が。立ち向かったマーティに余計惚れるロレイン。
・ドクとデロリアンのシミュレーションをしているところにロレインが来て、マーティを深海パーティに誘う。
・マーティは自分とロレインが揉み合っているところにジョージが来る作戦を発案し、ジョージに伝える。
・パーティ(雷)当日。マーティとロレインが車にビフが来る。マーティは閉じ込められ、ビフはロレインにセクハラ。
・何も知らないジョージが車を開けるとビフ。怯むが勇気を出してビフを殴り勝利。ロレインはジョージに惚れる。
・マーティ、パーティで自ら演奏し、ジョージとロレインのキスをアシストする。運命を元に戻すことに成功した。
・時計台にてドタバタの末、デロリアンで1985年に戻ることに成功したマーティ。しかしドクが殺される運命は変えられなかった?
・マーティが広場に向かうとドクは生きていた(マーティの手紙を読み備えていた)。未来の家族も良い方向に変化していた。



面白いと感じたポイント


■キャラクター

《主要人物》
高校生・マーティ
発明家・ドク博士
若いジョージ(父)
若いロレイン(母)
若いビフ(いじめっ子)

ーサブキャラー
父・ジョージ
母・ロレイン
上司・ビフ
兄弟2人
恋人・ジェニファー
ハゲ教師
若いロレインの両親

👉やはり2時間映画の主要登場人物は5~6人であることがわかる。


■構成/ストーリー

・2つの問題の起点がストーリーライン上で重なり合う
タイムスリップを把握した最初は、1つ目の問題「若き日のドクに会って戻り方を教わること」しか生まれていなかった。
→公衆電話を借りようと入ったカフェで、若き日の父・ジョージに遭遇。
→あまりにも情けないジョージが気がかりで後をついていくと、ジョージが覗きをしていることが判明
→車に轢かれそうになったジョージを助けようとして、両親の運命を変えてしまう。
👉ここで新たに、2つ目の問題「両親の運命を元に戻すこと」が生まれる!


・物語の大筋は「両親をくっつけること」であり、「未来へ帰ること」は中筋として流れている。
時間の大半は、若き日のジョージとロレインをどうくっつけるかにマーティが奔走する様子が描かれる。
そのシーンの合間を縫うように、ドクが時計台に落ちる稲妻を利用してデロリアンで未来に帰る計画が進行する。

デロリアン帰還計画①(発案)
両親をくっつける
両親をくっつける
両親をくっつける
デロリアン帰還計画②(計画)
両親をくっつける
両親をくっつける
両親をくっつける
デロリアン帰還計画③(実行)

👉2つの筋を進行させ、そのサイズ感(大筋・中筋)を決めれば、物語を中だるみさせずに進めることができる!


・意味の連なりで展開させると綺麗!
時間実験の成功に喜ぶドク→その時間操作のせいで高校に遅刻するマーティ。
💡ただ遅刻させるのではなく、ドクが時間に関する実験を行っているという設定を見せた上で遅刻へと流れを作っている。

トランクに閉じ込められたマーティを助けたギタリストは、手を負傷してしまう。→演奏がないと両親はキスをしないと悟り、マーティ自身がギターの演奏を引き受けることに。
💡ただマーティが演奏する展開にするのではなく、マーティを助けたギタリストが負傷することでやむを得ず…という流れにしている。


・クライマックスは、大切な日を重ねることで盛り上がる
-雷が時計台に落ちる日
-パーティで父と母がくっつく日
クライマックスに、”何か”と”何か” が重なってしまう展開を作ると、そこに「時間の制約」や「どっちに行くべきかなどの葛藤」が生まれ、さらに「盛り上がっている感」もすごく演出できる!


・小さな伏線を張り巡らせる
物語の本筋には関係ないことでも、シーン1つ1つが小さな伏線と回収によって面白くなっている。
(ゴールデンウィルソン市長、レーガン大統領、叔父が服役中、コント番組の再放送、SF好きのジョージ……etc.)
シーンの筋が決まったら、他のシーンに繋げられるセリフや伏線はないかどうか考えることで、もう1段階シーンが面白くなる。


・主人公の感情の動き(心の葛藤や変化)は特にない。
主人公は、実利的な困難に陥る(両親の運命パラドックス/未来に帰れない)が、主人公自身の心情の葛藤は描かれない。
なので「葛藤を描く作品」というより「障害物を乗り越えてゆく作品」となる。
とにかく主人公に実利的な障害をぶつけることで物語を進めている。


■小道具

・時計台修繕費のチラシ
・ドクへと描いた手紙
・盗まれたプルトニウム
・スケボー
・ビデオカメラ
・SF小説

👉伏線に繋がる小道具がたくさん出てくる。
本作では道具は基本的に「未来」と「過去」を分ける象徴として登場する。

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