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君とバスケと恋と vol.13「寮」

二学期。

夏休みで焼けたみんなの素肌がまぶしい。

私はというと、相変わらず課外、バスケという生活を続けている。

明広も同じだ。

ただ、二学期ともなると三年生はホントに受験にまっしぐら。

課外も忙しくなり、本格的に受験シーズンだなという感じだ。

その中でも明広はひょうひょうとマイペースにことを運んでいた。

今度の週末はデートだ。

どこに行こうかな、何をしようかなと考えていたら、明広が

『寮に遊びに来いよ』

と言う。

もちろん男子寮なので女人禁制。

というか、寮生以外は立ち入り禁止だ。

『そんな、無理だよ』

と私が言うと、

『大丈夫だって、秘策があるからさ』

と明広が言う。

寮の入り口には寮監室があり、入ることはできない。

裏口から入っても、表口から入っても寮監室の前を通過しなければ、寮に入ることはできない。

それを入れてくれる技があるという。

当日、私は寮の裏口で待っていた。

明広に言われ、裏口玄関の内側までこそこそと入り、靴を脱ぐと、タイミングを見計らった。

後輩が寮監室の前で大きく新聞を広げる。

一人の後輩が寮監に話しかける。

通路や階段が見えないようにするためだ。

『早く、今!』

明広の掛け声で寮に侵入し、駆け足で二階へと駆け上がる。

ここまで来ると一安心だ。

明広の部屋は三階だった。

そのまま三階までこそこそとあがる。

途中後輩たちに会ったが、普通に挨拶された。

上級生になると、こうして彼女を連れ込むことは珍しくないという。

それでも私は心臓バクバクだ。

明広の部屋へ入ると、二段ベッドがあり、机が2つ配置されていた。

二人で一部屋だそうだ。質素な部屋だった。

男子なんてこんなもん?

一緒の先輩はと聞くと、別の部屋に麻雀をしに行っているから気にしなくていいと言う。

というか、私が来るから部屋を出てくれたらしい。

私はいざという時にばれないようにと、ベッドの一番奥の角へと座らされた。

たまに寮監の見回りがあるということだ。

まあ、滅多にないけどね、と明広は笑う。

他愛ない会話をしながら、時間は過ぎていく。

ふと、明広もベッドに潜り込む。

イチャイチャがエスカレートしてくる。

こんなところで、そんなことをしたらいけない、と思いつつ明広の強引さに断れない。

いけないことをしているんだという思いが交錯して、いつもより感じてしまう。

声を出さないように口を手で塞がれる。

余計に声が漏れる。

いつもホテルでしているよりも、明広も大胆だ。

とりあえずコトが終わると、私はそのままベッドでボーッとしていた。

そのときだ。

後輩が、

『先輩、芥ちゃんが来ます』

とノックしてきた。

見回りらしい。

芥ちゃんというのは、寮監の愛称で、三人いる寮監の中でも一番甘い寮監だという。

だから、今日寮に呼ばれたのだ。

いつもなら通りすぎるだけの芥ちゃんが、部屋をノックしてくる。

固まる私、焦る明広。

芥ちゃんはノックしてそのまま部屋へ入ってきた。

ベッドの角で息を止める私。

芥ちゃんは、私の方を見ると、

『ありゃ、お嬢さんが一緒か』

と言った。

『すみません』

と縮こまる私。

『堀川くんに、面会。お母さんが来てるけど、どうする?』

『母ちゃん?下で待っとかせてください』

芥ちゃんは、私にペコッとお辞儀をすると、

『早めに帰りなさいね』

とだけ言って部屋を出ていった。

固まっていた私はようやく緩むと、息をふーっと吐き出した。

怒られなくてよかった…。

明広は、

『ちょっと母ちゃんに会ってくる』

と言うと、私を一人残して出ていってしまった。

コトの途中じゃなくて、ホントによかった…。

私は安心して大きく息をはいた。

このことがあってから、数回寮へは潜り込んだが、寮監の見回りはこれ一回きりだった。

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