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グアテマラ、コーヒー農園での収穫風景

前回の投稿ではグアテマラのアンティグアのAZOTEA農園についての記事を投稿しました。その中でコーヒーを精選する際の水洗式に関して説明をしてきました(約5000文字)。

https://note.com/tik190/n/n5233e648d88d

少しおカタい情報が多かったので、今回はコーヒーに限らずグアテマラ、アンティグアの人々の暮らしや、訪問時に取った写真などにもざっくばらんに触れたいと思います。

またフィラデルフィア農園訪問、その際に絶賛活躍中だったチェリーの収穫をする人(ピッカー)の生活についても文章にしています。

「グアテマラの生活」

グアテマラは渡航者にとっては気を引き締めて観光をすべき地域です。

しかし、観光都市アンティグアに滞在している間は、危険を感じることはありません。そんなアンティグアで、一週間ほど生活した際の現地での生活についても触れていきます。

アンティグアという呼称自体が、スペイン語で「古代の」という意味があります。

16~18世紀にかけて中米グアテマラの首都として栄えた古都です。大地震により壊滅し、半ば放棄されたために、今でもコロニアル様式の、落ち着いた美しい町並みをとどめ、街自体が世界遺産に登録されています。

グアテマラときくと、ジャングルに覆われたとても暖かそうな土地のイメージをしますが、コーヒーの産地は比較的標高の高い場所が多いため、温暖な気候の国の中でも、涼しく住みやすい地域が多いです。

私は、1週間ほどホームステイしながらスペイン語教室に通っていました。

ホームステイ先では現地の方が普段食べている食事を一緒にいただきます。グアテマラでよく食べられているのは、コーンを生地にして伸ばしたトルティーヤと、小豆を煮てペースト状にしたフリホーレスです。

フリホーレスは写っていませんが写真のようなお食事を毎日食べてました。時々、チキンなどもごちそうとして出てきますが、炭水化物中心の生活です。

カトリックの信者が多く、私が滞在していた時も、教会でお祭りをやっていました。その際には現地の方は色とりどりの布に身を包み、いつもよりも華やかな光景が広がります。

観光としてしての知名度も抜群なアンティグアですが、コーヒーの生産地としても世界的な知名度を持っています。

「フィラデルフィア農園について」


グアテマラのアンティグア地域には一般人でも訪問できる農園が2つあります。

1つはコーヒー博物館を併設しているAZOTEA農園、そしてこちらのフィラデルフィア農園になります。

フィラデルフィア農園は、アンティグアの中心地から観光のためのバスが出ており、とてもアクセスのよい農園です。

海外からの観光客も多く、非常にきれいで規模の大きい建物が並んでいます。

こちらの農園には1泊200USD程するホテルや、レストランも併設されています。市内では7USDくらいでもきれいな宿泊施設があるのでこの価格は高級リゾートホテルといったところでしょうか。

訪問当時、フィラデルフィア農園の1番の輸出先は日本とのこと。また2011年まではスターバックスにも販売していたそうです。

この農園で採れた品質の良い豆は、海外への輸出用、それ以外を国内消費用に焙煎したうえで販売しているそうです。

今回の訪問の前、コーヒー業界のいろんな方に言われましたが、コーヒーに関しては品質のいいものは大体日本に集まっているよ。。。というのはこういうことなんですね。

さてこちらの農園は標高1560mです。

SHGに区分される農園ですね。ブルボンを中心にパカマラカツアイカツーラなどが区画整備されながら植えられています。

いずれの品種もアンティグアで栽培するためにはシェードツリーが必要となるためナーサリーの中ではコーヒーの木だけでなく、シェードツリーが植えられています。


シェードツリー:コーヒーの木は日射量が多いとダメージを受けるため適度な日陰を作るために木を植える。

シェードツリーは種類によってはコーヒーの収穫量を減らしてしまうこともあるが、生物の多様性や自然な環境につながることもあり、サステナビリティ―のために多様な木を植えることもある。

