日本の銀行と企業が機能不全に至るシステム
にて松田学氏が日本経済のデフレの問題点を指摘しているのですが、私見ではきわめて真を突く内容であるかと思いますので、引用します。
(現在の松田氏の松田プランなるデジタル通貨の案にはあまり興味は有ません)
このような現象がなぜ起こったのでしょう。その流れを考えてみます。
1992年 銀行に自己資本に対して一定量しか貸し出しできない規制を掛ける(BIS規制の国内銀行への適応)
ーー↓以下金融ビッグバン
1998年① 上記規制を守らない銀行を閉鎖するという強力な罰則をつける(早期是正措置)
1998年② 不良債権を定義付け銀行にその処理を強いる
1998年③ 不良債権処理により銀行の自己資本が棄損する
1998年④ 銀行は棄損した自己資本額から逆算される、貸出額が自己資本比率規制による比率を割らないように与信の回収を始める(貸しはがし、貸し渋り)
その後、借金の元金を無理やり回収された企業の業績が悪化。余計に不良債権が増え、それを処理すればするほど銀行の自己資本が棄損されてより多くの与信の回収を必要とするという無限ループに陥り、巨額の信用収縮が発生。
不良債権処理と国内銀行に対するBIS規制の適応、早期是正措置のセットが日本の金融機能を破壊しつくした
この一連の流れで何が起こったかというと、まず企業と銀行の協業関係が壊れます(お互いの信頼関係が保てなくなる)。
銀行もBIS規制によって自己資本比率を棄損する企業向けの貸し出しを忌避し、BIS規制によって計算上無視される国債ばかりを買うようになります。
企業は、銀行という後ろ盾を失い、キャッシュフローの冗長性を失います。生き残りのために、コストカットと、内部留保の拡大に邁進することになります。
企業がコストカットした分、税収が下がり、銀行がいくらでも国債を買ってくれるので政府は税収減を国債発行でファイナンスし始めます。
(このコストカットの成果がデフレです)
つまり金融ビッグバンに伴う、一連の政策セットの失策で日本のその後の経済現象が簡単に説明できてしまうのです。
そして、この政策セットは、G7各国から最も厳しいものをつまみ食いして日本政府が自ら適応したもので、欧州はほとんどやっておらず、グローバルスタンダードですらないという現実も知っておく必要があります。
・BIS規制の厳密な国内銀行への適応(欧米は金融商品で回避)
・不良債権の定義(欧州は無し、米は金融商品で回避)と処理の強制
・早期是正措置(米にしかない)
なぜこんなバカなこと全く金融の構造が違う日本に、最も厳しい形で適応したのか?
これは国民に痛みのみを強いたという点から解明と是正が必要かと思います。
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