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君とバスケと恋と vol.4「見てる?」

記念の指輪は学校につけていくわけにはいかないので、ネックレスにつけてはめていった。

部活を眺めながら改めて明広を見つめる。

背が高い明広のポストはセンターだ。

持久力も速さも申し分ない。

あくまでうちの学校では、だけど。

ただし、細いので相手によっては当たり負けてしまう。

うちの学校は進学校なので運動ができる連中がほとんどいない。

しかも、顔もかっこいい。

だから、明広は目立つ。

そんな人が彼氏なんだ…。

ちょっと優越感を感じる。

部活の途中で明広に話しかけられた。

『なんか、りさ、退屈そうに見える』

『そ、そんなことはないよ?』

図星だったのでドキッとする。

ルールがわからないスポーツを見るほど退屈なことはない。

何度か園田くんに説明されたけど、やっぱり意味不明だ。

『ルール、わかって見てる?』

私はぶんぶんと頭を振った。

『お前、半年間なに見てきたの?』

まさか、石原先輩みてましたー!なんて言えるわけがない。

『なんとなーく、こう、かっこいいかなぁって』

すると明広が笑い出した。

『わかった、今度からルール教えてやるよ』

そう明広は言った。

私は学校の帰り道にバスケのルールブックを買った。

これで少しは話についていけるだろう。

次の日の部活中は、ルールブックとにらめっこしながらだった。

ダッシュを何本も繰り返して走る。

ストレッチも入念だ。

ただ、うちの学校で残念なのは、外にコートがあるため、寝そべってのストレッチなどができない。

それもルールブックを見て知った。

ルールブックに熱中したおかげでみんなの水分補給用のポカリを買い忘れた。

『お前、マネージャーなら当たり前のことを忘れんな』

明広からも怒られた。

明広から怒られたのは初めてだったが、いつも練習中は誰かしらが怒られているので、ちょっと仲間気分だったりする。

今日の練習は3on3だ。園田くんと一年生が組んで、三年生は明広と石原先輩と、西本先輩だ。

もちろん、圧倒的に三年生チームのほうが強いのはわかっている。

でも負けじと園田くんチームが頑張る。

今日は他の先輩は課外でこれないらしい。

うちの部で二年生は、園田くんしかいない。

あとは三年生が五人と、一年生が六人だ。

前に園田くんに、なんでバスケ部に入ったの?と聞いたら、

『小学校からやっているから、どうせなら、大学まで続けたい』

と言っていた。

そして入部したら、当時の一年生でたった一人だったという。

その辺の絡みがあって私がマネージャーまがいをすることになったんだけど…。

今まで壁の花のようにただ立って見ているだけだと思っていたから、明広に怒られたのは実はちょっと嬉しかった。

私は急いでコンビニに走り、いつもの分のポカリを買って戻った。

ちょうど3on3が終わったところらしく、

『ナイスタイミング』

とみんながいいながらペットボトルを取っていった。

明広が偉い、偉いと頭をくしゅくしゅしてくる。

私の髪はストレートのボブだから、くしゅくしゅされてもすぐ髪型を戻せるんだけど、この頃は、まだ、なんか嫌だった。

部活を早めに切り上げ、駅まで送ってもらえることになった。

自転車を押しながらついてくる明広。

『ルールブックを買わなくても俺が教えてやったのに』

とブーブーいう明広。

『だって早く覚えたかったんだもん!』

そういうと、頭をぽふぽふされた。

『早く覚えてどうすんの?』

ニヤニヤしながら聞いてくる明広。

『そりゃあ、練習見てても面白くなるように…。』

『お前は俺だけ見てればいいよ』

『えっ?』

『俺だけ見てればいいの』

『それってどういう意味?』

『だーっ、何度も言わせるな、俺だけ見てて欲しいんだよ!』

『ちょっ…。駅前でそんなに大きな声出さないでよ…。』

『わかった?』

『わわ、わかったから…。』

結局押しに押されてうなずいた。

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