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【紹介】フィルタについて4

しつこいようだが、小説のモデルの会社について。

あの会社は、私のいままでの常識を見事に覆してくれた。
遅刻をするな、会議に遅れるな、悪い報告から先に、などなど、ビジネスで当然のように言われている常識を持っている人間は非常に少なかった。
「基本動作」という言葉から教えたほうがいいのではないだろうかという人物ばかりで、「ここ会社だよね?」と思うこともしばしば。
会社飲み会の翌日には開発部半数くらいが遅刻して、「マジか?」と思ったことも。
いや、遅刻しようがしまいが、きっちり仕事さえやっときゃいいんですけどね、と発想を変えることにした。

ただし、プログラミングスキルも高く、基本動作もできていて、どこに出しても通用する人間はいた。
いまでも、東京に行ったときには必ず会うK君は、高学歴で技術力もあるスーパープログラマだ。
ちょうど十歳年下なのだが、腰も低く、人の話をいつも真剣に聞き、自分から自慢めいた話は少しもしない。
ただときおり発する言葉に重みがあり、「なるほど」と思うことが多々ある。
その控えめな態度は、東北出身だからなのかと思うくらい。
友人に紹介すると、決まって「K君って、すごく頭のいい人だよね」と言われ、なぜか自分が誇らしくなる。

私がいたときから開発部幹部として部下の面倒見がよかった。
よく若い子たちを連れて飲みに行ったり、メイドカフェに行ったりしていた。
一度「赤星さんも、一緒にメイドカフェに行きますか?」と言われたが、丁重にお断りした。

この間、東京に出張して会ったとき、「いまでも会社の子と飲みに行ってるの?」と聞いたら、
「もう僕の人生も折り返しに差し掛かりましたし、大切な時間なので、飲む相手は選ぶようになりました」と。
深い、深すぎる、十万石饅頭(埼玉ローカル)と思ってしまった。

ちなみに小説中の会社や人物などは、新たに作り出したキャラクターなので、実在の人物とはまったく違う。
細かい特徴や癖などは一部参考にさせてもらったが、作中のような人物はいない。
でもちょっと似てるって人物はいるかもしれない。

メイドカフェについて。
それから約十年が経って、初めてのメイドカフェは、妻と息子と三人で行った。
ビックリするほど可愛い子たちばかりで、息子なんて話しかけられてテレまくっただけでなく、モテない君独特の上目遣いで彼女らを見ていた。
その様子をからかったら、二度と行こうとはしなくなった。
ちょっと寂しい。

小説が面白いと思ったら、スキしてもらえれば嬉しいです。 講談社から「虫とりのうた」、「赤い蟷螂」、「幼虫旅館」が出版されているので、もしよろしければ! (怖い話です)