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マーケターのみなさんへ---企業スローガンをプロモーションの観点で考えましょう---世界3大広告スローガンをマーケティング・プロモーションの視点から検証します。



Sheer Driving Pleasure


企業のCore Valueをどうターゲット顧客とインタラクションするかはブランド(象徴Iconとculture)を創る上でとても重要です。
この顧客とのインタラクションはプロモーション領域に限らず全てのPで行われます。
働く社員も含めて全てがインタラクションの対象です。
一緒に物語を創っていく仲間です。

Just Do It.


Sheer Driving Pleasure(駆け抜ける歓び)やJust Do itは企業スローガン、ブランドスローガン、または企業・ブランドタグラインと言われることが一般的です。

企業が提供する商品やサービスについての刻印であるロゴと一緒に使われることが広告的には多いですが、切り離されていることもしばしば…。
このようなスローガンを持たずに素晴らしい商品やサービスを提供する企業も多いです。

企業のミッションやビジョン、最近であればパーパスを対外的に一言でメッセージするものということでその役割を規定することもあります。
広告代理店が制作してみたい!と思うものの一つです。

Think Different


僕も大好きなAppleのThink Differentは1997年にたった一度使われただけです。自分のnoteでも何度も取り上げていますが、Appleのホームページを探してもどこにも見当たりません。
AppleのCore Valueを取り戻す・確認するためのキャンペーンでのキーワードとして記号的に使われたというのが僕の理解です。

個人的世界三大スローガンの考察
三大スローガンを分析していきます

Sheer Driving Pleasure

まずはBMWのSheer Driving Pleasure(駆けぬける歓び)から


背景についてはBWMのサイトに詳しい情報が掲載されています。
まずこちらをご覧になってください。

Sheer Driving Pleasure(駆けぬける歓び)というスローガンは、ドライバーのポジティブな感情を掻き立てるとともに、私たちが常に目指すべきゴールを示しています。

ヨアヒム・ブリックホイザー
BMW Groupコーポレート&ブランド・アイデンティティ責任者 BMW JapanのHPより

ヨアヒムさんの言葉にBMWがスローガンに込めた全てが凝縮されているように思います。
「ポジティブな感情を掻き立てたい(もしくはすでに掻き立てている)人」のために商品・サービスを開発・提供しているということです。
ステイタスシーカーが彼らのお客さんではないというように理解できます。

「自動車とは何か?」という問いかけを中国にいた時に当時のクライアントさんの中国人経営者に投げかけたことがあります。

彼の答えは「自由(思い通りになること)」でした。

自動車を所有することは当時の中国では大変なステイタス。
移動の道具は公共交通機関からまさにMy Carの時代へ。

担当していた企業はBMWグループではないですが、彼からはクルマの体験価値を教えてもらったような気がしました。

BWMはずっとクルマが持つポジティブな感情的な価値を追求し続けているということが上記のHPから読み取れます。
まさに「駆け抜ける歓び」です。

BMWのもう一つのスローガン:北米でのThe Ultimate Driving Machineについてはこちらからどうぞ。


続いてJust Do It.
Nike のスローガンが続きます


このスローガンについては企業のHP周辺で見つけることは困難です。
ご存知の方も多いと思いますが、Wieden + KennedyのWiddenさんがスローガン開発に大きく関わっています。残念ながらWiedenさんは亡くなっていますが、彼のコメントが残っています。
Just Do It は死刑が目前に迫った囚人の言葉 "You know, let's do it." に強いインスピレーションを受けています

"I remember when I read that I was like, that's amazing. I mean how, in the face of that much uncertainty, do you push through that? So I didn't like the 'let's' thing, and so I just changed that, cause otherwise I'd have to give him credit," Wieden joked.

