ハルキストの情熱

村上春樹が好きだ。
より正確に言うと、彼を特別好きというより、何人かいる好きな作家さんのうちの一人というくらいの温度感だ。

好きな作品を聞かれたらもちろん答えることはできるが、セリフを暗唱しろと言われても難しい。作品の内容について誰かと語りたいとも思わない。
だけど、世の中には自らを「ハルキスト」と名乗り、こうしたことを進んでする人も(かなりの割合で)いる。

村上春樹に関わらず、作家でもミュージシャンでもアイドルでもお笑いでも、分野問わず熱狂的なファンがつきやすい人がいる。

この熱狂的なファンがつく人っていったい何なんだろうと思って、少し考えてみた。

最初はアーティスト本人のカリスマ性やオーラがそういうファンを醸成しているのかと思ったが、
色々と実例を踏まえて考えるうちに、アーティスト本人がどうこうでなく、作品のポジショニングが熱狂的なファン活動をするのにちょうどよかったのではないかとの結論に至った。

無自覚かもしれないが、ファンの深層心理には「この良さは私にしか分からない、これを好きな私!」という想いが少なからずあって、そういう陶酔心が特に強い人が熱狂的なファンになる。

そして彼らは「私にしか分からない良さ」を求めつつも、意外とミーハーだったりもするので、真にニッチな分野には手を出さない。
つまり、メジャー過ぎずニッチ過ぎないポジションの作品にこそ魅了されたのではないか。

アーティスト本人の創作意思とは全く関係のないところで繰り広げられる、彼らの情熱の正体はこんなところではないかしら。

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