見出し画像

“愉快なオトナたちのリアル講義”〜Koei〜完全版✙

高校生によるオトナたちへのインタビュー第15講
日中は僧侶、夜はOi Punkな”僧侶兼ミュージシャン”Koeiさんによるリアル講義
ソウルこもったANTiFADのヴォーカルで覇気のある歌声を震わすKoeiさんの思考を聴き解く今回のインタビューは〜Koei〜。
無常観を説くありがたいお話と共に、プロフェッショナルの思考法をここに書き留める。









1,History


1,History



周りを見るとバンドを中学高校で始めてる人がたくさんいるけど、俺はバンド始めたの遅かったんよね。大学入って初めてバンド組んで、でしかも3回生からだから20歳過ぎとって。


もともと小学校高学年から中学生の時から音楽を聴くのが好きやったけど、テレビの時代だったからテレビの音楽が全てで好んで聴きよって、いわゆる歌謡曲やね。ばっかり聴いてて、全然今はパンクバンドやってるけど、パンクもロックも聴いてなかった。初めて買ったレコードも松崎しげるの『愛のメモリー』やったし。

その中で自我の目覚めとともにテレビ以外の音楽聴くようになって。それはちょっと変わった奴が、当時中学生にとっちゃものすごい高額な3万円って値段のするウォークマン持っちょって。俺は持ってなくて。学校持ってきたらいかんのやけど。そいつが昼休みに聴きよって。

ある日ちょっと聴いてみてよってヘッドホンつけてくれて、流れてきたのがクラフトワークってドイツのテクノバンド。それがすごい心地良くて、ハマって。中学生にしてテクノに目覚めたんよね。
そういう音楽が日本にあるかってYMOで、すごいいいなって。テクノやシンセサイザーの音楽ばっかり聴きよった。友達にヤンキーもおって、クールスやキャロルなんか聴いてたけど興味なくて。

高校生なってテレビで洋楽のpv流されるの観て、その中でウォー!ってなったのがモトリー・クルー。ハードロックとかメタルを聴くようになったんよね。『Girls, Girls, Girls』がめちゃくちゃカッコよくて。ロックやメタルにはガーッてそっから傾倒するようになったね。1人で楽しみながら聴くだけやったけど。

今の自分の年齢を見つめて、今からでもやれると思えるか。




2,College


2,College



大学に入ってバンドしてないくせに髪伸ばしてメタルの格好して、大学に音楽サークルがいくつかあった中にメタル専門のとこがあって。その人たちの定期演奏会は観に行ってて、大学は立命館で京都なんやけどライブハウスにもいくようになって。


1,2年のときはただお客さんとしていいなって思っちょったけど、だんだんあっち側に立ちたくなっていく。
やりたいやりたいって気持ちがだんだん高まっていくんよ。「あぁ、バンドやりてぇ。」って2回生の終わりにやっとなってくる。でも、楽器もバンドも全く経験なくて、カラオケすらも。

正月とかに親戚の集まりで家のカラオケセットあっても、まず絶対に歌わんかって。だからとにかくボーカルは無理やなって。ギターは友達の家に行ったときに弾かせてもらって、不器用やったし絶対できんと思った。ハードロックやし、今さらやって追いつくもんじゃないなって。そしてドラムもセットを持ってないから家で練習できない。じゃあって、ベースの人には申し訳ないけどベースならギリやれるか?って教則本買って練習したんよ。

やりたい!で、やるの?




3,決意


3,決意



1人でベース練習してたけど、いつまでもこんなんしよるわけにはいかんけんって、メタル団体の門を叩こうって決心したんよ。本当に自分は格好だけだったから、仲間になりたいって決意するんだよね。団体の人たちは放課後毎日ホールに集まってたから明日行こうと思ってたけど、前日の夜は眠れんのよね。


なんか緊張して。でも踏み出さんと始まらんって。で、次の日になってホールの扉の前まで行って、音が少し漏れとんのよね。曲終わったら入ろうって待っちょって。

曲終わるけど入りきらんのよね。演奏、俺なんて素人やし、自分があんなとこ入ったとして何になるんやって。色々やっぱ怖くてアタマん中グルグルして。入れんくてなかなか。
次の曲終わったら入ろう、次の曲終わったら入ろうって思いながら結局その日中に入っていけんかった。
おめおめと帰ったんよ。


