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「再起へのナインボール」Kindle出版(3)

以来、ますますビリヤードに凝った。

やがてビリヤード場でYさんと会う機会が増え、「おっ、君はたしか」と声をかけてもらえるようになった。
そのうちにYさんにいろいろと教えてもらえるようになった。

センターショットと言って的球を中心において、ヘッドラインからコーナーポケットを狙うショットがある。
一人でいるときは、それを一日に何回でも撞いて練習した。
ときには中心を衝いて手玉をぴたりと止める。
ときには球を上部を衝いて(フォローショット)、的球を入れたあと、手玉も的球と同じポケットに入れる。
ときには球の下部を撞いて(ドローショット)、的球をコーナーポケットに入れたあと、手玉にはバックスピンをかけ、的球とは対角線上の手元のポケットに手玉を入れる。
こんなことを二時間も三時間もやっていた。

寝ている時間、食事の時間以外はほとんど球を撞いているような状態だったので、メキメキ上達した。
だんだん3球続けて落とすことができるようになり、それが5球続けてになった。
初めてますわりしたときには、9番を撞くときに、緊張で腕が震えた。
ボーラードゲームも50点前後から、60点以上になり、やがて100点を超すようになり、150点以上出すようになった。

プロからは、技術だけではなく、勝負に対する考え方もたくさん学んだような気がする。
球巡りが悪いと嘆いたら、
「その球入れたら、あとは楽になるじゃん」
いつもは外さない球を緊張しすぎて外したら、
「皆緊張してる。緊張しまくっても入れられる実力をつけろ」

無口な人だったので、あまり多くを語らなかったが、ここぞというところでアドバイスしてくれた。

(続く)


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