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ホンジュラス、自然あふれるコーヒー農園訪問

今回はグアテマラの東側、ホンジュラスのコーヒー農園への訪問をポストしていきます。

記事は旅行記を中心に、ホンジュラスのコーヒー産業についての説明や、後半ではコーヒーのトレードについても触れていきたいと思います(約6000文字の長文です)。

「ホンジュラスの概要」

ホンジュラスを含む中米はマヤ文明の舞台となった地域です。観光資源となる遺産も多く残っており、中でもコパン遺跡は、発掘の際に日本も貢献した世界遺産です。

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そんな魅力的な国である一方、世界銀行によると、1日1.9ドル以下の絶対貧困ラインで暮らす人々の割合は、ホンジュラスで16%と、近隣のエルサルバドル3.0%、グアテマラ9.3%と比べても高い割合を占めています。

武装したギャングによる麻薬取引、強盗、殺人が頻発する地域もあり、ネットで情報を調べると「リアル北斗の拳」がサジェストに出てくる国です(汗)。

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ネットで情報を調べていると上のような写真もゴロゴロと、、、中でも首都のテグシカルパやサンペドロスーラは治安が悪いそうで、私はお隣のグアテマラから国境をコソコソッと超えて入国することにしました。

このあと出てくる地図を見ると、コパンルイナスの場所が書いてあるのでコソっと感が伝わるかと思います(笑)


「コパンルイナスの街」

コパンルイナスは遺跡巡りの拠点の街として、観光業で知名度の高い街である一方、近くには良質なコーヒーの産地もあります。

グアテマラのアンティグアの訪問の時にも感じましたが、観光業で外貨を得るための地域は、他の地域に比べて治安維持がしっかりされているようです。
コパンルイナスも危険を感じることはほとんどありませんでした。

そんなコパンルイナスの街を基点にして動いたので、街の様子も写真で見ていきたいと思います。

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こちらが私の宿泊した宿、一泊25USDくらいで宿泊できます。中心地からのアクセスも良く、清潔感のある現地では比較的ランクの高い宿でした。

宿の周りをうろうろしているとアジア人が珍しいのか、犬の散歩中の少年たちに声をかけられ、写真を取るようせがまれました。
癒し!!

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事前に入れていた現地の情報は恐ろしい情報でしたが、こんな写真が撮れるほど、コパンルイナスの街は雰囲気のよい街でした。

街にはおしゃれなカフェ屋や、ビーントゥバーのチョコレート屋さんもあります。

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自分でコーヒー焙煎もやっているカフェ、とてもおしゃれで豆売りもやっています。

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こちらはチョコレート屋さんで食べたブラウニーとカカオドリンクです。
マヤ文明ではショコラトルと呼ばれるカカオを使ったドリンクが神聖な飲み物とされていました。

そんな居心地のよい街で、いつものごとく訪問できるコーヒー農園を探します。
今回はWELCHEZというコーヒーブランドが持っているサンタイザベラ農園に訪問できることに。

今回はサンタイザベラ農園について触れる前にホンジュラスのコーヒー産業の概要に触れたいと思います。


「ホンジュラスのコーヒー産業」

ホンジュラスは、年間25万tのコーヒーを生産し、世界のコーヒー生産のTOP10にも入っています。
ブルボン、カトゥーラが栽培されていることが多く、WASHEDを中心とした精選をしています。

大量のコーヒーを生産しているホンジュラスですが、コーヒーが伝わった経緯はほとんど残っていません。
1800年以前に伝わった可能性が高いといわれています。そしてコーヒー生産量が飛躍的に伸びたのは2001年以降、まだまだ今後の品質向上に期待される産地です。

グアテマラと同様、火山国なのでミネラルを含んだ水はけのよい土壌、そして高い標高が得られます。
一方でインフラの不備や、雨の多さからせっかくとれた豆が適切な状態で消費国に届かないという問題も抱えています。

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コーヒー生産地をCOFFEE BOOKという書籍を参考に白地図になぞってみました。

私が訪問した西部ではコパン地域、モンテシージョス地域が生産地として有名です。コパンではココアの風味と思い甘みのフルボディーコーヒーが、モンテシージョスでは明るい酸味とかんきつ系の風味が感じられるコーヒーが収穫されています。

東部の産地のアガルタでは品質の良い豆はトロピカルフルーツやチョコレートの風味、強い酸味があるとの事。
美味しそう!!