でも帰る道すがらもうイヤでイヤで、自分が。その日の晩には自己嫌悪でやっぱ眠れんかって。

でもこれじゃホントにいかんって、どうにもならん。こんな自分はイヤだしって。
次の日も行って、今度はなんも考えずにドンドンドンって入ろうと思って。曲終わった瞬間にドンドンドンってノックして、心臓バックバク。ウワァー叩いてしもたぁってなりながら、カチャーって開けたんよ。


髪長い兄ちゃんらが「何?」って。でも演奏観に行ってたから顔知られちょって、
「おぉ〜、君か」
「はいー」
「どうした?」
「いや、自分ちょっと、バンドやりたいんす」
「お、そうなん。パートは?」
「べべべ、ベースですぅ」
「ベースか」
で、ベースは今間に合っとる。それこそ2,3日前にボーカル抜けたバンドあるから、ボーカルやったらすぐにやれるよって。

あぁ、よりによってボーカルかって感じよ。ガーッて、迷うんよね。
バンドやりたい。でもボーカルかー。そんときはバンドやりたいが勝った。
考えよったけど、やってみるかって決めてジューダスプリーストの2曲を覚えて1週間後この時間に来てって、ボーカルがものすごいハイトーンのバンドなんよ。その2曲『Breaking the Law』と『Electronic Eye』は比較的歌えそうなキーやったんやけど。

CD借りて歌詞もちゃんと覚えて、鼻歌ぐらいでしか歌の練習することはなかったけど。前日は毎度ながら寝れんくて、なんでこんなことやったんだろうって。バンドやれるってワクワク1割に9割は恐怖で、約束してしまったからにはすっぽかすわけにもいかんし。なんてことをしてしまったんだ、でも行かないかんって当日が来た。

トビラを叩け!




4,当日


4,当日



約束の時間に入っていって、メンバー以外にもブワーッてサークルの人たちがおって。新しいボーカルを観にみんな来たんやろうね。


それでアタマ真っ白になってぼーっとなって。
「じゃあやりましょか、ブレイキングザロウから」
で、始まるんよ。カラオケでも歌ったことないヤツがいきなりメタルの生演奏で歌うんよ。歌うんやけど、自分の声が聞こえてこんで。

周りの爆音に掻き消されて、全然聞こえんままに終わったんよ。たぶん格好だけはメタルやったしみんな来とったし、少しは期待されとったはずで。
でもなんとなく空気を感じるじゃん。ほーって聴きよった人が雑誌読み出したり、とか。

「もう1曲もやります?」
「じゃあもう1曲の方もお願いします」

おんなじ、何にも聞こえん。

それもそのはずなんよね。ボソボソ声で練習しよっただけでちゃんと声出して歌ってないし。しかも1オクターブ下で歌いよったらしくて。そんなんもわからんかったんやけど、逆に低すぎて歌いにくかったんよ。

あ、見切られたなって感じなんよ。どうしよっか。
俺ボーカルできんっすねって帰るのか。でも帰ったらもう定期演奏会は恥ずかしくて行けんやろな。ここまでか…。

ここまでか、これからか




5,Again


5,Again



もう1回イイっすか?


こりゃいかんって、なんでかそん時に大声で怒鳴りながら歌っちゃろうって。
ここで諦めたら、このまま一生バンドすることもない、髪も切らないかん。いやでも、それはイヤやって。

ウァァァ!って大声で歌って。それが正規の音階で、自分の声もちゃんと聞こえたんよ。
ちゃんと聞こえると歌えるし。あっ、あー!歌える!って。

そしたら歌い終わって、おぉパチパチ。やるやん、みたいな。
拍手が起こったし、できる!って思って。もう1曲の方もできて、お願いしますって。そこからバンド人生始まってずっとボーカルやね。

自分に自信ないヤツやったし見るからに気合いのない青年で、街でも不良に絡まれたりしたこともあった。けど、バンド始めて根拠のない自信が満ち満ちてきて。たかがバンドやけど、俺にとってはメタルやってるからって気概ができて、実際絡まれることも無くなったもんね。

そん時に思ったのは、新しいことを新しい世界で始めるときは、ハードルが高ければ高いほど怖いんよね。やりたいけどコエー。でも踏み込まんことにはそこの世界も広がっていかんからね。本当にやりたいなら一歩踏み込むって大事やなって。違うと思えば、それはそれで手を引けばいいし。そんなとこだね。

