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第18話 初めて就いた仕事の話

母の下からすぐに出られるなら、正直何でも良かったのかもしれない。
住み込みができて稼げるならと鳶職でも風俗でも何でもござれな気持ちだった私は、母の再婚相手の助言がなければそういった職に就いていたかもしれない。

面接

父さん(再婚相手)は私に「料理人に向いている」と言った。
私の絵心や手先の器用さを母伝で知ったのか、これ以上はないといった調子で料理人の道を進めてきた。

料理人のイメージ画像


確かに私は幼い頃に「コックさん」という将来の夢を色のついた紙にでも書いたような気がするが、それは例えば「仮面ライダーになりたい」といった次元の話であった。
全くといってもいいほど興味のない世界に飛び込むのは実に怖かったが、かといって父さんの推奨を断れるほどの語れる夢がまだあるわけでもなく、いやなかったわけではないが語るには情報がなさすぎた。
理屈で負けてしまうと分かって、父さんを立ててあげなきゃという謎の気遣いも生まれ、何せ少年院を仮退院したての自分に何をも選ぶ権利などあるわけがないと諦め、私は父さんの勧める通りに職探しを始めることとなった。

ハローワークという雑誌だっただろうか、昨今の求人といえばネットやアプリだが、あの頃はまだ紙媒体の求人誌が当たり前だった。
目当ての条件は「中卒」「寮完備」と、今思えばいくらでも見つかりそうな感じがするが、当時この条件で見つかる職場なんてザラに極悪なものが多かった。
しかし私はツイていた。
1ページ目の1コマ目で見つかったと言っても大袈裟ではないほど、そこはすぐに見つかった。
学歴不問、寮完備即入居可、社保等福利厚生完備、手取り月28万〜と高待遇!
若干15歳の私は(今でも大概だが)世間知らずで、掲載写真の豪華さも相まってすぐに電話した。
年齢を告げると相手は大喜びで、すぐにでも面接をしたいとの事だったので母の助言通りあまり日を置かずに面接へ。

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