農園の中を回る際には、大きなトラックに乗って移動をします。ガイドの方は英語で説明してくださり、スペイン語に疲れていた自分にとっては癒しになる時間でした。

下の写真のように、道もきちんと整備されており、とても大きな資本を感じる農園です。

『農園の視察』

この農園ではシェードツリーとして、グラディアという名前の木が植えられており、シェードツリーの役割を果たした後は薪として販売されるそうです。

こちらの木は育つのがコーヒーの木よりも早く、コーヒーの木が根を張るよりも深く根を張るために、コーヒーの木栄養分を取り合わないためシェードツリーとして最適なのだそうです。

収穫期には労働者が入って赤いチェリーのピッキングを行います。

「コーヒーチェリーの収穫(ピッカーの仕事)」

「100%手摘みのコーヒーチェリーを使用した上質なコーヒーを!」みたいな表現ってよく目にします。でも実はコーヒーの世界だと手摘みが主流です。

コーヒーの栽培は標高が高く、傾斜地が好まれます。またチェリーが完熟していないとコーヒーの種子が成長しきれておらず廃棄されてしまうため、色彩選別なども必要になってきます。

これらの条件だとなかなか機械での収穫は現実的ではありません。ブラジルの大規模農園などでは機械式を取り入れているそうですが、やはり世界的な収穫の主流はハンドピックになっています。

そしてこの手作業が良きにつけ悪しきにつけ仕事を生み、現地の方の収入へとつながっています。

今回はそんなピッキングについて触れていきたいと思います。

コーヒー農園を運営する際には剪定や土壌のコントロールなどを行う活動を行います。

これが単位面積当たりの結実の量に影響を与えます。そしてそんな努力が、文字通り実を結ぶのが収穫期です。当然、収穫期にはチェリーを余すことなく収穫することが必要となってきます。

収穫の際は、成熟した豆を適切な時期に収穫することが農家の収入に直結します。

下の写真は別の国で採った写真ですが花の開花から結実、果実の成熟までの変化を追いかけています。

この中でも収入につながるのは左の赤く完熟したコーヒーチェリーのみ。

一つの木の中でも完熟のタイミングはずれるので、このタイミングを逃さないように、収穫の期間中何度も何度も畑の中に入り、完熟したものだけを選別して収穫します。

地域にもよりますが収穫期は3~6か月にもわたります。

これは自前の精選設備を持っている大規模な農園でも、小規模な農園でも非常に重要な問題になってきます。

農家は収穫のタイミングを逃さないよう、一つの区画に対して4~7回も収穫にはいり、完熟した豆だけを収穫するようにしています。

このため農園の規模にもよっては、収穫期に入った農園には外部から収穫者(ピッカー)が日雇いで入って、チェリーを収穫します。

ピッカーに支払われる給料は国によってまちまちでこの農園では100㎏収穫するごとに20USD(2200円)程度支払っているということでした。

優秀なピッカーは、一日に200㎏のチェリーを収穫し、40USD程稼ぐことができ、現地の感覚ではかなりの高給取りになります。

参考までに、ハワイのKONAでは100㎏ピッキングすると80ドル程度の歩合が払われます。

またコーヒーの収穫時期は標高、国によっても異なります。

基本的には標高の低い地域から高い地域に移動するほど収穫時期は遅くなります。優秀なピッカーは、自分の住んでいる地域や国だけでピッキングするのではなく、海外まで出稼ぎに行ってピッキングします。

前述したハワイなどピッカーの収入が高いところにも中米からピッカーが出稼ぎに行きます。ハワイは渡航費も生活費も莫大にかかってくることを考えると、ピッカーの需要と供給のバランスで、80USD/100㎏という単価の設定がされているのだと思われます。

