読書のエッセンスと、秘密の美術館
過去に読んだ本の「エッセンス」とでも呼ぶべきものが、頭に浮かぶことがある。本のタイトルを読み上げたときに、ただその情景だけが、あるいはその概念だけが、静止画のように浮かぶのだ。
例えば、フランクル『死と愛』を考えるとき、著者が唱えた「三つの価値」、その中でも「態度価値」が、強く浮かんでくる。それ以外の話はあまり思い出せない。しかし「態度価値」については事あるごとに考えを巡らす。
また例えば、志賀直哉『暗夜行路』で主人公が自身の子を失うシーンが、ガルシア=マルケス『エレンデ