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【中小企業向け/知財で損をしないポイント】<vol.2> 屋号のネーミングと商標権

「知財の診断士®」がお届けする、中小企業に知っておいてほしい知財ポイント、第2回目のテーマは、「屋号のネーミングと商標権」です。

ポイント

起業・創業時に「屋号」を決定される際に商標面からの検討を怠ると、後々問題が生じ、思わぬ損害を被る可能性があります。

中小企業の社長さんや個人事業を立ち上げようと考えておられる方だけでなく、創業・起業を支援されている士業の先生方、支援機関の経営相談員、金融機関の融資担当者の方々にもご参考頂ければと思っています。

前回、導入編はこちら

1.昨今の商標事情

私は、昨年度まで特許庁の外郭団体である工業所有権情報・研修館(INPIT)からの委託事業である「知財総合支援窓口」の相談員を務めていましたが、知的財産権(特許・実用新案・意匠・商標等)のうち、一番相談が多いのは「商標」についてでした。多分この傾向は、今も変わっていないと思います。

特許庁が発行している「特許行政年次報告書2020」でも、中小企業の商標出願件数は増加傾向にあり、全体に占める割合も60%を超えているなど、その関心の高さがうかがえます。

つまりこれまでは商標の問題が発生していなくとも、今後発生する可能性が高まっていると言えます。また商標に対する意識が向上していますので、その中で自社のブランド価値を向上させるためには商標を無視できないと考えます。

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出典:「特許庁行政年次報告書2020年度版」(特許庁)を加工して作成

2.相談の現場で起こっていたこと

特許や意匠の出願は主に製造業中心で、”発明”という敷居の高さから敬遠される場合も多いのですが、製造業以外の、例えば飲食業やサービス業であっても屋号や商品名は検討されているはずですので、それに係る商標権はどんな業態であっても関係する、身近な知財権であると言えます。知財総合支援窓口でも、知的財産への関心を持ってもらう”きっかけ”として、まずは商標の出願を検討するようご紹介させて頂いておりました。

商標出願を検討することは非常に重要なのですが、屋号をすでに決定し、HPやカタログ等も作成し、実際に使用していた後で、(思い出したように)商標出願の相談に来られる方が非常に多いです。

「近所には同じ名称の店がないので・・・」、といった安心材料で屋号等を決められる場合も多いのですが、名称によっては商標登録できない場合もありえます。また他人が同一・類似の商標権を持っている場合もあり、そのような場合、最悪使用できなくなることもあります。商品・サービス名であれば、適宜変更することも可能かもしれませんが、屋号となると変更は難しい(変更したくない)場合が多いかと思います。

大事なことは屋号や商品名を検討するネーミングの段階から商標を意識して頂きたいということです。

3.商標登録できるネーミングを検討する

商標制度をご存知の方であれば良くお分かりかと思いますが、その商品・役務に対する普通名称・慣用名称、産地や品質、原材料、効能、用途、形状などを表示する記述定な商標や、ありふれた氏、極めて簡単な商標等は商標登録できません。このような商標は、商標登録できないだけで使用することは問題はないのですが、他人に使われたくない、独占的に使用したいという希望は叶えられません。また他人の屋号と区別する力(識別力)が弱いので、ブランド力の面からは不利になります。

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出典:「2019年度 知的財産権制度説明会(初心者向け)テキスト」(特許庁)を加工して作成

また屋号を検討する場合には、先行する他人の登録商標がないか調査を行ない、他人の登録商標に抵触しない商標であることを確認することが必要です。

屋号を決めてから相談に来られる場合、他人の先行登録商標があり、商標登録できないことは勿論、使用するにもリスクがあることを伝えるしかない場合もあります。場合によっては、商標権侵害で警告を受け、泣く泣く屋号を変更せざるを得ない場合もあり得ますので、その損害は大変大きいことになります。

4.対策

屋号の検討段階から商標的に問題ないことを確認しネーミングを検討することが必要です。商標問題のない名称を選択する必要があるということです。

ただ起業・創業段階では商標に関する知識はお持ちでない場合も多く、また創業の手続きにおいて商標の確認手続きは必要ないため、後回しにされる傾向が強いと思います。そのため起業・創業を支援されている士業の方や経営相談員の方こそ、特にご留意頂きアドバイスして頂きたいと思います。

なお調査時において問題となる他人の商標権が存在しないからといって安心はできません。安心してその商標を使用し続けるためには、自身で商標出願しておくことがポイントとなりますが、その点については次回ご説明します。

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