「日本で買えるホンジュラスコーヒー」

スターバックスでも2018年にホンジュラス マルカラのお豆を販売したことがありますが、こちらの産地はモンテシージョス地域に入っていそうです。

https://coffee.ism.fun/article/5667c804-89a0-43e8-9374-dd85006287ce

そんなホンジュラスではCOEが開催されています。コーヒーワタルさんが日本にインポートされていたりもするので我々でも購入することができます。

魅力的なホンジュラスのコーヒーですが訪問前にホンジュラスの産地指定なしのHG豆をカッピングしました。コモディティーの豆なので仕方ありませんが、残念ながらその時は特徴的な芳香は感じられず、クリーンカップとは感じがたいコーヒーでした。

コモディティーの生豆を購入する際には標高をもとにした格付けをもとにして品質や価格を判断します。1200m以上ならSHG(STRICTRY HARD GROWN)と呼ばれ、1000m以上ならHGと呼ばれます。


「農園を行く」

ホンジュラスではWELCHESというブランド名でコーヒーの販売をしている、ラスカーサス社のサンタイサベラ農園を訪問しました。

https://www.cafehonduras.com/

コパンの町からは車で1時間弱、山をすこしずつ上りながら農園に到着です。

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農園視察のスタート地点の標高は1000mちょっとでしたが、農園は急な斜面に面しており、斜面を登りながらコーヒーの木を見て回りました。

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トラクターに引っ張られながらガタゴトと山の中を進みます。

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こちらの農園ではコーヒーの生産性を高めるだけでなく、自然を壊さないコーヒー生産を目指しており、自生していた生態系を壊すことなく農園開発をしています。

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そのため、コーヒー栽培がおこなわれる中でもうっそうとしたジャングルが残されており、ジャングルの中では様々な野生の鳥を見ることができます。運が良ければ世界一美しい鳥といわれているグアテマラの国鳥ケツァールも見ることができます。

コーヒー農園見学だけでなくバードウォッチングのツアーが開催されているそうで、そんなところからも生物の住みかとしての役割を果たしているのだと感じることができます。

「コーヒーの認証」

こちらの農園はレインフォレストアライアンスの他様々なコーヒー栽培に関する認証を取っているということでした。
メモを取り忘れてしまったのですが前述したような農園管理なのでSMBCもとっていたと思います。うろ覚えですみません。

この機会に別の記事で様々な認証についてまとめてみたのでよかったら参照ください。

https://note.com/tik190/n/n8f68a95fa987

レインフォレストアライアンスやSMBCは環境面での配慮に重きを置いた認証ですが、こう言った野生種の保護という観点に関してもスターバックスのC.A.F.E. プラクティスはケアをしています。

「環境面でのリーダーシップ」項目の中にシェード樹の保持野生動物の保護保護地域の扱いなどの基準を入れています。今回は保護地域に関する項目を一部抜粋しています。

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興味がある方は以下のサイトにアクセスすると英語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、中国語、インドネシア語の資料を見ることができます。http://www.scsglobalservices.com/services/starbucks-cafe-practices

2004年以降、自然な森林が農業用地に切り替えられていないこと。保護価値が高い区画の調査の実施、保護、管理を義務づけています。


「農園の管理」


さて農園の話に戻りますが、生物多様性を維持するとともに、コーヒーに関しても16種の品種を植えています。
それぞれのブロックを区切って、品種ごとの収穫を行うようにしているそうです。

収穫されたコーヒー豆は、加工工程で品種が混合しないようにコントロールされています。

非常に急な斜面にコーヒーが栽培されているため、人力での収穫になり、その歩合給は18ドル/100㎏程、グアテマラと変わらない給与水準です。

こちらの農園は高い給与水準を保っていますが他の農園はもっと安価で労働力を確保しているとのことでした。
ホンジュラスには貧困層が中米の他の国よりも多いことを考えるとこの収入は現地の方にとって魅力的な仕事と思われます。

「加工設備」

こちらの農園では水洗式を中心とした加工がされていました。水洗式加工の流れに関しては以下の記事でまとめています。

https://note.com/tik190/n/na447141d12bf

今回は写真を中心に見ていきます。

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こちらで果実を取り除きます。
チェリーの部分はたい肥やカスカラティーの原料として活用されます。

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ウェットミルでチェリーをはがした後に水で比重選別をおこない欠点豆が混入しないように選別をおこないます。

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こちらの農園ではWASHED方式の精選をメインにしており、12~20時間の発酵を行ったのちに乾燥をスタートさせます。

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アフリカンベッド方式の乾燥台。
いろいろな品種をそれぞれ別のものとして扱えるようにそれぞれの乾燥台には品種の情報、精選方式が記載してあります。
私が訪問した際にはJAVA、ICATU、OBATA、PARAINEMAがハニープロセスやナチュラルで乾燥されていました。

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乾燥式(ナチュラル式)での乾燥もされていました。

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こちらはコーヒーチェリーをカスカラティーとして出すために乾燥させている台です。

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アフリカンベッドでの乾燥だけでなく人工乾燥も行われています。

