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【雑記】純粋な読者として小説を読む時のことを考えてみた(10)

なお、魅力的というのは「いい人」のことではない。

最悪な性格で、「こいつがボコボコにされるところを読みたい」と思わせるような登場人物がいたとしたら、それは私から見たら、「魅力的な人物」ということになる。
むしろ単なるいい人は、「魅力がない登場人物」と見なしている。

「渡る世間は……」シリーズ。
大した事件は起きていないのに、根強い人気があるのは、やはりキャラクター設定と登場人物の人間関係描写に成功しているのではないかと思うのだ。この方の脚本はそのへんがとてもうまい。
松本清張もそこがとてもうまいと思う。

あらゆるパターンの魅力的な人物を作ることができたら、無敵だ。
この時にはパターン92番目のキャラを主人公にして、サブキャラには19番目と61番目のキャラにするとか。
キャラクタ―を100人作りだせば、その組み合わせで、ほぼ無限に小説が書けるのではないか。

いや、100人ではなく、10人でもどうか?
先頭を主人公、2番目を犯人として、3番目を恋人など、4番目を親友、5番目をその他の主要人物とすると、順列の単純計算で、
10×9×8×7×6=30240通り
約3万通りのミステリが書ける……わけがない。
まあ、発想の転換として、面白いかもしれない。

セリフがキャラクターをくっきりと浮き上がらせるパターンもある。

最近遅ればせながら、アマプラで「逃げ恥」を観たのだが、百合扮する石田ゆり子が、年齢マウンティングをしてきた若い子に
「あなたと同じように(若さに価値を)感じている女性が、この国にはたくさんいる。あなたが価値がないと切り捨てたものは、この先あなたが向かっていく未来。自分がバカにしているものに自分がなる。それって辛いんじゃないかな。そんな恐ろしい呪いからは、さっさと逃げてしまいなさい」
と優しく諭すシーンがある。
この一言で見事に百合の価値観を語っている。
小説でも、登場人物にこういうセリフを言わせたら、成功だろう。

完全に話はそれるが、私は息子のあまりの自己肯定感の高さに、ポジティブモンスター(略してポジモン)という渾名をつけていたのだが、「逃げ恥」でその言葉が出ていたときには、ぶったまげた。
完全に自分の造語だと思っていたのに、すでに他の人が作っていたという。
以前ツイッターで、ポジモンに触れたとき、フォロワーの方が、「ポジモンゲットだぜ」とリプライをくれた。そのときは意味がよくわからなかったのだが、ドラマの中で登場人物が言ってた言葉だったのか。

しかもネットで調べたら、「ポジティブモンスター」という言葉はメジャーだったと知った。
……無知は怖い。

(続く)


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