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君が恋をしたなら vol.20「不満」

それから一週間は、しょっちゅう電話してくるなよ、と言われたにも関わらず毎日電話をした。

毎日30分くらい話をする。

話の内容は主に仕事のこと、次に好きなもののことだった。

毎日が楽しくて仕方がない。


ふみと弥生にも報告。

大喜びされ、どんどん嬉しくなる私。

なにより、私自身が一番嬉しい。

だから、二週間連続で『友達連れてこいよ』と言われても、二人きりの時間がなくてもさして気にしなかった。


来週は週中にユウタの誕生日がある。

ひそかにプレゼントを用意していた。

週中に会えなくても、週末にお祝いすればいいや。

頭の中では二人きりでお祝いする私とユウタの姿が。


週中になり、誕生日。

お誕生日おめでとうと、たっぷり可愛くしたデコメを送った。

数十分後に『ありがとう』とだけメールがきた。

『今週末は二人きりで会える?』

とメールする。

『なんで?』

と返事が来る。

『お誕生日のお祝いしたいから』

『いらない』

いらない…。いらないってどうして?

メールする。

『二人きりじゃないほうがいい』


私は、みんなにお祝いしてほしいのだと思い込み、了解した。


でも、週末は特に誕生日ということもなく終わった。

私も帰り際にプレゼントをあげただけ。

私『なんかサプライズしたかったな…。』

ふ『本人がいいって言うんだから、いいんじゃない?男同士で誕生日祝うってあまり聞かないし。』

私『そんなもんかなぁ…。』


結局この週もあわせて、二人きりになることなく六週間経った。


私『二人きりになりたいなぁ…。』

電話で私がぼやく。

ユ『なんで二人きりにこだわるん?』

私『だって、彼女になってから一度も彼女らしいことしてないし』

ユ『気にしすぎなんじゃない?こうして電話してるじゃん』

私『そうかなあ…。そうだよね…。』


でも、このあと二週間もそんな調子で過ごした。


街はやがて、クリスマスソングが流れるようになり、イルミネーションも始まった。

去年はひとりぼっちだったクリスマス。

今年はユウタがいてくれる。

私は張り切ってプレゼントを用意した。


私『もうすぐクリスマスだね』

ユ『あー、そんな時期か。』

私『クリスマスイブ、なんか予定入ってる?』

ユ『いや、特に入ってないけど』

私『じゃあ、じゃあさ、二人でご飯食べにいこうよ!』

ユ『二人で?』

私『そう、二人で!』


次の一言で私は大爆発した。


ユ『めんどくさいから、いい。』


私『どうして?なんで?面倒だって…。クリスマスイブなんだよ?特別なんだよ?』

ユ『別に特別じゃないだろ?』

私『だいたい、今までだって…。』

飲み込みかけた言葉が口からでてしまう。

『彼女になってから、一回も二人きりになったことない!付き合ってなかったときとなんにも変わってない!!』

ユ『だから、それはこうして電話したりして、ちゃんと特別じゃん!』

私『特別なんかじゃない!ユウタ私のこと、避けてるの?!キスだって、ほかにも、たくさん、したいことがあるのに!!』

大絶叫し、とうとう泣き始めた私。


そうだよ、特別なんかじゃない、私のこと、どうだっていいんだ…。


ユ『ちょっと待ってろ』

電話はそこで切れた。


私はおいおいと泣いた。

これ以上泣いたら涙がかれてしまうというほど泣いた。


泣いて泣いて、泣きじゃくっていると電話が鳴った。


ユ『今からコンビニに出てこい!』

私『コンビニ…?』

ユ『お前んちの近くのコンビニだ!』


私はわけがわからないながらも、しゃくりあげながらコンビニへと歩いた。



そこには見慣れた姿があった。



ユウタだ。どうして…。


ユウタは私を見つけるとかけよってきて、私を抱きしめた。

『ごめん!本当にごめん!』

ユウタが大きな声で謝る。

『ユウタ…。それを言うためにわざわざ?』

『俺、お前のこと避けてた!お前の真っ直ぐな気持ちに応えられるかわからなくて、ずっと避けてた!でも、ごめん!これからはお前の気持ちに応えるように頑張るから!』

『ユウタ…。』

『お前は俺の、特別なんだから!』

『ユウタ!!』

抱きついて泣く私を、ケンジが車からそっと見守っていた。

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