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「コーヒーのトレード」

今回訪問した農園は自社のブランドを持っています。
生豆で輸出するにしても、売り手と買い手が直接品質の確認をして値段の交渉をするダイレクトトレードで取引します。

私もそうですが、生豆を仕入れるとき、COEに入った豆だと日本で買えば安くても¥2000/㎏、高いモノだと万/㎏を超えてきます。
COE豆でなくとも品質管理のしっかりとした農園のコーヒーを買えば¥1000~2000/㎏はしてきます。(今年はもっと上がりそうですが。。。)

ダイレクトトレードではこのように価格と品質が相関性がある状態で取引されます。

品質にこだわりを持っている大きな農家は量も取れるのでダイレクトトレードができますが、そうでないアラビカコーヒーの農家はどうしているのでしょうか。

この場合、協同組合やプライベートカンパニーが農家から買い上げて販売します。この際、ニューヨークのCマーケットの価格を参考にして価格が決定され取引されます。

世界で生産されるコーヒー豆のほとんどが取引市場で売買される相場商品です。

本来であれば品質によって価格が決定されることが農家のモチベーションにつながります。しかし相場の影響を受けた取引では品質とは関係ない要因で価格が大きく変動する可能性があり、相場価格によっては生産者の生活が打撃を受けます。

以下は全日本コーヒー協会が出しているマーケットごと、年ごとのコーヒー価格の推移です。

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ニューヨーク先物の2018年と2011年を比べると2018年は半値以下(¥280/㎏程度)で取引されていることが分かります。
自分の暮らしに置き換えてみると年収が倍になったり半分になったりすると生活をコントロールすることはとても難しくなりますよね。

そんな状況では農家の方の生活も安定しないので、品質に見合った価格でコーヒーを取引する必要があります。

スターバックスなどのスペシャルティーコーヒーを扱うコーヒー屋はダイレクトトレードを行っています。規模の小さな豆屋もダイレクトトレードで商社がいれた豆を使うことが多いです。
これらのお豆を消費者が選択し、購入することで農家は品質水準を継続的に高めることに繋がります。

倫理的な調達がされているコーヒーを味わうことは美味しいコーヒーを飲むだけでなく、現地の方の生活を守ることにもつながっています。

ここでもC.A.F.E. プラクティスは持続可能なコーヒービジネスを支援するための取り組みを決めています。

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コーヒーチェリーやパーチメントコーヒー、グリーンコーヒーの取引に関する売買の受領証を補完する義務やそれらの取引の際に誰が誰にいくらで売ったのか、コーヒーの情報とともに保管しておく必要があります。

この価格がいくらまでであればOK、いくらであればNGというところまでたどり着けませんでしたが、自社の基準に照らして公正な取引を促しているそうです。

「ハビエルさんとのディスカッション」

乾燥後の豆を脱殻したり、シルバースキンをはがすための設備、比重やメッシュサイズで分別するための設備もこちらの施設の中にありました。
そしてそんな施設の中で出会ったのが、品質管理のハビエルさん。

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情熱が原動力で仕事をしているような、パッション溢れるかたでした。
元々はコーヒーツアーのガイドの仕事をしていたそうですが、コーヒーの魅力に取りつかれ品質管理の仕事を任されるようになったそうです。

カカオの仕事をしていたときも時々お見掛けすることがあるのですが、こういう方とお会いすると、心に火が付くような感覚になります。

カッピング用にグリーンビーンを少し分けてくれないかというと快諾、一緒にハンドピックをしてくれました。

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今はいろいろな品種を、いろいろな精選方式で試しながらCOEでの入賞を目指し、試行錯誤されているそうです。

カッピングラボが空いている日であれば、標高ごと、精選方式ごとにカッピングすることもできるそうです。

一緒にカッピングしながら意見交換出来たら楽しかっただろうなあと日曜に来てしまったことをちょっと後悔です。

今回はカッピングができませんでしたがいつかまたホンジュラスを訪問し、一緒にカッピングしながらハビエルさんと意見交換をしたいものです。

「まとめ」

今回のNOTEではホンジュラスのコパンの様子からスタートし、農園訪問について記事にしました。

訪問したサンタイザベラ農園は、各種の認証を受けた農園で種の多様性を保存するために、様々な自生の木とともにコーヒー栽培を行っていました。

そんなこだわりを持って生み出されたコーヒーは農園に付随しているロースタリーで焙煎され、商品として販売されたり、ダイレクトトレードで輸出されたりしています。

こういった農園開発、商流の中で各種認証や具体的な基準の例としてスターバックスのC.A.F.E. プラクティスについて触れました。

今回の記事を通してどんなコーヒーを購入することが、農家の方の安定的な収入を実現できるのか、一端がつかんでいただければ嬉しいです。


今日もコーヒーとともに豊かな一日を!

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