見出し画像

「過去のことから現在のことを考える」-日本・イスラエル・パレスチナ学生会議インタビュー

概要:

日本・イスラエル・パレスチナ学生会議
2003年に国際基督教大学をはじめとする学生達によって発足、今年度で19年目になる。イスラエル・パレスチナ問題において、現地では困難な相互の対話の機会を創出することを目的としていて、毎年夏には合宿等を行い議論を交えている。


インタビューをお受けいただいた方:
井口利奈(いのくちりな)さん
東京外国語大学 国際社会学部3年
副代表・財務担当

村瀬ひかる(むらせひかる)さん
南山大学 国際教養学部1年
オーガナイザー

秋吉里保(あきよしりほ)さん
東京女子大学 現代教養学部人文学科歴史文化専攻1年
オーガナイザー


インタビュアー・編集:
尾本将太(Shakr Inc.)

b17期盆踊り (3)


本文:

イスラエルの建国をイスラエルとパレスチナの紛争開始と捉えると、その紛争が始まって今年で74年目になる。そんな現状の中でイスラエル・パレスチナの間では人的交流が少ない。にもかかわらず政治であったり教育であったり、またはメディアであったり、様々な分野を通して憎しみや不信感の再生産が行われているということを一番の問題と捉えており、そういう当事者間の交流の不足が問題解決を妨げていると考えている。

そういった状況を背景に、第三国とも言える日本で両者が出会い、お互いを知る機会を作り出す。すなわち日本において両地域の学生の交流の場を設け、対話の場の創出を図る、それが日本・イスラエル・パレスチナ学生会議の1つ目の活動目的だ。

また日本の中で日本人として生活している状況で、この問題に無関係と言ってしまってよいのかという問題意識から、2つ目の活動目的として日本社会におけるイスラエル・パレスチナ問題への関心喚起を掲げている。

日本・イスラエル・パレスチナ学生会議は2003年に国際基督教大学の学生等によって発足、今年度で19年目になる。現状では毎年外務省やJICAから後援を受けた事業も行っている。



ー普段はどのような活動をしているんですか?

井口さん)
活動内容としましては、まず1番はイスラエルやパレスチナの学生たちと対話の場を設けるという、夏の合同学生会議の運営をメインの活動としています。
また現在なんかはイスラエル・パレスチナ人とオンラインで月1でミーティングをして、オンラインの中でも何かできることを探そうということで交流イベントなんかを行っています。

さらに日本における関心喚起を図るイベントとして、今年も8月に2回開催する予定ではあるんですけど、日本の市民向けにパレスチナ問題を分かりやすく解説できるような勉強会を開催する予定です。

今は弊団体の活動は全てオンラインになっていまして、毎週日曜日の朝10時半から13時くらいまで活動していてます。

今年度の事業はコロナの影響もあって、合同学生会議は来年2022年の3月に実施する予定なんですけど、その会議に向けたミーティングを行っています。
他にもミーティングの場を設けていろんな準備について話し合っており、その中では先ほど言ったような、日本人向けの勉強会の話だったり、月1で開催しているイスラエル、パレスチナ人とのミーティングの話もしています。



ー団体内でのみなさんの役割はなんですか?

井口さん)
私は入って3年目になるので、まとめる側というか、色々な事務作業とかを手広くやっているという感じです。
今回来てくれた2人は4月に入ったばかりのフレッシュな1年生なんですけど、1年生の方々にも今ちょうど夏の勉強会に向けて準備をしてもらっているところです。

勉強会は、日本のニュース上では衝突という言い方をされている、今年の5月に起こったイスラエルとパレスチナの問題を大きなテーマとしています。

1年生にはそのニュースを取り上げて、その背景にある問題だったりとか、メディアのあり方をどう捉えるかみたいな話を勉強会で企画してもらっています。


秋吉さん)
(夏の勉強会の準備は)1年生5人で役割分担をしているので、全員でする作業もあるんですけど個人でする作業も多いです。

私個人としてはまずメディアのあり方というのを今回テーマに取り上げて一般の方々にお話しようと思っていまして、ちょっと今そこをどうするか迷っています。

メディアってすごく大事じゃないですか。
今イスラエル・パレスチナ問題に関して、日本で報道されている中でもどうしてもイスラエル側に偏っているなと思うところだったりもあります。

そういう所を取り上げるのもいいなって思ったんですけれど、最近はやっぱりイスラエル・パレスチナ問題に関して関心が低くなっています。
そうやってこのままどんどん関心が下がっていってしまうと、例えばパレスチナが大きな空爆とかをされるとメディアは取り上げますが、大きな事件がなくなるとメディアは取り上げなくなります。
でもイスラエル政府は1日に3人だったりとか、少数単位で殺害といいますか、人を殺していくことがあるんですね。
その結果1ヶ月で殺された人って考えた時に、1回で空爆された人の人数と大して変わらないっていう現象も起こっています。

そういう話をした上で聞いた人がメディアに対してどういうあり方が必要なのかって考えてもらうのも良いかなって今考えています。



ー普段はどのようにメンバーを募集しているんですか?入ったきっかけなどは?

