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キャッシュレス化と日本

近頃、日本でキャッシュレス決済を推進する動きが活発になっている。海外ではむしろ、”近頃”の話でもないだろう。

中国や韓国ではキャッシュレス化が驚くほど普及しているし、欧州ではこのご時世もあってその勢いがいっそう激しくなっているという。

日本のキャッシュレス決済比率は、2016年より徐々に上昇傾向ではあるが、中国や韓国の80%超の数値と比べてまだ20%程度と低い水準だ。アメリカやカナダ、フランスといった国よりも低い。(経済産業省 2016年 PDF参照

QRコードや「○○ペイ」という名の付くキャッシュレス決済方法は、国内でも様々な場所で広がっている。先日、フォロワーで現役大学生のとうふ納豆さんが書かれている記事も大変興味深かった。お時間がある方は、ぜひ読んでいただきたい。

あぁ、ついに賽銭箱までキャッシュレスか、と思った。海外からの観光客が多い神社やお寺では、確かに盗難などのリスクを考慮してキャッシュレス化するメリットはあるかもしれない。面倒な現金管理、小銭の用意や出し入れも不要だ。

現役大学生が、こういう場所や変化に目を向けて日本の将来に思いを馳せていることは素直に嬉しいことだ。

今後、日本ではキャッシュレス決済がどこまで浸透していくのだろう。

僕も、コンビニなどではキャッシュレス決済で買い物することはある。

日本で普及率があまり上がらない理由には、カードやキャッシュレス決済で起こっているトラブルやリスクもさることながら、自国通貨に対する信用力の高さや世界に類をみない治安の良さなどが挙げられている。

今年2月中旬の話だ。

大学時代の後輩の結婚式があり、僕は2次会から参加した。

新婦が後輩にあたる。大学時代、僕は準硬式野球部に所属していて、新婦はチームのマネージャーをやってくれていた女の子だ。

この日、同期で当時キャプテンだった友人だけは披露宴から参加していたのだが、受付でご祝儀袋を渡す時に”珍プレー”を起こしてしまった。

その珍プレーが、3次会での笑い話になっていた。

ご祝儀袋の名入れに、自分の名前ではなく新婦(後輩)の名前を書いて渡してしまったのだ。

「あの~、これってお名前が...」

受付の女性に指摘された瞬間、キャプテンは赤面した。

「ですよね~!僕もそう思ったんですよ」(自分でこう話していた)

開き直ったキャプテンは、無礼を承知で裏面に自分の名前をこっそり書き入れた。

ちなみに新婦の後輩の話によれば、キャプテンと同じように新婦の名前を書いていた人がもう一人いたらしい。

確かに年に一度あるかないかの冠婚葬祭では、あれっ?とつい忘れがちになってしまうことがある。僕も笑ってはいられない。

ご祝儀袋は、今やコンビニや100円ショップでも簡単に手に入る。だが、目が覚めるほど色鮮やかで美しい高級なご祝儀袋も日本にはある。

新郎新婦との関係や立場、金額などに応じてご祝儀袋も立派なものが使われている。そこには渡す側の気持ちも込められている。のし袋は高級和紙が使われたり、水引も富士山や鶴といったお祝いに相応しい装飾が施されたりする。

一つ一つ、手作業でつくる職人やデザイナーが日本には存在している。

こうした日本独自の”現金文化”の存在も、他の国よりキャッシュレス化が進まない要因の一つになっているのではないだろうか。

友人のご祝儀袋一つで笑い話になるのも、きっと日本だけだろう。

また、ご祝儀袋をもらった側にも時に思いがけない事が起こるらしい。

3次会に同席していた別の友人は、自身の結婚式でご祝儀袋の中にお金が入っていなかったと言っていた。

渡す側にしても、当然お金を入れたと思っているのだから余計に辛い。

そんなご祝儀袋も、すでにキャッシュレス化が始まっている。

キャッシュレス化になれば、そもそもご祝儀袋に現金を入れ忘れるといったこともなくなるだろう。受付での現金管理や負担も減るかもしれない。

しかし、やっぱり目に見えるご祝儀袋には、手に持った時の感触や重さはもちろん、新郎新婦に対する”想い”がより伝わってくる美点がある。

これから世の中はますます便利になり変化していくだろう。同時に、キャッシュレス化も着実に普及していくだろうと思われる。

お賽銭箱やご祝儀袋といった日本独自の文化がキャッシュレス化の波によって影を潜めてしまうような日もいつか来るのか、と思うと寂しい気持ちもする。

神社のお賽銭箱に小銭を投げ入れ、手を合わせる日本人の姿。祝い事をお互いに祝福し、目に見えるご祝儀袋を通じて支え合い、思いやる精神。

我々が日本人だと自己認識できる文化は、少なくとも目に見えるままであって欲しいものだ。

***

(補足)

準硬式野球とは、見た目は軟式ボールだが中身は硬式ボールと同等の硬いボールを使う。近年、この準硬式からプロ入りを果たした強者もいる。もちろん、僕の大学ではない。僕は補欠。ベンチ盛り上げ役に徹した。

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