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ネコとの年月が私の歴史 (7)


Chapter 7: 
ネコ#12  ルビー

何度もこの note でも登場させ、そのグーフィぶりを読んで頂いているルビーは、久々にソロでやってきたコだった。それ迄は2匹、5匹、2匹と複数で新しい家にやって来た事で、子猫達は新入りとして、動物がうじゃうじゃいる家庭でも幾分居場所を作りやすかったように思う。
 
ルビーがやって来た日は忘れもしない2005年の12月1日。その日は犬のしろみが急性腎炎でICU(集中治療室)に入院した翌日だった。車で1時間半かかるICUの設備のある動物病院へ面会へ行くため、朝の10時頃支度をしていると、玄関のドアのまん前に子猫が佇んでいる。
「わー、珍しい!」
と思い、野生動物を撮るために奮発して買ったばかりの一眼レフを取り出し、10枚程写真を撮った。玄関まで入って来るには、背の低いフェンスのドアがあるのだが、生後2か月程の子猫がわざわざその高さのフェンスを飛び越えて入って来るのは少し妙だなと思った。

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↑  ルビーがやって来た日。玄関前で。


しかし私はそれどころではなかった。まだ8歳の犬が助からないかもしれない状況にいて、家を一日も離れたことのないスポイル犬が入院しているのだ。毎日顔を出して、
「また明日も来るからね!」
と言ってやらなければ捨てられてしまったと思うかもしれない。

私の心配をよそに、獣医曰く「ストイックな犬」だそうで、普通の犬のように尻尾を振って喜ぶタイプではなかったようだ。病院食にも手をつけず、しかしキャットフードなら爆食したとのことで、ずっとそこではキャットフードをもらっていたらしい。。

しろみは大きめのケージに入れられ、隣前後のケージは空き部屋で、ストレスは少なそうに見えた。フロアに座りこみ身体を撫でたりどうでもいい話をしながら2時間ほど一緒にいて、完全に落ち着いたように見えてから、
「また明日ね!」
と言って帰って来た。

私も精神的に参り気味で帰宅すると、なんと今朝の子猫がまだいるではないか。少し場所は移動しているものの6時間も経っていて、しかも摂氏マイナス6度の夕暮れ時だ。
 いろいろな考えを巡らせながら、5メートル程距離を置いたところにしゃがみ込み、おいでおいでを続ける。子猫は一歩も動かず、こちらを見つめたままだ。陽が完全に沈む頃までには、大方の推測はついた。誰かに捨てられたのだ。7-8匹のネコを飼っていると、知らぬうちに知らない人までがそれを知っていて、
「この家なら飼ってくれるだろう、幸せにしてもらえるだろう。」
などという身勝手な思いよがりで、置いていくことがあるのだ。そこはディープな田舎の只中で、グーグルの地図にも載らない所だ。隣の家までは歩いて5分の距離、家が面した砂利道は1時間に1台の車も通らないこともある静かな場所で、子猫がいきなり迷子になるような所ではない。用のある人しか通らない道でもあるし、人のいない所にあまりノラ猫はいないのである。誰かが置いていったことは殆ど確実だった。しかも生後2か月ほどの子猫で、すぐに前日までどこかの家で飼われていたことは明らかとなった。また犬が3匹もいる家屋のフェンスの内側に自力で入って、水も食べ物もない所に6時間も殆ど移動せずたそがれていることなど、どうやっても考えにくい。彼女はわけがわからないまま置いていかれ、置いていった人間が迎えに来るのを待っていたのかもしれない。可愛そうに、それはもうあり得ない。。そしてこの見知らぬ人(私)が、おいでおいでをやっているが、そこへ行こうかどうしようか考えあぐねていた。

私の方も芯まで冷え切り、このまま寄って来なければどうしようかと思い始めていた。一歩でも近づけば逃げるのは目に見え、私が入って行けない藪に隠れてしまったら、もう朝までは何もできない。あれこれ考えているとぴったり25分後に、辛抱強く待った甲斐はあってまるで、

「この人、信用することに決めた!」

とばかりに一目散にこちらへ走って来て、膝から肩から頭から乗りまくり、ようやく私達は、「初めまして!」の挨拶ができた。
いろいろ聞いてみた。

「どこから来たの?」
「誰だ、キミをこんな目に遭わせたのは?」
「うち、大きな犬3匹いるよ、それでも来る?」

何を聞いても答えは同じ、ただゴロゴロ言っているだけだった。
 簡単に肩に乗せてしまえる大きさの子猫は、今となってはそこから動かない。おそるおそる家の中へ入り、できのいい2匹の犬に、
「怖がらせないでね、近寄っちゃダメよ!」
と固く言いつけると、好奇心を精一杯に抑えて、犬たちは言いつけを守ってくれた。

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そしてこの白黒長毛の子猫はその晩は私の隣にぴったりとくっつき、新しい家での初めの夜を無事に過ごすことができた。この子猫は手がかからない点では優等生で、自分でゴハンの置き場所を見つけて食べ、おトイレを見つけちゃんと使い、私の真隣にいなければ洗濯カゴの中で寝ていた。私はそれでも入院中の犬の事が気掛かりで色々リサーチもしていて、正直子猫にあまり構っていられなかったのだが、自分で何でもできるコで本当に助かった。先住のネコとも犬とも何も問題もなく、それもまた助かった。当時の私の家はいわば犬猫の駆け込み寺、ホステル、シェアハウスに似ていて、メンバーがよく増えたり入れ替わるので、彼らは社交のマナーは教えなくても心得ていたようだ。特に犬は一度捨てられた経験があるせいか、後から来るものにも大変協調性があった。

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当時家にはカメが3匹とその水槽があったのだが、ルビーの最初の友達は彼らカメとなった。結構な高さの水槽までジャンプし、そこから頭から突っ込み、岩の上に着地しカメ達に挨拶をしたりちょんちょんとちょっかいを出す。カメ達も怖がる様子もなく、全く子猫を無視している。子猫の足の上を通過したり、傍にいても大丈夫なようだった。


それから1週間後に犬のしろみは他界した。その数日前からもう助からないだろうことを宣告され、残りの時間を家で過ごすために退院してきたのだった。なのでその間ルビーがどうしていたかあまり記憶がないのだが、とにかく自分の事が自分でできるネコだったので、助かった。
 しろみが逝った後も、子猫の存在にとても癒されたので、このしろみとほぼ入れ替わりにやって来たタイミングは運命の不思議な巡り合わせだったと言えよう。

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スカンクと間違われたことがあります 笑

もしもサポートを戴いた際は、4匹のネコのゴハンやネコ砂などに使わせて頂きます。 心から、ありがとうございます