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『問題解決プロフェッショナル』からみるZARAの経営戦略的特性

問題解決プロフェッショナルでは、「ゼロベース思考」の成功事例としてZARAの経営手法が紹介されている。

 
当時のアパレル業界

アパレル企業はベーシック志向とトレンド志向の二つに大別される。
ベーシック志向のアパレルブランドは目玉となる商品を、低賃金の海外にアウトソーシングした工場で低価格大量生産、作り置きする手法をとっていたが、在庫処理などに悩まされていた。
一方トレンド志向の企業は流行の商品を主力として販売していたが、分割されたサプライチェーンの構造から、需要への柔軟かつ小刻みな対応は困難であると考えられてきた。

ZARAの戦略

ZARAは、ビジネスシステムをゼロベースで捉え直し、

・SCMを自社で管理、工場までも本社の近くに置くなど完璧なまでに一元化。
→現場のニーズを速やかにデザインに反映可能
→製造費は多少かかるが、新商品の迅速な出品が可能に
・デザインに優れた多品種小ロット(少数)生産。さらに追加生産をしない
→客の購買意欲を掻き立て、高収益を生み出す
→客が店舗に足を運ぶようになり、店舗が広告の役割を果たすため広告費をほぼ要しない

など、細かな工夫を重ねることで売上高の一位を獲得した。

現在のZARA
ZARAは2022年までに1200店舗ほどを閉鎖する一方でECに3年間で10億ユーロを投資し、売上高を全体の25%以上に高める計画を発表した。
コロナ禍で売上が前年度から44%減少する一方でECでの売り上げが前年度を95%を上回ったことを受けてのこと。
新型コロナウイルスのヨーロッパへの感染拡大は実店舗の回転率を意識し、店舗拡大路線をとってきたZARAには大きな足かせとなっている。
ECで購入した商品を実店舗から自宅に配送するなど店舗とECの融合も進める予定。

まとめ
ゼロベース思考で顧客にとっての価値を追求した結果、ZARAは売り切れ御免の生産スタイルや工場の自社運営といった斬新な戦略を複数とり、アパレル業界1位の売上を獲得している。

「顧客にとっての価値を考え抜く」ことがビジネスの基本であるとよく言われるが、その手本のような一例だった。


 
単語
SCM(サプライチェーンマネジメント):発注、生産、物流・出荷、販売というプロセス(サプライチェーン)を統合的に把握し、効率化と最適化を目指す経営管理手法。各プロセス内の効果最大化を目指すと全体として不利益が生じうるため、大企業はこの方法をとることが多い。
 
ファストファッション:世界的な流行をデザインに採り入れつつ、低価格に抑えた衣料品を大量に生産し、短いサイクルで販売するブランドやその業態のこと。安くて早いことから、「ファストフード」にならった造語。
 
参考文献:全て最終閲覧日6/12

元ZARAスタッフがZARAから学んだ事
https://note.com/men_in_black/n/naac716ae4fcb

戦略としてのブランド: 「コンセプト」×「オペレーション」×「組織」でつくる成功の方程式
https://www.businessinsider.jp/post-174617

ファストファッションにおける競争優位のメカニズム
https://hannan-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=384&item_no=1&attribute_id=18&file_no=2

日本経済新聞 2020/6/11 ZARA1200店閉鎖、世界の2割弱 EC比率を25%に
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60221280R10C20A6TJC000/

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