7月2日 第70号 得意になるコツは、できるようになることです

誰しも人間ですから、気分の浮き沈みはあるものです。そんなときに、高校生のときの自分を思い出します。

数学の試験で点数が取れないことがあるわけです。好きな科目なのに、点数が取れない。物理も好き。だけど、点数が取れない。人並みに点数は取れるのに、抜きんでることができなかったのです。周囲に埋もれていく自分が許せなかった。

自分にはきっと、才能がある。他の人が仕方なく物理や数学を勉強している中で、自分は興味を持って、ロマンすら感じて勉強していた。でも、全然、からきし輝くものが感じられなかった。

そんなときに、数学の先生に相談しに行ったのです。その先生も、生徒の間では、賛否両論、否が多め、みたいな先生です。私は、その先生のことは好きでしたけどね。仙人みたいな人でした。社交辞令は全然言わないから、嫌っている人も多かったです。

「先生、僕、自信がないんですよね。」

「自信ねえ。自信て難しいねえ…。」

かなり漠然としていて、聞いているほうもつかみどころがない話題です。

「自信っていうのは難しくてね。」

先生は続けて話してくれました。

「どういうときに自信があって、なくなるのかとか、そういうのって、曖昧だからね。揺れ動くものだから。でも、数学に関しては、試験で点数を取るしかないよ。点数が取れるから自信がつく。数学で自信を持つためには、試験で点数を取らなきゃいけない。数学を得意になるにはどうすればいいですかって聞かれたら、試験で点数をとれるようになりなさい、ということになっちゃうね。」

原因と結果が逆になってしまっている気もするし、そのときはなんとなく、わかったような、わからないような、お茶を濁した感じで終わったと思います。けれど、今になって振り返れば、これは割と的を射ているのかもしれないな、とも思えます。

やってしまう、その先に行ってしまう、それまでは、歯を食いしばって走り続けるしかないのです。途方に暮れて立ち止まることは簡単です。そして、私はそれを否定するつもりもないです。どうしようと考えている時間、もやもやしている時間も、自分を鍛えてくれるものだと信じています。しかし、どこかでまた、歩みを前に進めるしかない。あれやこれやと立ち行かなくくらい頭のなかをぐるぐる回転させたら、諦めて、歩き出しましょう。走り出しましょう。つらいですけどね。ああ、そろそろ動くしかないな、と諦められるまで、うじうじしているものよいと思います。きっと静かにエネルギーはたまっていることでしょう。

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