井口さん)
メンバー募集は大体SNSが中心になっています。
2人はどうやって来てくれたんでしたっけ?


村瀬さん)
私はウェブサイトを調べて来ましたね。

私は元々パレスチナ問題にちょっと興味があって、高3から1人で勉強していたんですけど、やっぱり1人で勉強すると分からない事が出てきたり、意見が偏っちゃうかなと思いました。
それで間違っているものを正すためというか、色々な人の意見を聞いて取り入れる為に集団に入った方が良いなと思って入りましたね。

秋吉さん)
私は図書館の市民団体のブースで見つけました。

私は4月までイスラエル・パレスチナ問題に関してそこまで知らなくて、高校とかの世界史で習うところまでしか知らなかったです。
大学入学してしばらくしてから参加したプログラムで、佐藤慧さんというフリージャーナリストの方のお話を伺う機会があったんですけど、そこでイスラエル・パレスチナ問題についての話を聞いて、もっとこの問題について知りたいと思って、図書館に行ったんですね。

その時に市民団体ブースをうろうろしていたらロッカーを見つけて、そのロッカーが日本・イスラエル・パレスチナ学生会議の専用ロッカーだったんですよ。
それを見て、「これは今私が知りたいことだ」と思ったので、図書館に置いてある各市民団体が何をしているかをまとめた冊子を見てTwitterからダイレクトメッセージを送りまして、入ることになりました。

スクリーンショット 2021-09-27 20.53.56


ー運営していく上で大変だったことや、やっていてよかったことは?

井口さん)
大変なのはやっぱり、みんな普通に大学の勉強があって、それにプラスで色々やっているので、結構時期によっては運営側も人が集まらない時期だったり、仕事の配分だったりとかは大変だなと思います。

どう捉えるかは人によると思うんですけど、扱っている問題がちょっとセンシティブとも言える問題なので、イスラエル人だったりパレスチナ人だったり、現地の人と交流する時に、自分を日本人という立場に押し込めてしまうのも良くないのかもしれないんですけど、私は日本人としてどういう立場でいればいいんだろうと思うことがあります。

パレスチナ問題というものに向き合うことの重大さというか、問題の大きさというものは大変だなと思いますね。
でもすごく学問的には面白い分野でもあり、それになかなか中東とかに興味ある学生というのも、増えてきたとはいってもまだまだ少ないので、そういう「興味範囲が一緒の同世代たちと語り合う」じゃないですけど、色々な事を話し合えるのは面白いなと思います。


ー日本・イスラエル・パレスチナ学生会議のコミュニティとしての魅力や特徴はどんなところですか?

井口さん)
私が言うより、入ったばっかりだけど、今思っていることとしてどんな風に思っているのかなというのを聞いてみたいなって思います


村瀬さん)
やっぱり、ちょっと変わっている人多くないですか。(笑)

さっき言ってくれたみたいに、メディアでたまにしか報道されないのを切り取って調べようってなる人がいるという意味では、面白い人が集まってるなって思います(笑)
だからこそ勉強になることが多いんですけど。

現在進行形の問題なので、ニュースが入ってきたら、LINEグループでこんなことが起きたよ、みたいな感じで意見交換が突然始まったりするので、そこがグループの良いところというか、すごく面白いと思います。


秋吉さん)
私もひかるさんと同じで、やっぱり面白い人が集まってるんだなって入ってからすごく思いました。

やっぱり大学も全然違いますし、今まで自分と同じ問題意識を持っている人が集まったコミュニティというものに入ったことがなかったので、いま活動していて違う意見とか、色々な意見も取り入れられますし、楽しいなって思います。


井口さん)
私も本当に同意見ですね。

日本・イスラエル・パレスチナ学生会議と銘打っているので、私もそうでパレスチナ問題に興味を持って皆さん入ってくるんです。
でもパレスチナ問題って突き詰めて考えていくと、本当に色々な問題に繋がるような問題で、それこそいわゆるポストコロニアリズムを考える際にすごく代表的な問題ともなる訳です。

パレスチナ問題を通して日本の問題を考える、日本の中の植民地主義を考えるだったり、そういう試みとかも団体内の勉強会の中でやらせてもらったりしています。

そういう時に、みんなパレスチナ問題だけじゃなくて、日本の問題だったり他の国際社会の問題だったりに話が移っても議論についてきてくれるというか、色んな意見を交わさせてくれるのですごくありがたい場所だなと思っています。


ーコロナ以前とそれ以降で変わった部分は?

