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スタートアップCOOの3年間でやったこと

私がノインに移ってこの3月で3年が経ちました。わたわた動いていたらあっという間だったというのが実感です。そんなこんなの中で最近、シリーズCの資金調達についてのリリースを出しましたが、一定の区切りがついたのでこの3年で何をやったのか振り返ってみようと思います。

調達した資金で何をやっていくつもりなのかについて私のインタビューも出しました。主に採用をごりっとやって事業を進めたいです。

会社として何をやってきたのかみたいなところはこれまでも発信していますが、No.2のCOOが何をしているのかという点について実はノイン社員でもよく知らない可能性があるので一部社内向けな部分も含めて書いてみようと思います。

ノインに入った経緯について

Gunosyでスタートアップを知る

私は前職は東証一部上場企業のGunosyで執行役員をしていました。Gunosyに入る前は新卒で電通に勤めていました。私のGunosyでの社員番号は24番と割と早いタイミングのメンバーです。人数は急拡大していたタイミングなので私の入社より前の半年でも10名くらい入社していますし、私の入社後の半年ではそれ以上入社しています。スタートアップの方なら理解できると思いますが、制度や風土などはGunosyも例に漏れずめちゃくちゃでした。それでも事業は爆発的に成長していて楽しかったです。

私が入ったタイミングは一発目のTVCMを実施するタイミングです。現会長の木村さんはサークルの先輩(初代が木村さんの代で私は6代目の代表)で、後輩が電通にいるっぽいということで呼んでもらったのがきっかけです。

木村さんと席を並べて(正確には隣の隣)いたのは1年にも満たない間でしたが、強烈な印象が残っています。今日(2022年3月)時点で私の年齢は37歳。木村さんがGunosyを上場前に一時離れたときとほぼ同じです。詳細は書きませんが、今37歳の私が彼の立場だったとして、あの判断ができたかというと多分無理です。木村さん本人に言ったことはないですが、木村さんの意思決定を間近で見ていたことはスタートアップ経営に参画したいと思うようになったきっかけでもあります。

Gunosyの爆発的スピード上場

「千葉くんのキャリア的にも(おれが)絶対プラスにするから来なよ」

実はこれが私が入社を決めた一言でした。たぶん本人はあまり意識していないと思いますが、自分で未来を変えてやるという強い信念というか意思みたいなものを強烈に感じたのを覚えています。

Gunosyについて、「思い切ったマーケティング投下がうまくいったので上場できた」というのが外からの見方だと思いますが、実際は違います。未熟な状態のプロダクトをむちゃくちゃなスピードで改善を重ねながら素晴らしいプロダクトに変え、大失敗しかけたマーケティングを無理矢理うまくいかせて上場したというのが正しいと私は理解しています。プロダクトもマーケも不十分な状態をみんなで無理矢理うまくいかせたという感覚です。

事業がうまくいくかどうかは人で決まる

事業について強く思うのですが、事業がうまくいくかどうかは何をやるかよりも誰がやるかのほうが大きいと思います。いい事業領域を選択したとしても人がクソなら絶対にうまくいきません。逆にイマイチな領域だったとしてもいい人を集めて必死にやれば割とうまくいきます。

Gunosyは事業領域や参入タイミングも良かったと思いますが、一番良かったのは間違いなく一緒に働けたメンバーです。これを知れたことが本当に良かったと思います。

ノインに入ってやったこと

さて本題のノインに入ってやったことです。3年で大した成果もまだ出せていませんが、思い返すと色々やったなと思います。やったことを粒度を無視して列挙すると以下のような感じです。

  • 資金調達

  • 投資家とのリレーション

  • CM実施

  • 事業提携案(アライアンス)の立案と実行

  • プロダクト方針の策定

  • 事業方針の策定(事業計画策定と定性目標の策定、コストカット)

  • 採用(CxOレイヤーからメンバーレベルまで全ての面接に今も出てます)

  • 広報(今でも広報専任はいないのでけっこう私がリリース書いたり戦略決めたり)

  • 社内勉強会の企画(教育)

  • 評価制度改革

  • SO制度の設計

  • オフィスの引越しPJ(3回もw)

  • 化粧品についての勉強

  • 組織の作り直し(組織図の作り直し)

  • プロモーション、マーケティング活動全般

などなどです。

一番リソースを割いたのは資金調達まわり

スタートアップはリソースが足りない中で戦わなければなりません。ビジネスにおいて重要はヒト・モノ・カネの全てが足りない状態です。当社においては資金調達を行う(カネを集める)人材(ヒト)も足りていませんでした。

資金調達はシリーズが進むにつれて、話す人達(投資家の質)が変わっていきます。シードやアーリーステージが中心の投資家とミドル、レイターステージ中心の投資家では考えていることや事業に対する視点が全く違います。