「ピッカーの生活を守る取り組み」

さてここで少しだけスターバックスのお話になります。

スターバックスでは倫理的な調達を目指して、C.A.F.E.プラクティスという認証プログラムを自社で設定し、それに沿ったコーヒーの取り扱いをしています。

この認証の中には、単純に高品質なコーヒーを生産するための規定だけでなく、コーヒー産業に関わる人々の暮らしが守られているかどうか、も認証の基準として盛り込まれています。

以下は該当箇所の抜粋です。

コーヒーの収穫は、「崖」といっても過言ではないような急斜面で、行われていたりする産地もあります。

そんな産地ではピッカーの方が体に縄を括りつけながら斜面のチェリーを収穫しています。当然、安全対策をしっかりとしないと収入を得るための仕事の中で怪我を負い、怪我で動けなくなってしまうという事態も生じます。

また、ピッカーからは離れますが、農園の管理の為に農薬を使用する際等も、その農薬の危険性や、適切な使用方法を知らずに使用してしまうこともあります。

そんな状況を改善すべく、C.A.F.E.プラクティスには労働者を保護するために、農園が果たさなければならない取り組みが、規定されています。

われわれが飲んでいるコーヒーが、現地の方の悲しい思いとともに生まれたものでなく、WIN WINの関係の中でできてきたコーヒーであるかどうか、そんな風に現地で働くピッカーにも馳せながらコーヒーを嗜んでいただければ嬉しいです。

『施設について』

こちらの農園では、精選のための施設や焙煎の設備も見せていただくことができました。

AZOTEA農園と同じく水洗式の設備がそろっていました。

リゾートホテルを併設しているだけあって、施設からは火山を眺めることもできます。

フィラデルフィア農園ではパティオを利用した天日乾燥だけでなく、大きなドラム式の乾燥機を使用した人工乾燥を併用しているとの事でした。

カカオでは、人工乾燥だと酸が残りやすく天日乾燥がベストという理解が浸透しています。コーヒーに関してはどうなんですか?と聞いてみましたが、こちらの農園では大きな差はないと認識しているとの事でした。


下の写真が人工乾燥に使用される大規模な乾燥機、ドラムが回転しながら、ガスで起こした熱風で豆を乾燥させていきます。2日程度で乾かすことができるそうです。

そのあとは大型のロースターを、見学させていただきました。

海外の焙煎工場は若干衛生管理が甘いところが多いのですが、こちらの工場では入る前の手洗い、ネット帽などきちんと管理されており好印象です。


ツアーの最後には、こちらの農園でとれたコーヒーを飲むことができます。きちんとしたドリップでいれた、美味しいコーヒーを楽しむことができました。

「カッピング」


フィラデルフィア農園ではお土産売り場に、生豆の販売もされていたのでカッピングしてみました。

紙のような香り、若干のカルキ臭、お土産用に売られている豆だったのでグリーンビーンの状態で長く置かれてしまったか、オールドクロップの特長が出てしまっていました。香りの強度も控えめでした。

湯を入れた後はネガティブな香りが収まり、赤いフルーツを想起させる香りが立っていました。とはいえカッピングしてみると酸も控えめでプラスチックの香りがしてお世辞にも美味しいコーヒーではありませんでした。

設備も整っていますし、赤いフルーツの香りも想起されましたので、是非に新鮮な豆でカップを取ってみたいところです。

「まとめ」

今回紹介したフィラデルフィア農園の豆は、生豆でも仕入れることができます。が、すこーしお値段が張ってしまうので、タイミングを見計らって試してみたいと思います。

今回は、グアテマラのフィラデルフィア農園について紹介するとともに、コーヒーを収穫しているピッカーと呼ばれる方の仕事、そしてその方たちの安全を守るための取り組みを紹介しました。

コーヒー豆は収穫の後、精選、乾燥、焙煎、抽出等、多くの工程を経て我々の手もとに届きます。我々との物理的、感覚的な距離が近ければ近いほど情報が集まってきますが、今回は日本に住んでいるとなかなか注目することの難しいピッカーの仕事に焦点を当ててみました。


現地に思い馳せながらコーヒーとともに豊かな時間をお過ごし下さい。

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