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「モルトバーに行く前に何を食べるか」問題 銀座・新橋編

「モルトバーに行く前に何を食べるか」問題とは

「人は何のために生きるか」や「To be or Not to be」のような世の中には長年考察が重ねられた様々な深遠な問題があるが、我々にとって非常に重要かつ答えのない永遠の課題がある。

バーに一人飲みに行きたいが、その前に何食べるか、という問題だ。

なぜ悩ましいのか。

一番大きな理由は、美味い酒を飲む前にはそれなりに美味いものを食べないと/食べたいな、という謎のバランス感を満たすのが難しいから。

夜のおひとりさまの食事だと一番簡単な選択肢の一つは牛丼屋だが、例えば390円の牛丼食べた後にハーフショット3000円の半世紀前に蒸留された素敵なウイスキー飲むってどうなの?とよく考える。
(念のためだが牛丼をバカにするつもりはない)

ピカピカのブランドバッグ持っているけど靴はよれよれ、みたいな他人が見てすぐわかるかっこ悪いアンバランス感ではないけれど、自分の中ではなんとなく落ち着かない。他人の目からどう映るかはどうでもいいけれど、自分の中での納得感は非常に重要。食べる物に関してもできるだけ妥協はしたくない。できればB級グルメ的なものでもちゃんと手が掛けられたものが食べたい。

それ以外にも考えなければならない要素は多い。

お腹にたまらないものだけ食べてすぐ飲んだら酔いが回っていろいろ飲めなくなりそう。

時間かけ過ぎたら飲む時間と睡眠時間が削られる。

四川料理やカレーは好きだけど、そんな刺激の強いものを食べてしまうと加水の繊細な味わいのオールドボトルなどが楽しめない。

居酒屋やバーで食べてもいいけれど、おいしいつまみが出てきたらついつい食べ過ぎ飲み過ぎてモルトバーまでたどり着かない。(こいつ何言ってんだバカなんじゃないか、と思ったあなた、おっしゃる通りです)

直近やらかした例は神田のビアバー、デビルクラフト。ピザが有名な店で一度行ってみたいと思っていたのだが、ピザの焼け上がりまで2、30分かかかるというのでビール飲みながら軽くつまみ食べて、このピザ食べてビール追加したら腹いっぱいで戦意喪失。いや美味しいんだけどさ。

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悩みが深すぎてターミナル駅の中に迷い込んだ鳩のように途方に暮れた後で出した結論。
結局のところバーに行く前に何食べるか問題というのポイントは以下の6点に尽きる。

1. B級グルメでもいいがちゃんと手を掛けられているか
2. サーブされるまでに時間がかかり過ぎないか
3. 肝臓の負担を減らすような優しい食べ物か
4. ウイスキー飲むときに味覚に影響しないか
5. そこで食べ過ぎたり飲みすぎたりするリスクがないか
6. バーに行くのに便利か

ということでいつもこの問題に心悩まされてきた筆者が辿り着いた今のところの結論を皆様に共有していただきたい。


日比谷の奇跡  定食「多”る満(だるま)」

日比谷、有楽町、銀座。「ハレ」の香りがするキラキラ度の強い街なので、おひとりさまのおっさんには眩しすぎてアウェー感半端ない。コリドー街で食べ物を求めうろうろしているのを会社の若者に目撃されたりすると邪推されて次の日会社で何言われるか不安で夜も寝られません。

まず聖地有楽町のバーから近いお店、日比谷の奇跡「多”る満(だるま)」から。

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ちゃんと手を掛けられた度 ★★★★★
クイックにサーブされる度 ★★★☆☆
肝臓いたわり度 ★★★★☆(しっかりご飯まで食べられる)
味覚に影響しない度 ★★★★★
そこで酒飲み過ぎない度 ★★★★☆(瓶ビール飲んじゃうけど)
バー便利度 ★★★★★(キャンベル至近)

初めての人がこの扉開けて店入るのは結構痺れるかもしれない。地下鉄丸ノ内線銀座駅徒歩2分でこんな店があるとはだれも想像できない、日比谷の奇跡。1964年創業だそうだ。前回の東京オリンピック、新幹線が開通した年。半世紀以上の歴史。

子供の頃におじいちゃんおばあちゃんの家に行って食べさせてもらったまんまの雰囲気。濃い目の生姜焼きの味付けと黄色いたくあんがタイムスリップ感をさらに強くさせる。ウイスキーでいうとカスクストレングスのスプリングバンク12年的。

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夜9時までこのエリアで1000円で白いご飯とお味噌汁を飲めてバーに向かうことができるという贅沢。こういう店は長く続いてほしい。でもあと5年後になくなっていても全然驚かない。失われる前にぜひ一度行ってみてほしい。