井口さん)
学生会議が毎年対面でやる、というのをすごく大事にはしているんです。

心理的安全性を確保するだったり、より仲を深めるとか、そういう観点から対面で学生会議を行うということをすごく大事にはしているんですけど、コロナになってそれがすごく難しくなってしまったというのが1番変化したことだと思います。

まあオンラインでやることで、より色んな地域からオーガナイザーが増えたという利点ももちろんあるんですけど、やっぱり対面で学生会議をやる、という観点からはすごく大変な状況になってしまったなという感じです。


ーこれから日本・イスラエル・パレスチナ学生会議でどういうことをしていきたいですか?

村瀬さん)
個人としてはイスラエルの人と繋がれるとは思うんですけど、やっぱりこの団体は対話を大事にしているので、集団で集まってこの時間にこの議論をしようって集まってくるのは必要だと思います。
それを実際に活動としてやりたいと思っています。


秋吉さん)
私は大学で歴史文化を専攻してます。
というのも、歴史や過去のことから始まった問題が結構現代多いじゃないですか。
イスラエル・パレスチナ問題もやっぱり昔の事柄から始まっていますし、中国だったりとか民族問題もかなり昔のことからこんがらがってきている問題が多いので、過去のことから現在のことを考えるということを1番にして、今も日本・イスラエル・パレスチナ学生会議の中で活動しています。
なので歴史的な観点から見たいなってすごく思っています。

またもう1つ歴史に関係した話で、イスラエルとパレスチナの双方の国で、歴史をどのように学んでいるのかというのに今興味があって、双方の国で学んでいることを知った上で、比較とかをしてみたいなと思っています。


井口さん)
本当にこれ個人的な野望なんですけど、是非この団体で学んだことを活かして、日本の若者向けというか、高校生、大学生向けくらいで、何かワークショップみたいなものをやりたいなというのをずっと思っています。
ずっと言っているんですけど忙しいこともあって実現できていないというところがあって。

もっと日本の、特に自分と同世代の方々に向けて、パレスチナ問題からもっと色々なことが考えられるんだよ、ということを提示していきたいなとは思っています。


ー卒業後はどのように団体や、取り組んでいる問題に関わっていきたいですか?

井口さん)
色々考えるところではあるんですけど、あまり仕事として、ダイレクトにパレスチナ問題に関わるというのは多分新卒の段階ではやらないと思うんですよ。

長期的に見ればどこかでは関わりたいと思っていますし、そうなったらまた、すごく嫌な先輩かもしれないんですけど、つてを辿ってこの学生会議にまた戻ってくるかもなというところもありますね。(笑)


ー今後どのような人に日本・イスラエル・パレスチナ学生会議に入ってきてほしいですか?

村瀬さん)
前会議でも出たんですけど、理系の方があまり居ないんです。
水問題も実は関わっているんですけど、そういう理系的なことって大事なんですけど、数字で考えられる方が来たらもっと広がるんじゃないかなと思いますね。


秋吉さん)
イスラエル・パレスチナ問題って本当に意見が偏りやすい問題だと個人的に思っています。

見ているとイスラエルの人とパレスチナの人は自分が正しいと思っている訳ですよね。
正しいと正しいの戦いになっているという話も前に参加したプログラムで聞いたので、イスラエル・パレスチナ問題に興味を持っていて、なおかつどちらにも偏らずに問題を見られる人、そういうことをしたいなって思っている人が来るのが良いんじゃないかなって個人的には思っていますね。

世界の問題じゃなくても良いんですけど、個人間でも対立なんていくらでもあるじゃないですか。
なので「私、すごく平等なんです」みたいな感じじゃなくて、こういう広い視野で色々な問題を見たいとか、世界の問題を考えたいとか、そういうところで広い視野を培いたいと思っている人が入ったら、お互いいい刺激になるんじゃないかなと思います。

17期ながの村


ーこれから入ってくる方へのメッセージをお願いします。

村瀬さん)
変な人が来たらいいなと思います。(笑)

パレスチナ問題はさっきも言ってくれたように、なんにでも繋がっているというか、なので「これ、こうなるんじゃない?」みたいにどんどん掘り進めたい、みたいな変な人がいたらうってつけなんじゃないかなって思います。


秋吉さん)
今のひかるさんの話を聞いていると、私も変な人に来てほしいですかね。

さっきもひかるさんも話をされてたんですけど、色んな大学、色んな学科とか学部の人だと、それだけで結構気づかなかった意見を言う人もいるので、あまり文系とかで線を引かずに来てほしいなって思います。


井口さん)
パレスチナ問題を全然知らなかったり、そもそも興味もそんなに無いって人にとって、日本・イスラエル・パレスチナという風に銘打っているから入りにくいとは思うんですけど、色々な問題をテーマにしてもらって、みんなで意見交換できるので、全然中東知らないとか、パレスチナ問題全然関わり無いという人でも、気軽に見に来てほしいなって思います。


◯リンク

ホームページ: https://jips.amebaownd.com/
Twitter: @JIPSC_since2003
Facebook: @JIPSC
Instagram: @JIPSC

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?