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君が恋をしたなら vol.22「クリスマスイブ」

ユウタを拾ってのんびり運転し始める。


やっと二人きりになってもいいよと言ってくれたユウタ。

初デートがクリスマスイブだなんて、なんて素敵なシチュエーション!!


私『今日はとびきりのお店に連れてくからね!』

501号線を走らせながら言う私。

ユ『楽しみにしとこーっ』


スーツ姿のユウタを見るのは初めてだった。

なにかくすぐったい気持ちになる。


ユ『今日は綺麗じゃん』

私『そうだね、この辺から見える夜景は綺麗だよね』

ユ『そうじゃなくて、お前のことだよ』

と口を尖らせるユウタ。

きゅん…。

不覚にもときめいてしまった。


私『そんなに褒めたってなにも出ませんよー』

ユ『あー、そうですかそうですか』

二人で笑いあう。


幸せって、こんな小さなことでも感じるんだな…と思う。


私『ええと、多分こっちの方』

ウインカーをだして曲がると、ユウタが不安げな声をだす。

私『大丈夫だって!道は何度も確認しておいたし、ぐぐった紙が後ろの座席に置いてあるから…。』

すぐに紙を取るユウタ。そんなに私のナビでは心配なのか…。


県道1号線に入る。ここまでは順調。

一生懸命に地図とにらめっこしているユウタに声をかける。

私『ここからの夜景がきれいなんだってば!』

車を止めてしばらく夜景を見る二人。

ユ『お前、いろいろしってるんだなぁ…。』

まさか、ユウタに会いに来るのに迷子になりまくって覚えましたなんて、格好悪くて言えず。

私『まあね…!』

ユ『他の男ともこういうとこにきた?』

なんてムードを吹き飛ばすのが上手いんだろう。

私『来るわけないでしょ』

ユ『そういうことにしときます。』

私『あーっ、私のこと信用してない…!!』

ユ『信用してるよ』

ニヤニヤ顔で言うユウタに、またしてもきゅん…。


しかし、少し行った先で道に迷った。住宅街の狭い道を抜けたら、広い道にでるはずが、道はあれど、広い道にもぶつからないし、周りは何もなくなってしまった。

慌てて携帯で場所を調べる。どうやら途中で曲がる道を間違えたらしい。なんとかUターンできそうな位置まで行って、Uターンして戻った。

そのあとは携帯で道を探しながら進んだ。



お店が近づいてきた。

だけど、あれっ?なんか看板が出てる…。


車を停めて、看板を見に行くと、

『本日貸し切りのため、ご迷惑をおかけします。』

と書いてある。


私『ええーっ』

ユ『俺、お店の人に聞いてくる!』

ユウタはそう言ってお店の中へ入っていった。


しばらくしてユウタが戻ってくる。

私『どうだって?』

ユ『今日は貸し切りだから無理だって』

私『だって予約いらないって言ったの、お店の人だったのに…。』

ユ『しょうがないよ、次のとこ行こう、どこか知ってる?』

こういうとき、ユウタの優しさが身に染みる。

いつものわがままユウタと、どっちが本当かわからなくなるくらいだ。


私『フレンチのお店なら知ってる』

ユ『ダメ元でかけてみろよ』

私『うん…。』


かけてみると、電話番号が新しくなったらしく、メモを取る。


私『かけてみるね』

うん、とユウタは言った。


私『すみません、ディナー、二人なんですけど、今から入れませんか…?』

奇跡的に一組ならちょうど空きがあるとのこと。八時に予約して、お店へと急いだ。


クリスマスイブのせいか、街は混雑していた。なかなか車が進まない。

焦る私にユウタが言った。

『焦らなくても、時間はたっぷりあるんだから、焦るなよ』

この言葉で、わたしは少しリラックスした。


お店は街中にある。

近くの駐車場に停めて、10分歩くか歩かないかのところだ。


この店には、私が新採のころによく先輩がランチに連れてきてくれた、懐かしいお店。

実は前の前の彼氏とは来たことがあるんだけれど、それは秘密ということで。



お店のビルに来たとき、なんだか違和感があった。

とりあえず、二階のお店へのぼる二人。

のぼって呆然とした。

お店が、移転している。

移転先が書いてあったが、今から渋滞を抜けて行くには9時近くなる。

さすがにお腹も空いた。

諦めるべく、電話をした。

『移転してるの知らなかったもので…。はい、ご迷惑をおかけしました。』

ユ『お店なんだって?』

私『九時半オーダーストップらしいけど、もう疲れたから断った』

ユ『そっか』


かくして私たちの長旅は終わり、一番近くの喫茶店でご飯を食べた。しかもカウンター席で目の前には食洗機(あの、でかいやつ)という、お粗末様でした。


普段行くには大好きな喫茶店なんだけどなぁ。


そして私はユウタを家に送り届けると、プレゼントを渡した。いつものニット帽に合うようなパーカーだった。


すると思いがけなく、ユウタからプレゼントをもらった。それは小さくて可愛らしいピアスだった。

感動して泣きそうになってるわたしの両頬をはさんで持ってくると、キスをした。

それは、二回目の、初めてのキスだった。


ユウタは私の頭をくしゃくしゃすると、『気をつけて帰れよ』と言って、車を降りた。

そして、見えなくなるまでずっと見守ってくれていたのだ。


クリスマスイブは素敵な思い出になった。何年経っても思い出して笑いそうな、いい思い出になった。

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