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【小説】バージンロード vol.5「出逢い」

11月の爽やかな風が吹く頃、私たちは約束通りに会うことになった。

その日は、中学の頃の同級生とランチの約束をしていたので、珍しくスカートで軽くメイクもしていた。

ランチが長引き、少々焦る私。

そんな中もおしゃべりは続く。

刻一刻と約束の時間は迫る。

そんなとき、ようやく友達が話をやめて帰ろうかー、と言い出す。

これはチャンス!と思い、帰る旨を告げる。

まだもう少し遊んでいたいという友達を背に、私は大慌てで立ち去った。

時刻は約束の時刻を過ぎている。

信号待ちしながら急いでメールをうつ。

返事はすぐ来た。

待っているようだ。

当然だろう、待ち合わせの時間は過ぎている。

『ゆっくりで大丈夫ですよ』

そう言われても焦る。

初めて会う相手を待たせているのだ。

待ち合わせ場所を近所に指定したのは正解だった。

私は待ち合わせ場所のボーリングの駐車場につくと、

『つきました。どこにいますか?』

とメールして、急いで車の鏡で髪を整えた。

『ボーリング場の入り口にいます。』

あぁ、じゃあアレかな……。

入り口にかなり細身の男の子が立っている。

焦りながら迎えに行く。

彼の名前はレン。

「お待たせしてごめんなさーい!」

「いえ……別に、大丈夫です。」

レンは冷めた感じで返事をした。

初対面でいきなりメイド喫茶っていうのもアレなので、カラオケに行こうか、と声をかける。

「はい……どちらでも。」

なんだか返事が冷めている。

待たせたからかな……?と私は思い、私の車で出発した。

車の中で、お互いのブログの話をした。

私がレンを女性だと思っていたのには驚いていた。

さっき口調が冷めていたのは、どうやら緊張していたからの様子。

少しずつ打ち解けていく会話。

そうこうしているうちにカラオケに着いた。

実は、カラオケにしたのは、私は自分の歌に自信があったから。

さっさと受付を済ませると中に入った。

おもむろにタバコに火をつける私。

あ……タバコ吸わないんだ……。

よくよく考えてみると、彼は未成年なのだ。

吸わないのが当たり前か。

私は未成年の頃からタバコを吸っていたので、そんなもんかな、と思う。

そういえばソウもタバコを吸わない。

今時の若い子ってそうなのね、とおばちゃんらしく納得してみたり。

曲を選ぶのに少々戸惑っているレン。

私はさっさと自分の曲をいれて歌い出す。

自信のある曲。

へぇ、と感心したようなレン。

だろー?この曲自信があるんだぜ!

更に調子に乗る私。

次はレンの番だ。

彼が歌いはじめて私はビックリした。

声量が少々足りないものの、歌は超抜群にうまかったのだ。

声量が足りてないのは緊張しているからかもしれない。

ソウの音痴もひどいもんだが、ここまでうまく歌われると、私の闘争心に火がついた。

自信のある曲ばかり入れる私。

ゆっくりと選ぶレン。

ひとしきり歌い終えると、私たちはカラオケを出た。

「カラオケうまいね!」

と声をかけると、レンは、

「初めてカラオケに行ったから、少し緊張しました……」

と言う。

えーっ、初めてであれだけ歌えるの?

ちょっと自信をなくしかけた私だった。

そのあとはすることも特になく、近所のカフェで一服した。

レンはあまり会話が上手ではないのか、緊張しているからか、自分から話題を振ってくることはない。

私はまじまじと、前に置かれた彼を見た。

相当細身で、えらが張っていて、メガネの彼。

ジャケットを着込んでいるが、どこか似合っていない。

もてない男って感じだ。

会話も、うん、とかはい、とかそんな感じ。

私の好みではない。

メガネはフェチなので、そこは除く。

そういえばソウも私の好みではない。

ソウは背が低く、顔はまあまあいいけど、胸毛がすごい。

本人がめちゃくちゃ気にしているので言ったことはないが、私の好みではなかった。

二人とも、ね。

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