事業が未完成の状態で、創業メンバーや事業領域等から事業成長の可能性を見極める必要があるのがアーリーステージの投資家で、事業がある程度固まってきてから数字を含めた成長戦略を緻密に叩きながら見極めていくというのがミドル、レイター以降の投資家という感じでしょうか。また、フィナンシャルリターンを求めるVCのような投資家と事業会社ではバリュエーションに対する考え方も違うし、事業説明や成長戦略説明で刺さるポイントも全く変わります。

私が入社したタイミング(2019年3月)はシリーズBの資金調達で投資家を回り始めた始めたタイミングでした。当初は資金調達、ファイナンスはまったくのド素人で何もわからないので社内のことだけやっていましたが、途中から事業は渡部に任せて私が資金集めに回ったほうがいいのではとなり、徐々に資金調達や株主とのやり取りは私の仕事になっていきました。

「私の仕事」とは言っても所詮ド素人です。投資家が言ってることは半分くらい言葉が分からないし、何を話したらいいのかもよくわからない状態からのスタートでかなり苦労しました。財務周りの担当を採用したり、既存の投資家や友人のCFOに聞いたりしながら勉強しました。ここで辛いのは時間は待ってくれないことです。私が知らないということはファイナンスを先延ばしにしていい理由にはなりません。そんなことしてたら会社が潰れます。

本当に会社が潰れると覚悟したこともあるし辛いタイミングもありました。調子いいこと言っていた人が突然違うこと言い始めたり(あたかも人格者みたいなことを言っていた投資家が利害が自分に絡んだ瞬間に正反対の意見になった)、決まってた条件を突然ひっくり返されたり、資金調達ピッチの途中で投資家に寝られたり色々です。個人的には不義理されたことは許すつもりはないし、絶対にやり返すまで死なないから身に覚えのあるやつ震えて待っとけよ。

ともあれ、今回発表した通り、何とか事業に集中できるだけの金額を集める事ができました。投資家として参画してくれた皆様本当にありがとうございます。必ず結果でお返ししたいと思います。

社内フローや制度を整える

私のこれまでのキャリアはゴリゴリに事業側です。Gunosyではマーケティングの責任者や外部アライアンスの責任者、運用型広告の売上責任者などをやってきました。マーケティングやプロモーションなどが一応一番強いところのはずですが、ノインではむしろそこ以外のことばっかりやってます。

私が入社するまで、役員は社長しかないなかったこともあって承認フローみたいなものはなかったし、組織図すらなく誰がどこを担当するのかも割とノリで決まっている状態でした(人数が少ないとこれがスピード感の源だったりもするのですが)。

ここは難しいところで、どこまでしっかりフローや制度を整えるかの線引きは非常に重要です。個人的にはどこまでテキトーのギリギリを攻められるかというのがベンチャーでは重要だと思います。しっかりやろうとすれば際限はないのですが、事業も組織も固まっていない状況でかっちりここだけ固めてしまうのは事業推進を阻害する要因ともなるため、設計は必要最低限として必要になった時点でアップデートを重ねるというやり方を当社は取っています。何よりも事業成長が大事という考えが根底にあります。

ただこのやり方はテキトーなものを処理せざるを得ないバックオフィスには負担がかかるやり方です。事業側にもバックオフィス側にもなぜテキトーにしているのか、それにより誰が恩恵を受け、誰に負荷をかけているのかは理解させ、互いのリスペクトを醸成しておく必要があります。

給与制度設計

主に土屋中心でしたが実態に沿っていなかった給与制度の設計を見直しました。これから会社が成長していくにあたり必要な仕組みです。

当社で働くことの意味、会社の考え方等をどう社内に示すかということをできる限り公平性を持った制度で表現しようと考えました。ただ、まだまだ検討しないといけないことは多いです。このあたり考え方含めて他の会社にも話を聞きたいです。

SO(ストックオプション)設計

土屋の記事がバズりましたがここの設計もやりました。実際に揉めた点や自身の経験も盛り込めてけっこういいものが作れたかなと思います。

ストックオプションについては日本ではもらったことがある人もまだ少ないし、ちゃんと現金化できた経験がある人となると更に限定的で、仕組みをちゃんと理解している人は少ないです。また、仕組みを理解している人も実際に現金化して突然お金が入るとどのような気持ちになるのかとか、どのような歪みが生じるのかといった点になると途端に現実感がなく分からないものです。

今回SOを自分で設計してみてわかったのですがめちゃくちゃ自由度が高く、かなり意思や思いを組み込んだ設計にできて面白かったです。思考実験としてかなりいい材料だと思います。

結果として、「現在在籍する部長~執行役員クラスは、500億円前後の時価総額でのIPOができた場合」そのリターンは1億円を超える可能性があるような形になりました。個人的に注目いただきたいのはマネージャークラス(同グレードの管理職ではないスペシャリストも対象)です。図を見ればお分かりのとおり、なんと想定リターンは「2,000万円~4,000万円」ということになっています。