一歩踏み込む




6,Punk Rock :ジョニー・ロットン


6,Punk Rock :ジョニー・ロットン




今はパンクバンドやっとんのやけど、パンクへの道はピストルズから入ったんよ。3回ピストルズとは出会って、3度目でようやく衝撃を受けた。


1回目は小学生の時で、深夜番組に出とってピストルズと分かっとったわけじゃないけど、顔を覚えとる。それはね、ジョニー・ロットンが歌いよるのを見て、うわぁキチガイなって思ったんよね、小学生やし。あの狂気的な目とその時の表情は鮮明に覚えとるね。印象深いものではあった。

2回目は大学の時で、メガデスがアナーキー・イン・ザ・U.Kのカバーをしとるのを聴いてめちゃくちゃカッコよくて。それでピストルズの原曲を聴いてみようと思って、あれ?って。歌い方も演奏も間延びしたように耳に入ってきて、そんときもピンとこんくて。

そしてこの3回目は大学卒業して福岡戻ってきて、バンドしたいわけよ。ライブハウスにもいろいろ行って、知り合いつくって。
パンクスの溜まり場におった時に、誰かがピストルズのビデオ観ようって。アナーキー・イン・ザ・U.Kのライブ映像で、ロットンの目つきに鳥肌が立って。なんだこれカッケェって。その場のお客さんのノリもカオスで。これがパンクロックか、パンクカッケェって。

頽廃的というか破壊的なパワーがそこには見え隠れしとって、ビデオやけどそれが十二分に伝わってきて。そっから深めてってパンクロックが好きになったね。

ジョニー・ロットンの目がやっぱり好きなんよ。目が違う、他とは一線を画してる。
そりゃ作り込まれた目なんかもしれんけど、あの目つきよ。最終的にはパンクって目にくるんかな。いろいろ着飾っても目が死んじょったらって、大事なんかなと思うよ。

your eyes




7,Oi Punk


7,Oi Punk



パンクを深めていって、ブリッツってオイパンクバンドを知って。ジャケットもカッコいいし、Oi, Oi, Oi!!って、痺れたね。MA-1にロールアップジーンズに、マーチン履いて坊主で、これだ!って。
Someones gonna dieのOi, Oi, Oiっていうコーラスがとにかくたまらんかったね。俺自身は右翼でも左翼でもない感じなんやけど。



Oiやろうって今のバンドANTiFADを立ち上げて、今に至る。
今出してる太い歌声はブリッツのボーカルに憧れて、あんな声出して歌ってみたいなぁってモノは試しで出してみたら歌えたんよ、いけるやんって。

Oi, Oi, Oi!!!




8,無常


8,無常



俺、作詞作曲しとんのやけど歌詞は、反戦とか強く生きろとか、死に触れた曲もあるし。特にこだわりはなく、その時々で思ったことを歌詞に起こしてて。


自分自身自身僧侶だから、仏教思想が歌詞にも少し反映されとるかな。無常観は基本にあるしね。
良いことも悪いことも常には続かない。常に流転している。永遠なんてないって。
間違ってもこの愛は永遠だなんて俺は言わないし。

諦めずにあがく姿はカッコいいと思ってるから、ANTiFADも諦めてない。
同級生にまだやってんのって言われて、別にこうなりたいってメジャーなとことか見てるわけじゃないんだけど、なんかこのままじゃ終われないって思っとる。満足したら終わりやってね。

過去のことを悔やんでも仕方がないし、将来のことに不安になっても分からんし、今できるしことをやるしかないよね。55歳、そうやってボーカルやってます。

この世は無常。万物は流転する。







以上、今回は僧侶の僧侶じゃないボーカルとしてのありがたいお話でした。まじ小説。

インタビュー記事”愉快なオトナたちのリアル講義”はもう少し続きます。次回もお楽しみに!



ありがとうございました!

この記事が参加している募集

眠れない夜に

この経験に学べ

高校生アクション!応援してくださる方はクラウドファンディング感覚での投げ銭、よろしくお願いします(_ _) サポートで戴いたお金は、インタビュー記事をまとめた本の出版費用に使わせていただきます!