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第3話 子供は意外なところを覚えている話

あれは確か6歳のこと。
当時私たち家族(父・母・私・妹)は祖父母の家で同居していて、一軒家の2階が私たち家族の住居だった。

その日私は2階にいて、1階から聞こえる怒鳴り合いの声を無視できなかった。
かつて祖父が自ら建築に携わり塗装した戸建ての階段は、立派ながらも箇所によってはギシっと軋む音がして13段あったが、従兄弟に「猿」と呼ばれた身軽な私が無音で通過するのには丁度良い作りであった。
忍足で階段を降り、降りきってすぐ左手にある居間の扉に聞き耳を立てた。

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