スタートアップ「NOIN」が自社のストックオプション(信託型SO)の制度とその設計プロセスを完全公開します

toC領域でのIPOは比較的バリュエーションは大きくなりやすく、当社に賭けてくれたメンバーにはしっかりリターンを出すべきだと思い、フェアネスをかなり意識しながら設計したつもりです。また、ここについて当社の考えるSOの仕組みについて近日新しいnoteを書こうと思っています。

事業計画策定

これはGunosyでもバカほどやったので慣れていましたが、めちゃくちゃ色々なパターンで計画を組みました。特に当社の場合は事業を化粧品領域に絞ってはいるものの戦略上、事業に幅を持たせて展開しているため事業が多く、必然的に計画は複雑になります。

各事業において主要KPIをどこに設定すべきか、事業の肝はどこなのか、何はテキトーでよくて何はきっちりやらないといけないのかといった事業を理解するには事業計画を引いて失敗することが一番の近道です。

事業計画の作り方も機会があれば私のやり方を解説してみようと思います。

Excelを眺めて、「これじゃ足りないからココだけちょっといじるわ〜」と軽いノリでキモとなる数字を20倍にされて震えたことがありますが、結局達成できたという経験があります。もちろん達成までは大変でしたが、この目標設定だとこれまでのやり方の改善の先に達成はないため、根本的にやり方を変えた発明が必要になります。

無茶な目標を押し付けろということではなく、事業の要諦を掴んで最大限無理できるギリギリを見つけろということです。全部積み上げで施策を作ったってせいぜい10%成長です。昨対◯%みたいな思考は捨てて発明を探す。そのためにも事業KPIの要諦を掴むというのがスタートアップにおける事業計画策定のキモではないかと思います。

事業提携案(アライアンス)の立案と実行

事業のフェーズが進んできたことと、化粧品カテゴリにおけるスタートアップの注目度の両方から事業提携の話は様々な企業から持ち込まれますし、我々から持ちかけてもかなりの確率で話を聞いてもらえます。これは転職して一番驚いたことかも知れません。化粧品領域の可能性を強く感じるきっかけにもなりました。株主となってくれている伊藤忠商事も先方からどうしても話がしたいというオファーをいただき、結果出資にまで至りました。

ちなみに大企業との提携をまとめるのはコツがいります。相手の会社のどこにどのような話をどういうタイミングで持ち込むのかが一番重要。正しいことを言うだけじゃまとまりません。事業提携のコツについては過去のnoteをどうぞ。

実際私がこの3年間でまとめた(実行にまで至った)事業提携は伊藤忠商事、大丸松坂屋百貨店、スギ薬局、KDDI、博報堂、セゾンカード、マルイ、マイナビ、新日本製薬などなどです。小さいものも数えるともっとあると思います。

化粧品についての勉強

事業を理解ができようと、ユーザー理解ができていないのはヤバいので化粧品の勉強も色々しました。化粧品検定1級も合格しました。

採用

事業は人が重要ということもあり、今でも私は採用面接に全部出ています。かなり多くの方にお会いしてリファラルも頑張ってます。

その他もろもろ

他にもCMやったり、売上伸ばす施策組んだりもやりました。面接に来てくれる方の8割くらいはちゃんとnoteを読んで来てくれるのでとても説明が楽ですw

また、プライベートでは仕事に1ミリも関係ない本の執筆を格闘家としたり、家の近くのサウナのリブランディングをしたり、週9でサウナ行ったり、週5でジムで筋トレしたりしてます。

要はなんでもやる

パッと思いつくものだけでもけっこうありました。COOの役割は私は「なんでも屋」だと思っています。CEOがやりたくないこと、できないことを全部やるのが私の役割です。

なんのためなのか分からないけどVCに頼まれたらYouTubeにも出演します。

COOとしての仕事のスタンス

渡部と私でけっこういいバランスだなと思っているのが、彼には強烈に実現したい未来がありますが、私にはまったくないところです。仮に私にどうしてもやりたいことがあったら渡部とぶつかって喧嘩になっちゃうと思います。

事業を伸ばしたい、組織を大きくしたい、社員が満足できる未来を作りたいといった思いはありますが、「絶対にこういう未来を作るんだ」というところは私には特にないんです。まぁこれが次のキャリアを考えるときに起業を選択しなかった一番大きな理由でもありますが。強烈な思いがある人をサポートしたいというのが現状の私の仕事におけるスタンスです。

採用もしてます

ということで私だけじゃ回らないし、やりたいこともいっぱいあるので採用を強化しています。そもそも今回の資金調達は採用のためというのが大きいです。

以下に募集中のポジション一覧を貼っておきます。お気軽にご応募ください。

サポートいただいた場合とくに収入とするよりは書籍購入やセミナー参加等してその内容をまとめるなどの方法で還元予定です。