Just Do It: How the iconic Nike tagline built a career for the late Dan Wieden: npr記事より

「それを読んだとき、すごいことだと思ったのを覚えている。つまり、あれほどの不安に直面しながら、どうやってそれを押し通すのか、ということだ。だから、"Let's "っていうのが気に入らなくて、それを変えたんだ。そうしないと、彼を褒めないといけなくなるからね」とワイデンはジョークを飛ばした。

Just Do It: How the iconic Nike tagline built a career for the late Dan Wieden: npr記事より
DeepLによる翻訳

Just Do Itの開発ストーリーなどはこちらのサイトで読むことができます。
nprのDan Wiedenさんへの追悼記事です。
とても貴重なWiedenさんの肉声を聞くことができますので、ご覧になってください。

https://www.npr.org/2022/10/06/1127032721/nike-just-do-it-slogan-success-dan-wieden-kennedy-dies

AppleのSteveさんも一目置いた、Nikeです。
そのスローガンとして位置付けられるJust Do It .


4歳の息子のサッカーシューズです

僕はApple同様にNikeのCore Valueを共有したい人たちに向けられたメッセージであると考えています。

そのメッセージはかなり個人的な解釈になりますが、「覚悟すること=強い決意を現す」です。

Nikeの創業者のPhilip Knightさんは当初広告代理店を信じていなかったそうです。
それを乗り越えるためにはWiedenさんも相当な「覚悟」を持ってJust Do It を提案していたことが上記nprにある彼のインタビュー映像からもわかります。

広告代理店と得意先の関係についての重要性に興味のある方はこちらを

クライアントが広告代理店に何を期待しているかのレポートはこちらを

最初にJust Do it.が登場したTVCMはこちらです。

nprの記事中にはもう一つの映像があります。
Wiedenさんのインタビューと照らし合わせると「覚悟する=強い決意を持つ」ということが見えてきます。

Just Do It. 30th Anniversary campaign Colin Kaepernickさんがフィーチャーされています。僕には「強い決意・覚悟」が伝わってきました。

Philip Knightさんの自伝的小説をお読みになった方も多いと思います。すでに映像化もされています。本文から引用します。


人体には血液が必要だが、血液を作ることが人間であるわけではないのと同じだ。血液を作るような人体の営みは、より高い次元の目標達成に向けた基本的なプロセスだが、それ自体は私たち人間が果たすべき使命ではない。その基本のプロセスを超えようと常に奮闘するのが人生だ。

 1970年代後半の私はまさに奮闘していた。私は勝つとはどういうことかを見つめ直し、勝つこととは、負けずに生き延びる以上のことだと知った。

 もはや勝つことは、私や私の会社を支えるというだけの意味ではなくなっていた。私たちはすべての偉大なビジネスと同様に、創造し、貢献したいと考え、あえてそれを声高に宣言した。何かを作り、何かを伝え、何か新しいものやサービスを、人々の生活に届けたい。人々に幸福、健康、安全、改善をもたらしたい。そのすべてを断固とした態度で効率よく、スマートに行いたい。

 滅多に達成し得ない理想ではあるが、これを成し遂げる方法は、人間という壮大なドラマの中に身を投じることだ。単に生きるだけでなく、他人がより充実した人生を送る手助けをするのだ。

SHOE DOGより

Think Different.
最後にAppleです


こちらについては#9にてすでに触れています。
そちらをお読みになっていただけるとありがたいです。

「情熱を持つ人々が世界をより良い方向に変えることができると信じている」というAplleのCore Value・信念を全ての関係者(社員と顧客)に問いました。

そして、問われた関係者は「世界を変えることができると思うほどクレイジーな人々こそが、実際にそれを成し遂げる人々」であることが期待されています。

私物のBEYOND DISRUPTIONより


なぜならば、一緒にAppleの物語を創り続ける必要があるからです。
企業と顧客が商品やサービスの持つ機能的価値や情緒的価値を挟んで対話(dialogue/Interaction)することでブランドが創られていきます。
対話を通じてcultureとなり、Appleのロゴにブランドとしての伊吹が吹き込まれます。
マーケティングにおける対話の重要性はこちらをお読みください。

一見さんお断り

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