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住んでから,どうにかする。 【地方空き家サバイバル】

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ある30代男性は,ひとりで地方に移住することにした。 住む家は築50年くらいで,窓ガラスは割れ,カギもしまらない。 知り合いがいるわけでもなく,お金もなく,仕事もない。 さらには…
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2022年5月の記事一覧

地方移住を決断するまで

5年間,働いた会社を辞めたのは,虚無感に耐えれなかったからだ。この仕事に何の意味があるのか,誰の何に役立っているのか,そんな疑問を感じながら働くことは虚しかった。 仕事を辞め実家に戻った。早朝にスーパーで品出しのパートをし,午後は読書という生活を送った。コロナ禍の影響もあり,こんな生活を2年半も続けていた。品出しの仕事は,達成感や誰かの役にたっている実感があり楽しかった。どうやら,私にとっての報酬は,お金ではなく,達成感や有能感といった感情なんだと気づいた。 では,達成感

時の試練に新聞紙で挑む 【地方空き家サバイバル,8日目,2022/5/30(月)】

古い家は,時の試練のもと,設計や施工に対する解答を示してくれている。私の家は築50年くらい。窓はすべて木組みでつくられている。各部屋ごとに微妙に構造が異なっているのだが,どうやら西側の窓は脆弱な構造らしい。この部分だけ,窓がズレたり,ワレたりしている。 今日はついに,この割れた窓の修理に手をつけた。観察してみると,窓枠の木はまだ使えそうで,ガラスも交換できるようになっているようだ。はめ込むガラスを手配できれば,今週中には修理が完了しそうだ。「窓が割れた家に住んでいます」と言

掃除という写経 【地方空き家サバイバル,7日目,2022/5/29(日)】

家の至るところを掃除して気づいた。この家,すごい面白い。50年くらい前の木造住宅で,けっこう広い。そして,不思議なつくりである。平地から土を盛って建てられている。そのため,2階建てなのだが,1階より下の平地と同じくらいの高さにもう一部屋ある。この部屋で祖母が店を出していたらしい。この面白い家を建てたのはキュウザエモンさんという,ご近所の大工さんだそうだ。すごい腕の良い大工だったそうだ。この家を見れば納得である。この家を作るのは,さぞ面白かっただろう。ただ掃除しているだけの私で

マヌケは発明の母 【地方空き家サバイバル,6日目,2022/5/28(土)】

私はけっこう,ヌケている。今日も,苗を作るために,ポットに土を入れ,種をまき,水をあげようとしたら,ジョウロがないことに気づいた。ホームセンターには毎日通っているのだし,どこかで気づけなかったものか。しょうがないので,食品トレーに箸で穴をあけ,そこに鍋で水を注いでみたら,なんとかジョウロ的に機能した。 「必要は発明の母」というが,私のヌケている性質は,様々な必要と発明を生んでくれるようだ。なんてね。まったく,世話がやける。 そんな私の,発明生活(?)6日目を記す。 やっ

朝日とヘビと挨拶と畑 【地方空き家サバイバル,5日目,2022/5/27(金)】

5時半,朝日とともに起床。念願の朝日だ。これまで3年間,あまり浴びれなかった朝日だ。スーパーで早朝品出しのパートをしていたため,日の出前に起きて出勤する日々を送っていたのだ。 お気に入りのランニングコースを走っている途中,ヘビと遭遇した。思ったよりも速く移動することに驚いた。ウネウネした動きもカッコいいと思った。 家の前に戻ってくると,犬の散歩をしている人に挨拶された。この地域は,挨拶する文化があるようで,出歩いているとよく挨拶される。 こんな,ささいな発見や感動を噛み

ツルツルからザラザラへ 【地方空き家サバイバル,4日目,2022/5/26(木)】

ヒトは環境の影響を強く受けるという。例えば,旅行や登山などで,いつもと違う環境にいくと,いつもと違う思考や行動が出てくる。だから,私は旅行や登山が好きだ。しかし,今回の移住はちょっと不安だった。環境ががらりと変わり,これまでの自分がいなくなるんじゃないか。そんな,不安だ。 不安は杞憂だった。いまのところ,これまでの自分はいなくなっていない。と思う。地方といっても日本。スーパーに行けば,見慣れた食材が並んでいる。家がボロく汚くなっただけだった。 ただ,意識は変わった。なんか

手洗いと鍬(くわ) 【地方空き家サバイバル,3日目,2022/5/25(水)】

今日も日課である,朝のランニングから始まった。昨日は山のほうへ行ったので,今日は川のほうへ行ってみた。朝5時の静かな川沿い。そこで,400mを全力疾走する30代男性。一人静かに歩いていた,おばあちゃん。ごめん,静かな時間を邪魔して。広々とした川沿いを走るのは,とても気持ちよかった。 ランニングのあと,家の近くに借りられそうな畑がないか,物色した。川沿いに耕作放棄地があったが,まわりが田んぼだったので,畑作には向かなそう。一方で,家の近くに,良さそうな畑を発見した。ここは誰の

フジツネの精神 【地方空き家サバイバル,2日目,2022/5/24(火)】

『となりのトトロ』のパパになった気分で,家の状態を確認し,虫の洗礼を受けた初日。荷物も届き,近隣住民にも歓迎され,安心して熟睡できた。 昨日挨拶した近所のおじさんが気にかけてくれて,色々と話をした。おじさんの本業は塗装職人っぽいが,日本の各地で多種多様な仕事をしており何者なのかつかめていない。こんな面白い実践家になりたいと思った。 そんな私の実践生活2日目を記す。 今日やったこと今日やったことは,以下のとおり。 ・道具の調達 ・庭の開墾作業 ・祖父母の遺品整理 今回

悲しさと大事さの一歩目 【地方空き家サバイバル,1日目,2022/5/23(月)】

今日から,島根での生活が始まる。 移住の計画を立てているときは,ワクワクしていたが,慣れ親しんだ実家を出るのは悲しかった。それだけ,大事だったといことか。島根の家も,そんな大事な空間になっていくのか。一歩目である,1日目の記録を記す。 今日やったこと今日やったことは,以下のとおり。 ・神奈川から島根への移動 ・市役所で,転入の手続き ・図書館で,使用開始手続きと本を借りる ・税務署で,開業届けの提出(ライターとした) ・家の状態の把握 ・荷物の受取と荷解き ・ご近所への挨拶