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銀座の良心 とんかつ「とん㐂」

ちゃんと手を掛けられた度 ★★★★★
クイックにサーブされる度 ★★★☆☆
肝臓いたわり度 ★★★★☆(ラードで胃をコーティング)
味覚に影響しない度 ★★★★☆
そこで酒飲み過ぎない度 ★★★★☆(瓶ビール飲んじゃうな)
バー便利度 ★★★★★(ゼニス至近)

銀座のとんかつというと有名どころの筆頭は梅林かもしれないが、ちょっと前までさほど大きくない店にキャリーバッグを持った観光客的な人がたくさん来ていて、食事をしているのに混雑している新幹線の自由席に座っているかのような気ぜわしさで全く落ち着くことができなかった。GINZA SIX裏の井泉も悪くはないが本店の風情を知っているとちょっと物足りないのと目当てのバーから離れる。

とん㐂はインスタグラマーなど決してこなさそうな、近所の商店街にありそうなとんかつ屋。きわめて普通、だけどまっとう。近くのお店で働く人たちの胃袋を長年しっかりと支えている感じがいい。派手さはなくてたくさん売られてとても普通だけど地味に旨い80年代グレンリベット43度のよう。そして夜9時半までやっているというのもバーに行く前にありがたい。銀座の名店ゼニスから至近、というのもポイント高い。


新橋の鉄板「おにやんま」

ちゃんと手を掛けられた度 ★★★★☆(手打ち、出汁も気合入ってる)
クイックにサーブされる度 ★★★★★(めちゃ早い)
肝臓いたわり度 ★★★★☆(出汁飲んだら体に沁みる)
味覚に影響しない度 ★★★★★
そこで酒飲み過ぎない度 ★★★★★(そもそも酒置いてない)
バー便利度 ★★★★☆(クロンダイク至近、キャパドニックにも近い)

立ち食いうどんというと極めつけのB級グルメ以外の何物でもないのだが、この後にハーフショット3千円のウイスキー飲んでも負けるとは思わない。もちもちのうどんは、茹で上げられたばかりの麺の角が半透明に変わっていて美しい。いりこの効いた出汁は不摂生な体にすっと沁みこんでいき、飲んだ後の脱水を防いでくれる。安くて旨いグレンモーレンジオリジナルのよう。

私は金曜日の夜のように少し遅くなってもいい時は、仕事の後おにやんまから60歩ぐらいのサウナ、アスティルに荷物預けて着替えて1時間ほどレインボーブリッジを見ながら東京湾岸をランニングして、ひと風呂浴びてとり天うどん食べて炭水化物、タンパク質と塩分、水分を補給してから新橋のバーに飲みに行くのが好き。

ニュー新橋ビル1階の洋食むさしやと並ぶ、まさに新橋の鉄板スポットです。


新橋一のチャーハン  「中華料理 三陽」

ちゃんと手を掛けられた度 ★★★☆☆
クイックにサーブされる度 ★★★★☆
肝臓いたわり度 ★★★★☆
味覚に影響しない度 ★★★★☆(当然MSGとニンニク入り)
そこで酒飲み過ぎない度 ★★★★☆(餃子にビールは美味いけど)
バー便利度 ★★★★☆(キャパドニック至近)

新橋の駅前から客引きに声を掛けられながら北上し大通りの喧騒から一本入ってわずか20メートルのところにある、昭和の頃どこの街にも普通にあった中華料理屋。ぺらっぺらのテーブル。丸椅子。むしろ若い人にとっては新鮮かもしれない。店の中でスマホ持っている自分の周りだけが令和で場違い感感じるぐらい。

何言ってるかわからないと思う人も多いと思うがこの店構えを見てもらえればわかってもらえるだろう。

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ここのチャーハンは新橋一美味い。チャーハン食べて餃子食べてビール飲んで、くちびるに残ったラードをちょっとなめながらバーに向かうと物凄い背徳感とともに満足感を感じてしまう。ラフロイグOB10年43度のよう。そしてキャパドニックはこの店の一本斜め裏。

わずか4店の紹介で申し訳ないのですがこれがこのエリアでの私のローテーションです。職場の近くで食べる時もありますし。

このエリアは6つのポイントに合致する私の知らないいい店がたくさんあるはずなので、ご存じでしたらコメント残していただくかTwitterにてご教示ください。食いしん坊な筆者が泣いて喜びます。


「いいね」多いようでしたら渋谷・池袋編なども書いてみます。




それでは今回の投げ銭用の小ネタ、某著名老舗バーのバーテンダーをして「自分がこんなことあんまり言っちゃいけないんだけど、ラフロイグはこのボトルあればそれでいいでしょう」と言わしめたボトルを個人輸入してみた、です。どこのショップを使ったのか、実際に税金手数料がいくらかかったかも含め書いています。

「ラフロイグはこのボトルがあればそれでいいのでは」というボトルは個人輸入だと1万1千円で手に入る

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